「陸域における自然環境の保全に関する指針」の概要
目 次
  1.1 宮古・久米島の自然環境
  1.1.1 宮古・久米島における特定植物群落
  1.1.2 宮古・久米島における特異な地形・地質
  1.1.3 宮古・久米島における文化財の状況
  1.1.4 貴重な動物種の分布
  1.2 各々の地域における「すぐれた自然」の概況 現在のページ

1.2 各々の地域における「すぐれた自然」の概況

  各々の地域における「すぐれた自然」の概況は以下の通りである。なお、下線は「天然記念物」、緑色文字は「特定植物群落」、えんじ色文字は「特異な地形・地質」を表している

■下表の地域名をクリックすると、それぞれの地域へジャンプします。
(48)池間島 (49)西平安名岬 (50)福北 (51)平良 (52)伊良部島
(53)東平安名岬 (54)上地 (55)水納島 (56)多良間島 (57)久米島
(58)久米島南部 (59)久米島東部 (60)硫黄鳥島    

(48)池間島
 池間島中央部には、構造線に支配されて出来たと考えられる、東西約500m、南北約1kmの湿地があり、その中央に池がある。石灰岩の平たい島で湿地を伴う島は、南北両大東島を除けば極めて珍しい。
 池間島中央部の湿地帯には、カンガレイ、イヌクログワイ、ヒメガマ等の群落が見られ、その湿地植生の広がりは県内では例が少ない(「池間島の湿地植生」)。 戻る
 
(49)西平安名岬
 島尻部落の北側に複雑に入り込んだ入江があり、この入江全域に宮古島で一番大きなマングローブ林が発達している。特にヤエヤマヒルギ−ヒルギダマシ群落とヒルギダマシ典型群落が発達しており、前者は上層はヤエヤマヒルギ、下層はヒルギダマシとヤエヤマヒルギの稚樹が生育しているだけであり、後者はヒルギダマシの単純群落である(「島尻のマングローブ林」)。狩俣部落の東側の丘陵は、隆起サンゴ礁からなる丘陵部であり、海浜の砂を主体にした現世の沖積地にはハスノハギリやフクギを主体にした群落、頂上への斜面には高木層にオオバギ、クロヨナ、アカテツ等、亜高木層にリュウキュウガキ、ツゲモドキ、モクタチバナ等、低木層にナガミボチョウジ、シマヤマヒハツ等、草本層にリュウキュウガキ、トウズルモドキ等の出現する低地林が発達しており、隆起サンゴ礁からなる島の典型的海岸林と低地林である(「狩俣御嶽周辺の植生」、「狩俣の植物群落」)。野田山林は海抜50〜60mの丘陵状に位置し、隆起サンゴ礁石灰岩を母岩に持つ地域と第三紀の粘土層を母岩に持つ地域が複雑に入り込んでいる。ここのリュウキュウマツは植林されたものと考えられるが、良く保存され、樹高10m前後の高木林として発達している。宮古島は平坦で耕作地が多く、まとまった林分が少ないことから島の景観構成上は勿論のこと、植物相としてもノボタン、ミズスギ、ハマホラシノブ、ツワブキ、ヤンバルゴマなどは宮古島では当地方でしか生育が見られず、貴重な林分である(「野田山林のリュウキュウマツ群落」)。
 西平安名岬は、世渡崎とともに宮古島の北端に位置し、長さ約500m、最高海抜 14mの石灰岩堤によってできた岬である。岬の向きは、宮古島の主要な構造線(活断層)の方向(北北西−南南西)と一致している。世渡崎は、西平安名岬と同様、長さ約600m、最高海抜 19mの石灰岩堤によってできた岬であり、岬の先端から池間島に橋が架けられている。世渡崎の石灰岩堤の延長線上、狩俣から間那津にかけては、長さ約5km、最高海抜 45mの活断層を伴う石灰岩堤がある。また、この延長線上、大浦の東にも長さ約 1.5kmの活断層を伴う石灰岩堤がある。島尻から南静園に至る海岸沿いには、長さ約2km、最高海抜約 60mの活断層を伴う石灰岩堤があり、石灰岩堤の海側は海崖となっている。大浦の南には、北西−南東方向に伸び、西原の東に連なる、長さ約2km、最高海抜 57mの活断層を伴う石灰岩堤があり、この石灰岩堤は大浦湾に突き出し小さな岬を作っている。
 その他、天然記念物として「島尻断層崖と海食台」(平良市指定)がある。戻る                     
 
(50)福北
 与那浜崎の西には、長さ約350mのビーチロックがある。与那浜崎の南には、長さ約1km、最高高度100mの石灰岩堤がある。福里海岸には湧水(ヌグスク湧水)があり、新城海岸にも湧水(新城湧水)がある。 戻る
 その他、史跡として「高腰城跡」(県指定)がある。 戻る
 
(51)平良
 大野山林は宮古島で最も広い面積の植林地であり、リュウキュウマツの植林部が広く、他にテリハボク、ソウシジュ等の植林も見られる。高木層はリュウキュウマツの他つる植物が僅かに出現し、亜高木層にサルカケミカン、タブノキ、モクタチバナ等、低木層にクチナシ、ヤブニッケイ、シマグワ等、草本層にナガバカニクサ、ホシダ、ハマサルトリイバラ等が出現する(「大野山林のリュウキュウマツ群落」)。野原岳の東斜面は石灰岩の断層崖の様な地形をしており、その斜面に矮生した森林が見られる。上層にはヤブニッケイ、モクタチバナ、ハマイヌビワ等、林床にはヤブラン、ヤブニッケイ等が出現する、宮古島を北から南へ走る構造線上の代表的植生である(「野原岳東斜面の常緑低木林」)。「飛鳥御嶽のヤブニッケイ群落」(「飛鳥御嶽の植物群落」)は、御嶽林として古くから保護されており、群落高8m内外で、ヤブニッケイ、タブノキ、オオバギ、ハマイヌビワ等が高頻度に出現し、林内では特にモクタチバナの出現が多いのが特徴である。その他、シマヤマヒハツ、ナガミボチョウジなど石灰岩域を指標する種類もあり、地域の潜在性を指標する林分であるといえる。
 下崎の北側から西里を経て野原の北側にかけて、活断層を伴う石灰岩堤がある。これは、西平安名岬の石灰岩堤に発し、東仲宗根の東、西里、野原を経て、友利の南海岸に至る、総延長15kmの断続的に連なる石灰岩堤の一部であり、野原岳もこの石灰岩堤上に位置する。西原から西仲宗根にかけては、西原の東で最高海抜 33m、西仲宗根の東で最高海抜約 50mの活断層沿いに断続する石灰岩堤がある。これは、植物園から細竹の東、下里添にかけての、活断層とそれに沿って断続的に連なる石灰岩堤に連なっており、石灰岩堤の最高海抜は植物園の北で約 40m、細竹の東で 75m、下里添の北で約 89mである。また、この活断層石灰岩堤は豊原の北から新里・友利の南、友利仲原の南西へと連なっており、これら一連の地形の総延長距離は15kmにもおよぶ。西原の東には、大浦の南から連なる、北西−南東方向に伸びる活断層を伴う石灰岩堤がある。久松の東には、長さ約1km、最高海抜約 30mの石灰岩堤がある。瓦原の東には、長さ約1km、最高海抜約 60mの石灰岩堤がある。長間には、長さ約 1.7km、最高海抜約 80mの活断層石灰岩堤がある。この活断層は、与那浜崎の南にある長さ約1km、最高海抜100mの石灰岩堤に連なっている。長北から長中、西里添にかけては、西里添の東に連なる総延長約 6.5kmにおよぶ活断層石灰岩堤がある。西浜崎には、与那覇湾を塞ぐように伸びる、長さ約750m、最高高度5mの砂州がある。湧水地として、白川田湿地帯(湧水地)、荷川の井、大和井、イザガー、モリカガー(洞井)がある。
 その他、天然記念物として「宮古馬」(県指定)、「シマジリクジラ化石」、「ツヅピスキアブ」(平良市指定)、「前川と御神木その周辺の植物群落」(城辺町指定)、「大嶽公園の植物群落」(上野村指定)、史跡として「大和井」(国指定)、「ドイツ皇帝博愛記念碑」、「仲宗根豊見親の墓」、「野原岳の霊石」(県指定)がある。戻る
 
(52)伊良部島
 「白鳥崎のミズガンピ・テンノウメ群落」は、隆起サンゴ礁からなる海岸の潮間帯のやや内側に発達した海浜植生であり、ミズガンピとテンノウメを主体にした団塊群落である。「国仲御嶽の植生」(「国仲御嶽の植物群落」)は、隆起サンゴ礁からなる島の代表的な植物群落を形成しており、高木層にはタブノキ、コクテンギ、モクタチバナ等が混生し、低木層にはクロツグ、ナガミボチョウジ等、林床にはヤブラン、ホシダなどの他、上層の稚樹やシダ植物、つる植物等も出現する。
 伊良部島の北海岸には、海崖の背後に位置する標高10〜15m、長さ約 2.5kmの石灰岩堤がある。佐良浜の南には海岸線の内側の海抜高度30〜35mに並ぶ5つの石灰岩堤と佐良浜の集落から南南東に伸びる活断層の内側に位置する2つの石灰岩堤がある。伊良部島の東側から西側にかけて樹枝状に走る浅い谷は、カルスト・ドライヴァレーと呼ばれる石灰岩台地に刻まれた溶食谷で、文字どおり川のない乾いた谷である。このような谷地形は、徳之島南部にも発達しているが、世界的には報告例がほとんどないといわれている。伊良部島と下地島の間の水路は、前述のカルスト谷が沈水してできたと考えられる沈水カルスト谷であり、狭い所で幅数十mで複雑な多くの小湾・水路からなる。伊良部島の南東部には、約10個のドリーネと8個の洞穴からなる、ドリーネ群および洞穴群があり、このうち洞穴群は「牧山洞穴群」と呼ばれている。下地島の北東には、直径750〜1750m程度の大小3個のそこに水を湛えたドリーネがある。下地島の西海岸には、複数のドリーネ沈水ドリーネがあり、そのうち「下地島の通り池」と呼ばれる、直径77mと55m、水深25〜40mの2つの沈水ドリーネのうち、二の池は地下洞で海と連結している。下地島の西海岸には、半円、円弧、馬蹄形等の形をした大小20近い入江があり、この入江地形は沈水カルストであると考えられている。下地島の北部から北東部にかけては、津波によって打ち上げられたと推定されている完新世サンゴ礁塊(リーフ・ブロック)が点在する。このうち最も有名なものが西海岸にある津波石で、中央部がくびれ、帯を巻いているように見えるため「帯大石」と名付けられている。
 その他、天然記念物として 「イラブナスビ」、「大竹中洞穴」(伊良部町指定)がある。戻る
 
(53)東平安名岬
 東平安名岬の全域にテンノウメ、ミズガンピ等の木本性の海浜風衝植生とコウライシバやソナレシバ等の草地が発達している。特にテンノウメ群落は、海崖の肩状部に地表をはう様に、うっぺいし、絨毯を敷き詰めた様に発達している(「東平安名岬のテンノウメなどの風衝植生」(「東平安名岬の隆起珊瑚礁海岸風衝植物群落」))。
 友利仲原の南西には、西原から連なる活断層と石灰岩堤があり、西里添の東に連なっている。友利仲原の南、上記活断層の延長線上に位置する海崖下には、通称「ムイガー」と呼ばれる湧水がある。福東の南東には長さ約 1.5km、最高海抜約72mの活断層と石灰岩堤がある。福東の南、上記活断層の延長線上に位置する海崖下には、通称「新里湧水」と呼ばれる湧水がある。福西から皆福の南にかけては、長さ約 2.5kmの活断層と石灰岩堤がある。新城の西には、通称「オッパイ山」と呼ばれる、琉球石灰岩からなる2つの円錐丘(円錐カルスト)がある。保良海岸には、通称「保良ガー」と呼ばれる、海崖下に位置する湧水がある。吉野の南海岸の海崖下、弓状に湾入した砂浜の前面には、長さ400mにおよぶビーチロックがある。吉野の南東海岸(東平安名岬の付け根)、弓状に湾入した砂浜の前面には、長さ約380mのビーチロックがある。東平安名岬は、宮古島の東端を占める岬である。海中に長く突き出た岬一帯は、標高20m、幅約150m、長さ約2kmの琉球石灰岩の台地であり、台地上には更新世琉球石灰岩の岩塊群が分布し、完新世サンゴ片が散在している。また、岬の北東側のサンゴ礁上には更新世琉球石灰岩の岩塊群が分布している。これらは津波堆積物の可能性がある。
 その他、天然記念物として「仲原化石」(城辺町指定)がある。戻る

(54)上地
 下地町の来間島前浜といわれる海岸部には、アダン群落の前縁にハテルマカズラ群落が発達している。群落は草丈約0.2m、匍状性のハテルマカズラが優占し、ノアサガオ、ハイキビ、ハイシバ等が出現しており、所によってはツキイゲ群落の発達もみられるなど、数少ない自然の砂浜植生である(「前浜のハテルマカズラ群落」)。来間島の東海岸、サンゴ礁石灰岩の海崖下斜面にクロヨナの優占する海岸林が発達している。低木層にリュウキュウガキ、ナガミボチョウジ、シマヤマヒハツ等、林床にフウトウカズラ、コミノクロツグ、サクララン等が生育する。本地域のクロヨナ林は石灰岩台地の代表的な森林であり、非常に良く自然の状態が保存されている(「来間島東海岸のクロヨナ林」)。渡眞利御嶽は与那覇湾に面し、海岸林とそれに続く低地林が御嶽林として保護されている。サキシマスオウノキの優占する林分はこの御嶽林の一角をなし、最も海側で群落を形成させている。高木層の樹高は約10mで、サキシマスオウノキ、ガジュマル、タイワンエノキ等の他つる植物も多く、林内には各階層でサキシマスオウノキが特に優占しており、宮古島でサキシマスオウノキが優占している林分は極めて少なく、貴重な林分であるといえる(「渡眞利御嶽のサキシマスオウノキ群落」(「サキシマスオウノキ」))。来間島西海岸の砂浜には、汀線から陸側へ海浜植生が帯状に続いており、特に浜堤上のアダン−オオハマボウ群落は良く発達している(「来間島西側海浜の海浜植生」)。
 来間島の北海岸は、長さ約 2.5kmの活断層と石灰岩堤に縁取られている。与那覇の南東から南にかけての海岸には、長さ3kmにもおよぶ砂丘があり、宮古島で最も美しい砂浜(前浜ビーチ)が広がっている。嘉手苅の北には、海抜高度約30m、全体で長さ約2kmの3本の石灰岩堤がある。豊原の北から新里を経て友利の南にかけて、活断層を伴う石灰岩堤がある。これは、西平安名岬から断続的に連なる石灰岩堤の一部である。友利の南西には、通称「ウプガー」と呼ばれる湧水がある。西里添には、西原から連なる活断層石灰岩堤がある。
 その他、天然記念物として「前山御嶽の植物群落」、「古墳を抱くアコウ」、「雨乞座のデイゴ」、「サキシマスオウノキ」、「来間島断層崖の植生」(下地町指定)、「ツマグロゼミ」(城辺町・上野村指定)、史跡として「スムリャーミャーカ」、「下地町の池田矼」、「上比屋山遺跡」(県指定)がある。 戻る
   
(55)水納島
 水納島は、最高海抜7mの砂丘によってほぼ全島が取り巻かれている。
 その他、天然記念物として「水納御嶽植物群落」、「水納島パナリのミズガンピ」(多良間村指定)がある。戻る
 
(56)多良間島
 「多良間島塩川御嶽の植生」(「塩川御嶽の植物群落並びにフクギ並木」)は、高木層にフクギ、イヌマキ等、亜高木層にイヌマキ、タブノキ、フクギ等、低木層にモクタチバナ、ナガミボチョウジ、タブノキ等、林床にリュウキュウガキ、クワズイモ等が出現し、部落の拝所として良く保護されている、学術的価値の高い群落である。「多良間島運城御嶽のフクギ群落」(「運城御嶽のフクギ林」)は、拝所の周辺の御嶽林として保護されており、高木層はフクギが優占し、亜高木層にイヌマキ、モクタチバナ等、低木層にゲッキツ、モクタチバナ、リュウキュウガキ等、林床にはヤエヤマクマガイソウ、リュウキュウガキ等が出現する、群落高10mと発達した自然林である。「多良間島土原御嶽の植生」(「多良間島の土原御嶽の植物群落」)は、高木層にクロヨナ、アカギ、クスノハガシワ等、亜高木層にリュウキュウガキ、モクタチバナ、イヌマキ等、低木層にアカテツ、リュウキュガキ、クスノハガシワ等、林床にヤエヤマクマガイソウ、フウトウカズラ、トウズルモドキ等が出現する、部落の神域として発達している学術上価値の高い群落である。「多良間島嶺原のテリハボク群落」(「多良間島嶺原の植物群落」)は、北海岸に成林する海岸低地林であり、高木層にはテリハボクが優占し、亜高木層にイヌマキ、アダン、リュウキュウガキ等、低木層にオキナワシャリンバイ、アカギモドキ、ナガミボチョウジ等、林床にホウビカンジュ、マサキ、アカギモドキ等の稚樹が生育する、群落高10mと良く発達した低地林で、防風、防潮林としての機能を果たしている。多良間島の抱護林は、トカパナ山を起点に白嶺山を終点とする幅15m、長さ1,800mの抱護林であり、王朝時代の林政の施策として作られたといわれている。構成種はフクギを主体にテリハボク、モクタチバナ等であり、樹高6〜7m、 200年を経過した今日でも島の防風、防火の役割を果たしている学術的価値の高い人工林である。
 北部の仲筋付近、標高20〜35mの小起伏平坦面は、標高17〜19mより下部の地層が仲筋砂層で古砂丘であり、その上には新期の砂丘が不整合で覆っている。普天間港の東から北に伸びる、長さ約 2.5kmの活断層は、南側の延長方向にある現成サンゴ礁にも切れ目を形成している。北海岸には、長さ約7kmにおよぶ海岸沿いに発達する砂丘があり、この砂丘は仲筋付近で古砂丘を覆っている。南海岸には、長さ約 5.5kmにおよぶ海岸沿いに発達する砂丘がある。南海岸や北東海岸にはリーフ・ブロック(津波石)が多く分布する。
 その他、天然記念物として「泊御嶽植物群落」、「嶺間御嶽植物群落」、「普天間御嶽植物群落」、「しゅれーうがん」(多良間村指定)、史跡として「多良間島の土原豊見親のミャーカ」、「寺山の遺跡」(県指定)がある。 戻る
 
(57)久米島
 久米島の北側は隆起サンゴ礁が島に縁着し、かなり広い礁原を発達させており、具志川城址のすぐ下の海岸には特にミズガンピ等の海浜群落が発達している(「久米島北海岸のミズガンピ群落」)。「久米島大岳のイタジイ林」は、大岳、宇江城岳の中腹部に成林するイタジイ林であり、高木層はイタジイが優占し、低木層にはコバンモチ、シシアクチ、アデク等、草本層にはタシロスゲ、シラタマカズラ、ヨゴレイタチシダ等が出現する。群落高は6〜10mと低く、特に北斜面は風衝性で矮生化しているが、島に残されている自然林としての学術的価値は高い。具志川村上原地域から北原地域にかけてのリュウキュウマツ並木は、樹高10m内外、胸径25cm位の見事な並木であり、防風、防潮林としての機能を果たしている(「北原地域の松並木」)。白瀬川の河崖海抜47mに位置するイシキナハ御嶽には、石灰岩を基盤にする御嶽林が古くから保護され、自然の状態で良く保存されている。高木層にタブノキ、クスノハカエデ、クワノハエノキ等が優占し、かなりうっぺいした樹冠を作っており、亜高木層、低木層ではモクタチバナ、リュウキュウガキ等が優占し、石灰岩地に成林する林分の特徴を示している(「イシキナハ御嶽の石灰岩地植生」)。「ウーリ池のタブノキ−クロツグ群落」(「ウーリお嶽一帯の植物群落」)は、ウーリ池に三方を囲まれた丘陵部に成林する常緑広葉樹林であり、樹高8m前後、高木層にタブノキ、ホルトノキ、イタジイ等、亜高木層にモクタチバナ、コバンモチ、ヤブニッケイ等が出現し、低木層はクロツグが優占し、草本層ではビロウも出現する。「兼城御嶽の御嶽林」(「兼城御嶽と植物群落」)は、低地部に成林した常緑広葉樹林であり、高木層の樹高は15mと高く、クワノハエノキ、リュウキュウハリギリ、クロヨナなどの大木が多く、亜高木層はリュウキュウハリギリ、ハマイヌビワ、ハブカダラ等が出現し、低木層はクロツグが優占し、林床を覆っている
 島の北西海岸や北海岸には、完新世離水サンゴ礁原が分布し、中でも久米島空港西から具志川城跡の海岸部は長さ約 5.5kmにおよぶ離水サンゴ礁で縁取られている。比嘉から謝名堂にかけての一帯は、久米島で最も広い海岸低地をなしており、海岸には平行して三列の堤州(浜堤)が見られ、これらを堤州列(浜堤列)という。西海岸の鳥島の南、離れ岩には、二重のノッチがみられ、下位のノッチは現海面の平均高潮位に位置するが、上位のノッチは現海面より約3m上に位置する離水ノッチである。具志川村の久間地および仲地には、長径約1kmにおよぶ石灰岩の溶食凹地(ドリーネ)がある。白瀬川河口部にある石灰岩堤は、谷沿いに発達する石灰岩堤の典型であり、左岸側約1100m、右岸側約600mの長さである。久米島空港から鳥島に至る、通称「大原砂丘」と呼ばれる長さ約 3.5km、標高10〜20mの砂丘の下部は、砂丘砂が固結した砂丘岩となっている。
 その他、天然記念物として「久米の五枝のマツ」(国指定)、「宇根の大ソテツ」、「仲里村真謝のチュラフクギ」(県指定)、「米原御嶽の一本松」、「池田の六本松」、「タキンダの松並木」、「天宮城」、「タチジャミ」、「カワラナデシコ」、「比嘉の一本松」(仲里村指定)、「武富拝所と大ガジュマル」、「大岳小学校の松並木」、「瀬寿の一本松」、「新田の二本松」(具志川村指定)、史跡として「具志川城跡」(国指定)、「仲里間切蔵元跡」、「ウティダ石」、「宇江城城跡」、「久米島大原貝塚」、「伊敷索城跡」(県指定)がある。 戻る
 
(58)久米島南部
 「久米島のトクジムのオキナワシャリンバイ-バケイスゲ群落」は、トクムジ海崖の母岩の安山岩が露出し海からの強い潮風を受けてできた風衝植生である。群落の高さは約0.8mであり、構成種は木本のオキナワシャリンバイ、ハマヒサカキ、クサトベラ、ソテツ等が混成し、草本のバケイスゲ、キキョウラン、ワラビ、ツワブキ等が出現する。
 島尻の南には、平均海水面上約2mに位置する離水ビーチロックがある。
 その他、名勝として「トクジム海岸と一帯の安山岩」(仲里村指定)がある。戻る
 
(59)久米島東部
 オーハ島から御神崎にかけては、全長12km、幅1〜 2.5kmのサンゴ礁上に砂が堆積してできた洲島(サンドケイ)とよばれる小島が連なっている。これらは、オーハ島側から、「前浜」(長さ300m)、「高浜」(同700m)、「中浜」(同2700m)、「果浜」(同500m)と呼ばれている。奥武島の南海岸には、長さ約500mのビーチロックがある。オーハ島には、大小二つのビーチロックがある。奥武島の南海岸には、一般に「畳石」(「仲里村奥武島の畳石」)と呼ばれている、五角形や六角形の岩が亀甲状に並んだ形をした波侵棚がある。この多角形は、溶岩が冷え固まるときに収縮するために出来たひび割れで、柱状節理と呼ばれる。 戻る
 
(60)硫黄鳥島
 「硫黄鳥島のハチジョウススキ群落」は、噴火口外側の斜面部に生育しているハチジョウススキを主体にした先駆的植生であり、ハチジョウススキの低い株立ちした林分を中心にハマヒサカキ、シャシャンポ等が出現する。「硫黄鳥島のマルバニッケイ−シャシャンポ群落」は、島の中央部の火口壁周辺から北西側の最高峰にかけてとその東側斜面にかけて発達している。県内でマルバニッケイの群落が成林しているのは此処だけである。
 硫黄鳥島は、徳之島の西方65kmに位置する沖縄県最北端の島であり、沖縄県で唯一の活火山の島である。島は、北西側の硫黄岳火口を中心とする「硫黄岳火山体」と南東側のグスク中央火口丘を中心とする「グスク火山体」の二つの火山体が併合して出来ている。いずれの山体にも、噴気孔があり、火山ガスが噴出している。島の東海岸端の浜では温泉が湧出している。戻る