1.自然環境の状況
八重山諸島には、島の大部分が古い岩石から構成される山地・丘陵を持つ高い島と、琉球石灰岩で構成される平たい低い島がある。
石垣島・西表島・小浜島・与那国島および尖閣諸島の島々が高い島、竹富島・黒島・新城島・鳩間島・波照間島が低い島である。
石垣島は三つの山系が組み合わさってできている。すなわち、北から、平久保半島の北東〜南東方向に細長く並ぶ山系、野底岳から東南方向に伸び、於茂登岳を主体とする山系、バンナ岳を中心とする、東西方向に連なる山系である。これらの山系を構成する地質は、片岩、千枚岩、チャートなどで、およそ2億年前から3,000万年前の古い地質(トムル層、富崎層など)である。その古い山地を取り囲むように、石灰岩を主体とする数十万年前以降の新しい地層(大浜層)が分布し、台地(段丘)を作っている。
竹富島は、全島が琉球石灰岩で構成され、島の最高海抜が20.5mの低島である。東海岸と南海岸にはノッチが見られる。東海岸は2Kmに及ぶ砂丘が縁取り、西海岸の砂浜には500mにおよぶビーチロックが分布する。 黒島は、全島が琉球石灰岩で構成され、島の最高地点は14mの低島である。島の大部分を石灰岩に刻まれたノッチと、石灰岩を被う砂丘が取り巻いている。島の最高地点は砂丘に位置している。 西表島は、沖縄島に次いで大きな島で、山地・丘陵が広く分布し、それを刻む深い谷と河川がよく発達している。島を沖合から遠望すると、その山頂はほぼ水平であり、海抜300〜400mぐらいのよく揃った高度を示している。この地形は「準平原」または「侵食小起伏面」と呼ぶことができる。
波照間島は、島全体が琉球石灰岩から構成される低島である。波照間島の最大の特徴は、7段に及ぶ見事な海岸段丘の発達と、10本に及ぶ活断層である。この二つの地形は、海面変動や地殻変動の研究において大変貴重な地形である。
与那国島は、高島であるが、山地・丘陵を取り囲むように石灰岩を中心とする段丘(台地)が広く分布する。波照間島と同様に、島を縦横に活断層が走る。この断層に起因する崖(断層崖)や、断層に支配されて形成された谷底低地が比較的広く分布している点が、与那国島の地形の最大の特徴である。
尖閣諸島は、沖縄舟盆(沖縄トラフ)の西側に位置し、東海大陸棚の南側に位置し、大小9つの島々からなる。黄尾嶼は典型的な火山島であり、魚釣島には小規模ながらケスタ地形が認められる。
石垣島と西表島の丘陵地から山地にかけては、非石灰岩地常緑広葉樹林のケナガエサカキースダジイ群集のシイ・カシ林が生育し、西表島では樹高が20mに達する密林を形成している。また、渓谷沿いには、オキナワウラジロガシ群集などが生育し、局所的にはヤエヤマヤシ林も分布している。西表島の主な河川の下流域ではサキシマスオウノキやサガリバナが優占する湿地林がみられる。波照間島にはナガミボチョウジークスノハカエデ群団の植生が点在している。一方、人間活動と係わりの深い低地では、御嶽林に自然植生が残っている。マングローブ林は、石垣島の宮良川・名蔵川・吹通川等、西表島の仲間川・浦内川・後良川等に分布し、ヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギ、ヒルギモドキ、ヤマプシキ等が自生している。代償植生としては、石垣島の海抜200mより低い地域に見られる常緑広葉樹二次林、竹富島の海岸沿いに防風林として植林されたモクマオウなどが挙げられる。八重山列島の砂丘海岸や隆起サンゴ礁上にはグンバイヒルガオ、ハマボウフウ、クサトベラ、モンパノキ等の海岸植生が分布している。
八重山諸島には、イリオモテヤマネコやキシノウエトカゲ等の天然記念物の他、イワサキセダカヘビ(石垣島、西表島)、サキシマバイダカ(石垣島)、ミヤラヒメヘビ(与那国島)、イリオモテメジロ(西表島)など固有の動物が生息し、個々の島々の自然環境を特徴づけている。
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