「陸域における自然環境の保全に関する指針」の概要
目 次
  1.1 八重山諸島の自然環境
  1.1.1 八重山諸島における特定植物群落
  1.1.2 八重山諸島における特異な地形・地質
  1.1.3 八重山諸島における文化財の状況
  1.1.4 貴重な動物種の分布
  1.2 各々の地域における「すぐれた自然」の概況 現在のページ

1.2 各々の地域における「すぐれた自然」の概況

 各々の地域における「すぐれた自然」の概況は以下の通りである。なお、下線は「天然記念物」、緑色文字は「特定植物群落」、えんじ色文字は「特異な地形・地質」を表している

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(30)平久保崎 (31)伊原間 (32)伊野田 (33)川平 (34)白保
(35)石垣 (36)竹富島 (37)小浜島 (38)黒島 (39)鳩間島
(40)美原 (41)船浦 (42)西表大原 (43)舟浮 (44)ウビラ石
(45)波照間島 (46)与那国島 (47)魚釣島    


(30)平久保崎
 平久保集落の北東約1.2Kmの耕作地と山との境界域には、国の天然記念物に指定されているヤエヤマシタンが2本あり、各々の胸高直径は68cm、57cmであり、樹高は約14mである(「平久保のヤエヤマシタン」)。
 平久保崎の南には、緑色片岩(約2億年前の変成岩)に発達する、南北に連なる4つの円錐丘があり、いずれも比高はおよそ40mである。戻る

(31)伊原間
 「平久保半島安良御嶽のハスノハギリ林」
は、平久保半島の東海岸に成林する群落高約10mの海岸低地林であり、御嶽林として保護されている。安良岳の海抜200m以上の山地帯にはイタジイ林、中腹部の谷部にはガジュマル、ホルトノキ、イスノキ等の優占する自然林が生育する(「伊原間半島安良岳の植生」)。明石部落の海岸から北側へ伸びる海岸林は、高木層にハスノハギリが優占し、亜高木層にハスノハギリ、トウズルモドキ等、低木層にアカテツ、アカギモドキ等が生育する、群落高10mの海岸林としては良く発達した自然林である(「石垣島明石海岸のハスノハギリ林」)。
 ダテフ崎の東には、泥質片岩(約2億年前の変成岩)に発達する3個の円錐丘がある。明石には、南北約1.2Kmの砂丘がある。戻る

(32)伊野田
  吹通川河口のマングローブ林には、ヤエヤマヒルギ林、ヤエヤマヒルギ−オヒルギ林、オヒルギ林が生育する。群落構成はヤエヤマヒルギ、オヒルギの2種であるが、陸化の進んだ所ではシマシラキ、シイノキカズラ、イボタクサギ等が生育している(「吹樋川のヒルギ群落」、「吹通川のマングローブ林」)。米原の南側山地斜面には、八重山固有属のヤエヤマヤシ林が発達しており、高木層にヤエヤマヤシ、亜高木層にヤエヤマヤシ、ショウベンノキ、ギョボク等、低木層にクロツグ、シシアクチ、リュウキュウアオキ等が生育する。ヤエヤマヤシ林は八重山諸島に3ヶ所あるのみであり、極めて貴重なものである(「米原のヤエヤマヤシ群落」「米原のヤエヤマヤシ林」)。野底マーペは、山頂に巨岩が屹立する海抜282.4mの岩山であり、斜面下部にはイタジイ林が生育し、海抜が高まるにつれて低木林状となり、山頂付近の風衝地にはタブノキ、ヤブニッケイ、ヤブツバキ等で構成される森林、タイワンヤマツツジ、リュウキュウモクセイ等で構成される低木林、ショウキランが優占する群落等が生育する(「野底マーペの植生」)。マンゲー山は海抜103mの古生層石灰岩の岩山であり、斜面にはオオバキ、タブノキ、ショウベンノキ等を主要構成種とする森林が生育し、山頂付近にはガジュマル、オキナワソケイ、シイノキカズラ等で構成される風衝性低木林が生育する(「マンゲー山の石灰岩地植生」)。
 吹通川河口部には、約500m四方のヒルギ林のある低湿地(マングローブ湿地)がある。星野には、宮良層(固結石灰岩・砂岩)に形成された、円錐丘(残丘)がある。野底岳山頂部は、通称「野底マーペー」と呼ばれ、野底岳山頂に円筒状の岩(塔状山頂)がある。
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(33)川平
 荒川の中流域から上流域にかけての河岸斜面にはカンヒザクラが自生している。これはカンヒザクラが群落を成している訳ではなく、河川斜面に点在しているものであるが、自生状になっている所は此処だけであり、大事に保護すべきである(「荒川のカンヒザクラ自生地」「石垣島荒川のカンヒザクラ」)。「吉原ネパル御嶽のリュウキュウガキ林」は、隆起サンゴ礁石灰岩を基盤にした海浜地域に発達する森林であり、樹冠はリュウキュウガキ、タブノキ、ハスノハギリ等で構成され、亜高木層にリュウキュウガキ、アカメイヌビワ等、低木層にシマヤマヒハツ、アカテツ等が生育する、代表的な石灰岩地砂浜の海岸林である(「仲筋村ネバル御嶽の亜熱帯海岸林」)。於茂登岳、桴海於茂登岳を中心とした山地帯には、低海抜から山地上部に向かってイタジイ林、イスノキ林が発達し、山地上部にはリュウキュウチク林が分布する。リュウキュウチク林は、季節風帯の植生として、風圧を示す指標的な植生である。イタジイ林は八重山群島の代表的な気候的極相林であるなど、本地域の植生は亜熱帯地域の代表的な森林であり、良く保存されている(「於茂登岳・桴海於茂登一帯の植生」)。屋良部半島北西部の海崖は、常に強い潮風にあてられて風衝草地が発達している。ここには、ヤブランを主体にした群落、コウライシバを主体にした群落、カショウアブラススキを主体にした群落、ヘンリーメヒシバ、ハギカズラ等が優占する群落など多様な植生が発達している(「御神崎の草地植生」)。屋良部半島の中央部に、あまり人為的干渉を受けていない自然度の高い風衝性常緑広葉樹林がある(「屋良部岳の植生」)。
 石崎付近には、大小6個の凝灰角礫岩(約4,000万年前の火成岩)に発達する円錐丘がある。川平北西には、2個の凝灰角礫岩に発達する円錐丘がある。野底ビーチには、砂丘を伴う長さ500m程の堤洲(砂洲)があり、背後の低地は水田である。川平湾は、奥行約2Km、幅約1Kmのであり、湾岸には琉球石灰岩が縁取り、ノッチの形成が見られる。御神崎の北岸には、琉球石灰岩に形成された、一連(約2Km)のノッチがある。御神崎の南岸には、琉球石灰岩に形成された、一連(約1.5Km)のノッチがある。川平北西には長さ約150mのビーチロックがある。吉原北方には長さ約90mのビーチロックがある。御神崎には、火砕岩・泥岩に発達する円錐丘がある。於茂登岳は山頂が小起状の準平原地形(山頂平坦面)となっている。戻る  

(34)白保
 宮良川河口に発達するマングローブ林には、ヤエヤマヒルギ林、ヤエヤマヒルギ−オヒルギ混生林、オヒルギ林が生育し、範囲が広いことと、ヒルギ林が良く保存されていることから重要な植生といえる(「宮良川のヒルギ林」「宮良川のマングローブ林」)。宮良御嶽は宮良小学校の北方約1.5Kmの台地上に位置し、拝所周辺にタブノキ、フクギ等が優占する御嶽林が発達する(「宮良仲嵩御嶽の御嶽林」)。
 カラ岳付近には、カラ岳(136m)を中心とする、大小6個の残丘円錐丘を含む)がある。白保には、長さ1Km余、幅約200mの砂丘があるが、採砂によって背後の部分が消失している。白保南西海岸には、礁原上の礁岩塊(リーフブロック)が見られる。同様な岩塊は、石垣島の東海岸全域で認められる。白保南から宮良にかけて、琉球石灰岩に形成された長さ2Km余の一連のノッチがある。宮良川河口部には、ヒルギ林の低湿地(マングローブ湿地)がある。石垣島東海岸の礁原や海岸(陸地)にはリーフブロック(サンゴ礁起源の岩塊)が無数に分布している。これらの岩塊は津波によって打ち上げられた岩だと言われている。そのなかで、大浜の崎原公園内の「津波大石(つなみうふいし)」は特に有名である。大浜南方海岸には、石垣島の東南側が隆起する傾動運動によって出現した完新世離水サンゴ礁がある。戻る


(35)石垣
 名蔵御嶽は、名蔵小・中学校の北方約800mの耕作地の中に位置し、拝所周辺にアコウ、ガジュマル、フクギ等で構成される低地林が生育し、亜高木層にはコミノクロツグ、ハブカズラ等、低木層にはクワズイモ、ビロウ等が生育する(「名蔵御嶽の植生」)。名蔵川河口にはオヒルギ林、ヤエヤマヒルギ林、ヒルギモドキ林が生育しており、その占める面積が広いことや自然状態で良く保存されていることからみて重要な植生である(「名蔵川河口域のマングローブ林」)。
 名蔵川河口部(アンパル)は、堤洲(砂洲)マングローブ湿地、潮汐湿地、海岸低地によって、石垣島最大の湿原を構成している。外側の堤洲(砂洲)は湿原の外枠をなし、南北2Km余に及ぶ。その内側にヒルギ林が広がるマングローブ湿地と、潮汐湿地が位置し、最奥部には水田耕作に利用されている海岸低地が広がり、野鳥などの貴重な生息地となっている。
 その他、天然記念物として「宮鳥御嶽のリュウキュウチシャノキ」(県指定)、名勝として「石垣氏庭園」(国指定)がある。戻る

(36)竹富島
 「竹富島南東海岸のハスノハギリ林」は、高木層にはハスノハギリ、テリハボク、ハテルマギリ等、亜高木層にはアカギモドキ、アカテツ等、低木層にはアダン、ハテルマギリ等、林床にはハマオモト、トウツルモドキ等が生育する。
 石垣港の東には、長さ約1.5Kmのノッチがある。竹富島東海岸には、長さ約2Kmに及ぶ砂丘がある。竹富島南海岸には、長さ約2Kmに及ぶノッチがある。竹富島西海岸には、長さ500mに及ぶビーチロックがある。
  その他、天然記念物として「国仲お嶽の福木」(竹富町指定)、名勝として「宮良殿内庭園」(国指定)がある。戻る  

(37)小浜島
  小浜島の東海岸の砂丘に発達したハスノハギリ林は、高木層にハスノハギリ、亜高木層にアカテツ、テリハボク等、低木層にヤエヤマアオキ、シマヤマヒハツ等が生育する。ハスノハギリ林は琉球列島の代表的な海岸林であり、自然植生として貴重なものである(「小浜島東海岸のハスノハギリ林」)。
 小浜島北西には、八重山変成岩類に形成された3個の円錐丘がある。
 その他、天然記念物として「コーキ原ガジュマル群落」(竹富町指定)がある。戻る


(38)黒島
  黒島の海岸を取り巻く隆起サンゴ礁石灰岩地帯には、コウライシバ−ソナレムグラ群落、イソマツ−モクビャッコウ群落、ミズガンピ群集、クサトベラ−モンパノキ群集等、琉球列島の代表的な海岸植生が生育し、中でもミズガンピ群集は良く保存されている(「黒島の海浜植生」)。「黒島仲本御嶽のハテルマギリ、ハスノハギリ群落」は、モクマオウの防風林、ハテルマギリ、オオハマボウ、アカテツ等の優占する林分を経て、ハスノハギリの優占する林分へと続く御嶽林であり、ハスノハギリの樹高は10〜12mである。
 黒島の東海岸から南海岸、西海岸にかけて、ノッチが発達している。黒島には、ほぼ全周を取り巻く海岸砂丘があり、特に北西岸の砂丘は発達がよい。黒島南方のリーフブロック群(津波石)は、最大長径7mの岩塊群であり、その内の1つは反転している。新城島(上地)島には、北から東海岸に発達するノッチがあり、南西部には砂丘がある。新城島(下地)には、北海岸に砂丘があり、島のほぼ全周に発達しているノッチがある。  その他、天然記念物として「アサビシバナ(遊び岩)」「桑の老木」(竹富町指定)がある。戻る

(39)鳩間島
  鳩間島の北海岸標高5m付近のアダン群落に隣接して、アイアシ群落が生育する。アイアシは海岸砂浜付近に生育するイネ科の植物であり、琉球列島では鳩間島だけに生育する(「鳩間島のアイアシ群落」)。
 鳩間島北海岸には、長さ1Km余のノッチがある。鳩間島西海岸には、長さ約200mのビーチロックがある。長さ約1.5Kmの堤洲がある。長さ約1Kmの弧状の堤洲がある。住吉の北東には、八重山層群の不整合面に形成された琉球層群の亀甲石が点在する。
 その他、天然記念物として「鳩間中森」(竹富町指定)がある。戻る


(40)美原
 古見岳の海抜200m以上の山地帯にイタジイ林、アカメイヌビワ林等の自然林が生育する。山地斜面はイタジイ林が分布し、谷部にアカメイヌビワ、山頂部にリュウキュウチク林が分布する。本地域の森林は非常に良く自然の状態が保たれており、植物相も特異的な分布を示すものが多い(「古見岳一帯の自然林」)。西表島の山地帯の大部分はイタジイ林によって占められ、低地谷筋にはオキナワウラジロガシ林が生育し、上流谷筋にはアカメイヌビワ、ホソバタブ林が生育する。本地域の森林は亜熱帯降雨林の代表的な植生であり、その占める面積は広大である(「西表島中部山地の自然林」)。
 由布島は、島全体が礁原の上に砂が堆積して出来た洲島(サンド・ケイ)である。古見(由布島の対岸に位置)には、南北約1.5Kmのヒルギ林が広がるマングローブ湿地がある。ユツン川河口部には、長さ約300mのマングローブ湿地がある。西田川、ヒナイ川河口部には、マングローブ湿地が広がり、その前面に干潟が広がっている。マングローブ湿地の背後には小規模の谷底低地が見られる。ヒナイ滝は、沖縄で最も落差(比高)の大きな滝(落差約45m)であり、海上からも見える。滝を構成する岩石は砂岩である。戻る

(41)船浦
  ニッパヤシは西表島を北限とする熱帯性のヤシ科植物でマングローブ湿地に群落を形成する。「船浦のニッパヤシ林」は、我が国の北限地であり、内離島とともに2ヶ所のみに生育する(「船浦のニッパヤシ群落」)。浦内川の河口域に発達するマングローブ林は、ヤエヤマヒルギ、ヤエヤマヒルギ−オヒルギ混生林、オヒルギ林が生育し、河口近くにはマヤプシギ林やメヒルギの小群落が分布する。本地域のマングローブ林は規模が大きく、天然の状態で良く保存されている(「浦内川のマングローブ林」)。星立部落後方のマングローブ林と星立拝所のヤエヤマヤシの自生地が国指定の天然記念物として保護区域に指定されている。星立部落の後方は、浦内川河口近くの支流や、星立部落の南から西側へ流れる川の遊水池となっており、一面がメヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ等のマングローブによって被われている。この泥地にミミモチシダが群生していることも、保護区域としての価値を高くしている(「星立天然保護区域」「星立のヤエヤマヤシ・マングローブ林」)。内離島の北東部、低地の湿地にニッパヤシの生育地がある。内離島は船浦と並んでニッパヤシの北限地であり、生物地理学上貴重なことから、大事に保護すべきである(「内離島のニッパヤシ」
 船浦にあるマングローブ湿地の背後は海岸低地で、マングローブ湿地の前面には堤洲が位置する。また、その前面には干潟が広がっており、全体として帯状構造をなしている。浦内川下流部には、大規模なマングローブ湿地(ヒルギ林)が分布する。ヒルギ林の背後には谷底低地が位置し、水田に利用されてきたが、水田放棄後は荒れ地となっている。最下流部には干潟が広がる。星立集落は堤洲上に位置し、その背後にはマングローブ湿地がある。祖納集落は砂洲の上に立地するが、この砂洲が出来る以前は対岸に小島があり、元々島であったものが陸繋ぎになった地形(トンボロ)である。美田良川河口部には、長さ約2Kmの堤洲があり、背後は水田になっている。仲良川河口部には、マングローブ湿地(ヒルギ林)が分布し、最下流部には干潟が広がる。マリウド滝は、幅約20m、高さ16mで三段になっている。カンピラ滝は、幾つもの小滝が連なり、全長約200mに及ぶ。実際は滝というよりも階段状の岩盤河川である。滝を構成する岩石は第三紀の比較的脆い砂岩であり、この滝の周辺には水流で削られた壺状の穴、ポットホールが無数に分布する。
 その他、天然記念物として「船浮のヤエヤマハマゴウ」(県指定)、「タブの老木」「カマドマのクバデサー」(竹富町指定)がある。戻る


(42)西表大原
 古見部落に流れる前良川河口の南側にはサキシマスオウノキ林が生育し、高木層はサキシマスオウノキで占められ、ナンテンカズラが巻きついている。サキシマスオウノキ林は、琉球列島を北限とする熱帯性の樹林で、汽水域に成立する湿生林であり、本地域ではその代表的な林相を呈し、やや広い範囲に発達している(「古見のサキシマスオウノキ群落」「古見のサキシマスオウノキ林」)。仲間川には、我が国最大の面積を占めるマングローブ林及びサガリバナ林が発達している。河口付近から、マヤプシギ−ヒルギダマシ林、ヤエヤマヒルギ林、オヒルギ林等が生育環境によってすみわけており、またその支流域に生育するサガリバナ林等が良く保存されている(「仲間川天然保護区域」「仲間川流域の湿生林」)。「西表島ウブンドルのヤエヤマヤシ林」は、ウブンドルの山地中腹部に自生するヤエヤマヤシ群落であり、高木層にヤエヤマヤシ、亜高木層にホソバムクイヌビワ、ヤエヤマヤシ等、低木層にヤエヤマヤシ、コミノクロツグ等が生育する、ヤシの自生地として学術上貴重なものである(「ウブンドルのヤエヤマヤシ群落」)。西表島南岸の急峻な斜面に発達する風衝地植生には、斜面の勾配や土壌の発達等により種々の植物群落がみられる。良く発達した林分にはタブノキ、リュウキュウコクタン、ハマイヌビワ、モクタチバナ等が優占し、亜高木層にはリュウキュウガキ、アコウ、ショウベンノキ等、低木層にナガミボチョウジ、クロガネモチ、オオバルリミノキ等が生育する。この植生は天然の状態で良く保存されており、広い面積に及んでいる(「西表島南岸の森林」)。南風見田海岸には約2.5Kmの砂浜が続き、汀線から浜堤上にかけて海浜植物が帯状に分布し、特に浜堤上にはハスノハギリの優占する海岸林が発達する(「西表島南風見田海岸のハスノハギリ群落」)。
 相良川と後良川の河口部には、マングローブ湿地がある。前良川の河口部には、マングローブ湿地がある。仲間川河口部には、仲間川天然保護区域を含む、沖縄県最大規模のマングローブ湿地(ヒルギ林)が広がり、その背後に谷底低地がある。豊原の西方には、長さ約1.5Kmの砂丘があり、砂丘下部はウミガメの産卵場所の一つとなっている。豊原西方には、長径6m以下の完新世サンゴ礁岩塊が点在している(リーフブロック群)。戻る


(43)舟浮
 南風見岳中腹部から山頂部にかけての斜面には、高木層にイタジイ、タブノキ、オルドガキ等、亜高木層にイスノキ、ツルアダン等、低木層にアカハダノキ、リュウキュウアオキ等が生育する常緑広葉樹林がある。人為的攪乱の少ない、イタジイの優占する林分であり、南向きの斜面には風衝性の強い林分も見られ、山頂部にはリュウキュウチクの優占する竹林の発達も見られる(「南風見岳の植生」)。
 仲良川下流部には、ヒルギ林(マングローブ湿地)があり、その背後に谷底低地がある。クイラ川、ヒドリ川下流域には、マングローブ湿地があり、最下流部には干潟がある。水落滝がある。南風岸岳の東南には、長径8m以下の完新世サンゴ礁岩塊(リーフブロック群)がある。戻る

(44)ウビラ石
 崎山湾には、干潟、マングローブ湿地があり、自然環境保全地域に指定されている。
 その他、天然記念物として「仲の神島海鳥繁殖地」(国指定)がある。戻る

(45)波照間島
 高那崎の段丘上の隆起サンゴ礁の礁原上には、イソフサギ群集、イソマツ−モクビャッコウ群集、コウライシバ−ソナレムグラ群集、ミズガンピ群集、クサトベラ−モンパノキ群集、アダン群集等が帯状に分布する海浜植生が発達する。この植生は、琉球列島の海浜礁原の代表的なものであり、自然植生の原形をとどめている(「高那崎の海浜植生」)。島の中央部、灯台の近くにある白郎原御嶽には、クワノハエノキ、リュウキュウガキ、ツゲモドキの優占する天然林が生育している。この森林は、御願所として古くから保護されており、数少ない低地林の天然林である。また、御嶽の中に、クロボウモドキの純林があり、バンレイシ科の林としては、我が国唯一のものである(「白郎原御嶽のクワノハエノキ林」)。「阿幸俣御嶽の森林」は、亜高木層にツゲモドキ、ガジュマル、ハマイヌビワ等、低木層にコミノクロツグ、シマヤマヒハツ、カラスキバサンライ等が生育する、石灰岩地の代表的な森林である。ハテルマギリ群落は先島諸島が北限であり、南海岸のハテルマギリの低木林は最も良く発達している(「波照間島南海岸のハテルマギリ低木林」)。「真徳利御嶽のガジュマル林」は、琉球石灰岩地に発達する天然林であり、クワノハエノキ、アカテツ、ガジュマル、フクギ、タブノキが優占する。植生はきわめて良く保存されており、天然林として貴重なものである。西海岸の隆起サンゴ礁石灰岩上には、低木層にミズガンピ、モンパノキ、ハテルマギリ等、林床にミズガンピ、イソマツ、ハマオモト等が生育する、良く発達したミズガンピ林が生育している。胸高直径20〜52cmほどのミズガンピが18本生育しており、この様なミズガンピの巨木群は本県では他に例がなく、貴重な群落である(「浜シタン群落」「波照間島毛原崎のミズガンピ群落」)。
 波照間島は、島全体が顕著な海岸段丘(低位段丘〜中位段丘)であり、およそ7つの段丘面に区分される。同島にはまた活断層が10本程度走っており、地殻変動や海水準変動の研究において重要な島の一つとなっている。島の東半分の海岸には、ノッチがある。高那崎付近の断層崖は比高(6〜10m)が大きく顕著な活断層の一つである。南海岸の砂浜には、小規模なビーチロックがある。南海岸には、長さ500mの小規模な海岸砂丘がある。島の南から西にかけて、ノッチがある。浜崎には、全体として三角形をした、幅のある砂丘がある。波照間港の東には、長さ400mにわたってビーチロックが分布する。高那崎周辺には、およそ13万年前に形成された段丘面に無数の岩塊(サンゴ石灰岩)が分布する。この岩塊を打ち上げた年代は凡そ200年前の可能性があり、明和大津波に打ち上げられた岩だと考えられている(岩塊群)。段丘面には砂丘も見られる。戻る


(46)与那国島
 東崎の突出部の先端は、コウライシバ、オキナワミチシバ等を主体にした草地で草高5cmと低く、地面にへばりついた様に密生した独特の草地景観を成している(「与那国島東崎のコウライシバ群落」)。サンニヌ台から新川鼻にかけての海崖には、崖面や海崖の肩状部にカショウアブラススキやバケイスゲ等の風衝草地が形成されており、特にバケイスゲ群落は団塊群落を形成している。バケイスゲ、カショウアブラススキ、ヤブラン等の草本の他に、ハマヒサカキ、アデク、ノボタン等の大木も含んだ特異な景観をした群落であり、島の厳しい環境に適応して出来た風衝草原である(「サンニンヌ台一帯の海崖風衝草原」)。宇良部岳は「ヨナグニサン生息地」として県の天然記念物に指定されており、中腹部から山頂にかけての北側や北東側の斜面には低地型の森林が、山頂部から南斜面の尾根部にはウラジロガシ林が、南斜面にはイタジイ林が発達している。この地域は、ヤブツバキクラス域の最も南の森林として学術的に価値が高い森林である(「宇良部岳のシイ・カシ林」)。宇良部岳の南斜面を集水して新川鼻との間を流れる小さな川の流域の低地部には、高木層にタブノキ、オオバアコウ、フカノキ等、亜高木層にフクギ、フカノキ、モクタチバナ等、低木層にモクタチバナ、リュウキュウガキ、コミノクロツグ等が生育する低木林があり、これは島に残された唯一の低木林であり、良く保護された貴重な植生である(「新川鼻の低地林」)。「比川のミズカンピ群落」は、隆起サンゴ礁上に形成されたミズガンピだけの純群落であり、県内でも数少なく、学術的な価値が高いものである。久部良岳は県の天然記念物として保護区域に指定されている。全山にビロウ群落が発達し、特に中腹部から山頂部にかけての群落は良く発達している。高木層はビロウが優占し、低木層にイヌビワ、コミノクロツグ、ビロウ等が生育する、島の独立峰に出来た特異な景観を示す群落である(「久部良岳天然保護区域」「久部良岳のビロウ林」)。「久部良大池のミミモチシダ群落」は、ミミモチシダだけから出来た単純群落である。ミミモチシダは熱帯圏に分布の中心のあるシダ植物であり、八重山諸島はその分布の北限とみなすことが出来る。「南牧場のトゲイボタ群落」は、岩塊状や断層崖の肩状部に成林した風衝性の匍匐性の群落であり、トゲイボタが岩上にへばりつくように発達した単純な組成であり、県内には2ヶ所にだけ分布が知られている特殊な群落である。
 与那国島は海蝕崖が多く発達しているが、中でも東崎から新川鼻に到る4Km余に及ぶ一連の海蝕崖(高さ50〜100m)が最も顕著で代表的であり、風光明媚である。祖納の北から北東にかけて、長さ2Km余に及ぶノッチがある。祖納の北西海岸には、長さ1Km余のノッチがある。空港北から馬鼻崎にかけて、長さ2Km余のノッチがある。島の南西海岸には、長さ約2Km、高さ30〜40mのノッチがある。与那国島には箱状の谷底低地が7〜8個分布するが、南牧場の北にある谷底低地はその代表的なものの一つである。この低地の南縁は断層崖で境され、断層によりできた低地である。波照間島と同様、与那国島も多くの活断層が走っている。南牧場の北にある断層崖は東西に約2Km、高さ約50mであり、断層崖の代表的なものである。祖納の南西には、ティンダバナを中心に、その東西に伸びる、全長2Km余、比高およそ50mの顕著な断層崖がある。祖納の南東には、谷底低地があり、この谷底低地の南縁は断層崖で境されている。久部良バリには、高さ(深さ)約15m、幅約3mの溝状の地形(割れ目)がある。これは、砂岩を切る断層の割れ目が、かつて波に洗われて出来た溝状の地形と考えられている。
 その他、天然記念物として「西真嘉大デイゴ」「久部良ミット湿地帯」(与那国町指定)、名勝として「久部良バリー帯」、「ティンダバナ」、「サンニヌ台」(県指定)がある。戻る


(47)魚釣島
 黄尾嶼の中腹部には、高木層にガジュマル、オオクサボク、オオバキ等、亜高木層にリュウキュウガキ、オオクサボク、オオバギ等、低木層にリュウキュウガキ、ハマイヌビワ、ナガミボチョウジ等が生育する原生林がある。黄尾嶼は無人の火山島であり、植生遷移を知る上での貴重な群落である(「黄尾礁の自然植生」)。「黄尾礁噴火口壁のホソバワダン群落」は、北向きの噴火口壁に出来た草本群落であり、本県では数少ない火口壁群落である。黄尾嶼の海崖の上部溶岩上には、ガジュマルの単一群落がクモの巣の様に匍匐状に密生しており、溶岩上に出来た風衝植生の一つで代表的な型と考えられる(「黄尾礁のガジュマル低木林」)。「南・北小島の草地植生」は、島の山頂部にかけての斜面に出来た草地で、ヘンリーメヒシバ、ハマダイコン、ハママンネングサ、ギシギシ、ハマボッス等により構成されている。魚釣島北海岸の隆起サンゴ礁の平坦な海岸の中央部付近にタイワンハマサジの群落がある。これは、我が国唯一の群落である(「魚釣島のタイワンハマサジ群落」)。魚釣島中腹部のやや平坦な立地に、高木層にタブノキ、アマミアラカシ、ガジュマル等、亜高木層にモクタチバナ、ヤブツバキ、シロダモ等、低木層にショウベンノキ、コミノクロツグ、モクタチバナ等が生育する林分が発達しており、これは小さな島で発達した原生林として貴重なものである(「魚釣島の自然林」)。
 魚釣島の大部分は「魚釣島層」と呼ばれる砂岩(一部で砂岩と礫岩の互層を含む)からなり、南岸は顕著な海蝕崖をなし、その海蝕崖(最高標高362m)を頂点にして、北海岸に向けて高度を下げる形で傾斜している。この傾斜には、地層面に支配されてできた階段状の地形(ケスタ地形)が見られる。魚釣島の南岸は比高が250〜350mの顕著な海蝕崖をなし、壮観な地形を与えている。魚釣島の北海岸には、比較的豊富な水量の湧泉が3つある。魚釣島の海岸一帯には、明瞭な完新世離水サンゴ礁が発達している。黄尾嶼は更新世に生成された火山島である。島のほぼ中央部にある噴火口から繰り返し噴出した溶岩流などによって形成された典型的な成層火山であり、島の地質は玄武岩である。黄尾嶼中央部には、黄尾嶼の最高海抜高度(117m)である千歳山をはじめとする大小4個の円錐丘がある。黄尾嶼中央部に3個の旧噴火口がある。最上部の火口は直径40m、深さ20mであり、中腹部の火口は直径15〜20m、深さ10m程度である。北小島の海岸一帯、南小島の海岸一帯には、明瞭な完新世離水サンゴ礁が発達している。戻る



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