「沿岸域における自然環境の保全に関する指針」の概要
目 次
1.自然環境の状況 現在のページ

1.自然環境の状況

 沖縄島において、比較的生サンゴの被度が高く、生育が良好な海域は、辺戸岬から奥の沖合海域、奥間ビーチの沖合海域、本部半島北部海岸の沖合海域に見られる。また、面積1ha以上の藻場は43区域、干潟は40区域に分布している。
 沖縄島沿岸海域に生育・生息する貴重な植物種としてはクビレミドロやヒジキ等が、貴重な動物種としては中城湾のトカゲハゼ等が挙げられる。
 藻場、干潟、サンゴ礁の分布状況は表1に示す通りである。


  各々の地域における「すぐれた自然」の概況は以下の通りである。なお、下線は「天然記念物」、緑色文字は「特定植物群落」、えんじ色文字は「特異な地形・地質」を表している

■下表の地域名をクリックすると、それぞれの地域へジャンプします。

(1)奥 (2)与那 (3)楚洲 (4)仲宗根 (5)大宜味
(6)辺土名 (7)安波 (8)瀬底島 (9)名護 (10)仲尾次
(11)国頭平良 (12)高江 (13)名護南部 (14)瀬嵩 (15)天仁屋
(16)残波岬 (17)石川 (18)金武 (19)高志保 (20)沖縄市北部
(21)宮城島 (22)大謝名 (23)沖縄市南部 (24)屋慶名 (25)那覇
(26)与那原 (27)糸満 (28)知念 (29)喜屋武岬  

(1)奥
 干潟が、奥川河口域に分布している。
 茅打バンタから辺戸岬に至る海域を除きサンゴ礁が分布している。また、生サンゴの被度は沿岸部では余り高くないが、奥集落より北側の沖合及び宜名真の沖合には比較的被度の高い海域が見られる。戻る  

(2)与那
 与那川河口域を除きサンゴ礁が分布している。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、与那と伊地の間には被度の高い海域が見られる。戻る  


(3)楚洲
 藻場が、伊部川河口域(伊部之浜)に分布している。
 全域にサンゴ礁が分布している。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、赤崎沖合には比較的被度の高い海域が見られる。戻る  

(4)仲宗根
 藻場が、備瀬地先・有馬原地先・クンジャー地先に分布している。
 干潟が、炬港に分布している。
 大井川河口部を除きサンゴ礁が分布し、沖合への発達も見られ、浜元沖合には離礁が点在する。また、崎山沖合・宇茂佐原沖合・備瀬崎沖合・浜元沖合には、比較的生サンゴの被度の高い海域が見られる。
 大井川河口部は三角江(エスチュアリー)と呼ばれる、海水が内陸部まで進入するラッパ(三角)状の河口部になっている。今帰仁村与那嶺の海岸の砂丘は、前面のサンゴ礁や砂浜と一体となって見事な海浜景観を見せる海水浴場となっている。
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(5)大宜味
 藻場が、古宇利港南東部に分布している。
 干潟が、運天原地先・済井出地先・塩屋地先に分布している。
 全域にサンゴ礁が分布し、古宇利島や屋我地島を含む西側及び宮城島周辺では沖合への発達も見られる。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、クンジャー沖合には被度の高い海域が見られる。戻る  

(6)辺土名
 全域にサンゴ礁が分布し、赤丸岬周辺では沖合への発達も見られる。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、鏡地沿岸・浜沖合には被度の高い海域が見られる。
 桃原から兼久にかけての海岸部には、高度5〜8mの砂丘が広がっており、この砂丘の沖に沈水板干瀬(沈水ビーチロック)が見られる。これは、世界的に報告例のない海中のビーチロックであり、海面が現在より相対的に2〜3m低い時代に形成されたものが、その後沈水したものと考えられる。戻る

(7)安波
 ほぼ全域にサンゴ礁が分布し、安田ヶ島周辺では沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。戻る  

(8)瀬底島
 全域にサンゴ礁が分布し、瀬底島の北側には離礁が点在する。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、石嘉波原沖合には比較的被度の高い海域が見られる。
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(9)名護
 藻場が、屋我地島・前垣地先に分布している。
 安和の採石場地先等を除きサンゴ礁が分布し、名護湾では沖合への発達が見られ、浜元沖合には離礁が点在する。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、浜元沖合・大崎原沿岸には比較的被度の高い海域が見られる。羽地内海にも、一部サンゴ礁が分布しているが、生サンゴの被度は低い。
 本部町の渡久地港に注ぐ満名川の河口部は、三角江(エスチュアリー)である。戻る  

(10)仲尾次
 藻場が、我部地先・饒平名地先・屋我地先・済井出地先に分布している。
 干潟が、饒平名地先・前垣地先・呉我地先・仲尾次漁港西部・仲尾次漁港東部・奥武島南部・稲嶺地先・津波地先・塩屋地先に分布している。
 屋我地島周辺及び平南川より北側の海域にはサンゴ礁が分布し、沖合への発達も見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。羽地内海にも、一部サンゴ礁が分布しているが、生サンゴの被度は低い。
 羽地内海はリアス式海岸であり、大保川が流入している大宜味村の塩屋湾もリアス式海岸である。大宜味村津波から宮城島に伸びたトンボロ状のビーチロックがある。ビーチロックは通常、海岸に沿って現在の汀線付近にできるものであるから、このビーチロックの分布と形状は極めて特異である。戻る  

(11)国頭平良
 全域にサンゴ礁が分布し、平良湾や慶佐次地先では沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。
 東村慶佐次川河口付近は、マングローブ湿地であり、広い面積にわたってマングローブ林が発達する。この地域は、ヤエヤマヒルギの北限地であり、かつ群落として広い地域を占めていることや、メヒルギ林の発達が見られることから、国の天然記念物に指定されている(「慶佐次ヒルギ林」「東村慶佐次のマングローブ林」「慶佐次ヒルギ林」)。
 国頭村平良の集落の東、福地川の河口には両側から伸びた砂嘴が見られる。砂嘴は季節的な変動(移動)があり、対岸に接合して河口が閉塞されることがある。
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(12)高江
 新川川河口域を除きサンゴ礁が分布しているが、生サンゴの被度は低い。戻る  

(13)名護南部
 干潟が、潟原地先に分布している。
 福地川河口等を除きサンゴ礁が分布し、沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。戻る

(14)瀬嵩
 藻場が、嘉陽地先・嘉陽地先南・安部崎地先・瀬嵩地先・辺野古地先・潟原地先に分布している。
 干潟が、二見地先・辺野古地先・久志地先・潟原地先に分布している。
 大浦川河口域を除きサンゴ礁が分布し、辺野古崎より南側は沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。
 大浦川河口のマングローブ林は、沖縄島では慶佐次川のマングローブ林に次いで広い面積を有しているが、ヤエヤマヒルギを伴わない点で慶佐次川のマングローブ林と異なり、自然状態のままでよく保護されている(「名護市大浦川のマングローブ林」「マングローブ湿地」)。戻る  


(15)天仁屋
 全域にサンゴ礁が分布しているが、被度は余り高くない。戻る  

(16)残波岬
 藻場が、長浜地先に分布している。
 残波岬の北側を除きサンゴ礁が分布し、長浜地先より東では沖合への発達が見られる。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、岬の突端部沖合には比較的被度の高い海域が見られる。
 残波岬の北側は、高度34m〜37mの石灰岩からなる顕著な海崖であり、崖下にはノッチが形成されている。また、残波岬の南海岸には、礁原の石切場跡が残されており、歴史的遺物として貴重なものである。戻る


(17)石川
 藻場が、仲泊地先・谷茶地先・屋嘉田浜地先に分布している。
 東シナ海側では、全域にサンゴ礁が分布し、久良波地先及び万座毛沿岸海域を除き沖合に発達している。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、恩納通信所沿岸・真栄田地先には比較的被度の高い海域が見られる。金武湾側には、サンゴ礁は分布していない。
 万座毛は県指定の名勝であり、その海崖は断層崖に由来すると考えられており、崖の下部にはノッチサーフベンチが形成されている。真栄田のビル原には、約3000〜4000年前に形成されたマイクロアトールのサンゴ化石群が点在している。このうちの一つのマイクロアトール化石は、ビーチロックによって覆われており、両者の形成時期の前後関係を示す貴重な地形である。
 貴重な植物種として、瀬良垣沖合海域で、クビレミドロが確認されている。クビレミドロは、1属1種の藻類で、以前は沖縄の海域で普通に見ることができたが、開発などの影響により現在では沖縄全体で3海域でしか確認されていない種である。戻る  

(18)金武
 藻場が、松田地先・宜野座地先・漢那ビーチ・金武岬北側に分布している。
 干潟が、潟原地先に分布している。
 全域にサンゴ礁が分布し、沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は低い。
 億首川の河口域にはヤエヤマヒルギ・オヒルギ・メヒルギを主体にしたマングローブ林が発達しており、ヒルギモドキ(北限種)・チャボオヒルギも自生する貴重な群落である。(「億首川のマングローブ林」「マングローブ湿地」)。戻る


(19)高志保
 比謝川河口域等を除きサンゴ礁が分布している。また、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、比謝川河口部の南側には比較的被度の高い海域が見られる。戻る  

(20)沖縄市北部
 干潟が、塩屋地先・南風原地先に分布している。
 金武湾側では、宇堅沿岸にサンゴ礁が分布しているが、生サンゴの被度は高くない。中城湾側では全域にサンゴ礁が分布し、沖合への発達も見られるが、生サンゴの被度は低い。
 貴重な動物種として、川田や南風原の干潟で、トカゲハゼの生息が確認されている。トカゲハゼは、日本では中城湾にしか分布せず、世界的にも分布の北限であることから、極めて貴重な種である。戻る  

(21)宮城島
 藻場が、池味地先・宮城島南側・平安座島西側・海中道路北側に分布している。
 干潟が、池味地先・海中道路南側・海中道路北側に分布している。
 全域にサンゴ礁が分布し、中城湾側は沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は余り高くない。戻る  

(22)大謝名
 干潟が、港川西岸に分布している。
 港川河口等域を除きサンゴ礁が分布し、牧港補給基地地先では沖合いへの発達が見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。
 港川河口部には、直径50cm程度のポットホール状地形が数十個ある。戻る


(23)沖縄市南部
 藻場が、泡瀬沖・久場地先に分布している。
 干潟が、北谷地先・美浜地先・南風原地先・泡瀬通信施設北側・泡瀬南地先・和仁屋地先・日本石油沖縄精油所周辺沿岸部に分布している。
 泡瀬漁港地先等を除きサンゴ礁が分布しており、中城湾側では沖合への発達が見られる。また、生サンゴの被度は東シナ海側、中城湾側ともに低く、特に中城湾側では低くなっている。
 貴重な植物種として、泡瀬通信施設南西海域で、クビレミドロが確認されている。
 貴重な動物種として、泡瀬周辺の干潟でトカゲハゼの生息が確認されている。戻る  

(24)屋慶名
 藻場が、浜比嘉島東側・海中道路南側・海中道路北側・藪地島東側・カンナ崎地先・アギナミ岩周辺に分布している。
 干潟が、海中道路南側・海中道路北側・海中道路西側・与那城地先に分布している。
 浜比嘉島及び勝連半島の西海岸部を除き、サンゴ礁が分布し、海中道路の周辺及び浮原島・南浮原島周辺では沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は低い。
 貴重な植物種として、藪地島と海中道路の間の海域で、クビレミドロが確認されている。戻る  

(25)那覇
 藻場が、瀬長島北側・大峰崎西側に分布している。
 干潟が、瀬長地先・瀬長浜に分布している。
 那覇港港湾区域を除きサンゴ礁が分布し、那覇空港の西側では沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は全体的に余り高くない。なお、港湾区域内では、波之上地先・那覇新港埋立地西側地先等にサンゴ礁が分布している。
 波之上地先は、沖縄県における海藻類の基準標本(模式標本)の宝庫である。戻る


(26)与那原
 干潟が、兼久地先に分布している。
 与那原地先及び新開地先を除きサンゴ礁が分布しているが、生サンゴの被度は余り高くない。
 沿岸部には、完新世離水サンゴ礁が数多く存在する。知名崎のエビ養殖場内には、離れ岩で根本が波の浸食でくびれているキノコ岩があり、倉石と呼ばれている(離水ノッチ)。
 貴重な植物種として、与那原町板良敷の海岸に、沖縄島では唯一のヒジキ群生地がある。
 貴重な動物種として、兼久及び富祖崎周辺の干潟では、トカゲハゼシオマネキの生息が確認されている。戻る  

(27)糸満
 藻場が、喜屋武地先・名城ビーチ沖・真栄里地先に分布している。
 干潟が、糸満北浜に分布している。
 ほぼ全域にサンゴ礁が分布しており、沖合への発達が見られるが、生サンゴの被度は低い。
 摩文仁丘南からサザンリンクスにかけては、沖縄島南部で最大・最長の石灰岩の海崖があり、崖下には離水ノッチが形成されている。報得川河口部には、ポットホール状地形と呼ばれる、泥質堆積物に見られる円形凹地がある。戻る

(28)知念
 藻場が、アドキ島北側・アージ島沖・百名ビーチ沖に分布している。
 全域にサンゴ礁が分布し、知念岬から奥武島にかけては沖合への発達が見られる。また、生サンゴの被度は全体に低くなっているが、具志頭の沖合には被度の高い海域が見られる。
 沿岸部には、離水サンゴ礁が数多く存在する。具志頭城址下の海岸には芝生の生えた離水した礁原がある。ここには約6300年前以降の離水サンゴ礁(完新世離水サンゴ礁)が発達しており、所々には離水したキノコ岩(離水ノッチ)も見られる。戻る


(29)喜屋武岬
 藻場が、喜屋武地先に分布している。
 全域にサンゴ礁が分布し、生サンゴの被度は全体的に余り高くないが、荒崎より東側沿岸及び喜屋武岬の沿岸には比較的被度の高い海域が見られる。
 沖縄島の南端荒崎は隆起サンゴ礁からできており、飛沫帯から内側へかけて、イソフサギ群落・ウコンイソマツ群落・コウライシバ−ソナレムグラ群落・モンパノキ−クサトベラ群落・アダン群落などがそれぞれ帯状に分布している、数少ない隆起サンゴ礁海浜植生である。(「荒崎の隆起サンゴ礁植生」)。
 具志頭城址から荒崎にかけての海岸部は、海抜20〜35mの石灰岩からなる海崖であり、その一部に具志頭城址が立地しており、崖下部にはノッチが形成されている。荒崎の西側の崖下には、通常のベンチ(波食棚)より高いサーフベンチが形成されている。荒崎から魂魄之塔・米須にかけての海岸部には、沖縄島中南部を代表する海岸砂丘があり、米須砂丘と呼ばれている。喜屋武岬には、約6000年前の完新世サンゴ礁が分布する。戻る



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