「琉球諸島」の自然特性

ページ番号1004732  更新日 2024年1月11日

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1.概要

「琉球諸島」は、ユーラシア大陸の東側に張り出した弧状列島です。その成立はプレートの運動とサンゴ礁の働きによるところが大きく、太古から本州及びユーラシア大陸と陸続になったり、孤立を繰り返したりして、多くの島々が散らばる現在の姿になりました。その際、大陸から渡ってきた生物が島という環境に取り残され、それぞれの島で独自の進化を遂げることとなりました。
また、「琉球諸島」は、世界の他の亜熱帯地域と比較して例外的に雨が多いため、豊かな森林が分布しています。温帯の特徴を残す山地林、海岸のマングローブ林、浅海のサンゴ礁と特徴的な生態系が連続して見られることから、生物地理の面では東南アジアと北東アジアの移行帯に相当します。そのため、本州や大陸と陸続きや孤立を繰り返す歴史も相まって、遺存種・固有種が多い独特の生物相を形成しています。

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2.位置

「琉球諸島」は、ユーラシア大陸の東側に張り出した弧状列島である日本列島の南端部分で、北緯24度~30度、東経122度~130度にかけて、南北約1200kmにわたり、鹿児島県のトカラ列島、奄美諸島、沖縄県の沖縄諸島、先島諸島、大東諸島とその周辺海域が対象範囲となっています。
※ここでいう「琉球諸島」とは、環境省・林野庁によって、平成15年度に開催された「世界自然遺産候補地に関する検討会」で検討対象となった、下図の太枠内の地域を便宜上「琉球諸島」と呼んでいます。

地図:琉球諸島
琉球諸島とは

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3.気候

「琉球諸島」は、緯度的条件と周辺を黒潮が流れていること、ユーラシア大陸東岸の季節風や北太平洋西部の亜熱帯性高気圧の影響を受けるため、温暖・多湿な亜熱帯性気候を呈しています。夏は太平洋高気圧に支配され、蒸し暑い晴天の日が多く、冬はシベリア高気圧の張り出しにより、風の強い曇りや雨の日が多くなります。夏と冬の季節風(モンスーン)の交代が明瞭であり、その交代期には梅雨と秋雨が現れます。
沖縄では、月平均気温が20度を超える月が8~9ヵ月あり、真夏は平均27~29度、真冬でも平均15~18度、年平均は22~24度となっています。また、台風の主要経路にあたり、しばしばその影響を受けるのも顕著な地域特性です。降水量は年平均2000mmを超え、その多くは梅雨や台風によってもたらされます。

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4.地史

「琉球諸島」は、最終氷期には台湾を経て大陸とつながっていたとされています。一方、トカラ海峡の成立は第4紀更新世(約160万年前)にさかのぼり、北琉球弧以北とは150万年前から隔てられていました。その後、トカラ海峡以南では海面の変動に伴い島間の陸続きや孤立(特に沖縄諸島と八重山諸島の間のケラマ海裂が顕著)が起こりました。大東諸島は隆起環礁で始新世(約50万年前)に赤道付近で形成され、フィリピン海プレートにのって北上してきたと考えられています。

地図:1,500万年と150万年前琉球諸島
左上図:中新世中期(1500万年前)、右上図:第4紀の更新世前期(150万年前)
地図:100万年と約10万年~2万年前 琉球諸島
左下図:約100万年前、右下図:最終氷期(約10万年~2万年前)

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6.植物相

「琉球諸島」と同じ緯度に位置する世界の亜熱帯地域は、中緯度乾燥帯に相当しているため雨量が少なく、大陸西岸ではほとんど森林が成立せず、東岸では季節林に属するものが多くなっています。その中にあって、「琉球諸島」は、モンスーンがもたらす降雨の影響により、世界の亜熱帯地域の中でも限られた地域にしか成立しない亜熱帯性降雨林が成立し、固有種の主要な生息・生育地として生態系の基盤となっています。
「琉球諸島」は、亜熱帯と暖温帯の気候上の移行帯であるため、亜熱帯系植物群と温帯系植物群の交錯がみられます。そのため、この地域の中で分布圏が終わる南限種や北限種が多く、北限種が313種、南限種が119種確認されています。
植物地理区では、日華区系域と東南アジア大陸区系域の干渉地帯(山地では南西日本系要素、低地・海岸植生では南方系要素を呈する)にあたり、維管束植物の自生種は約1,600種、原記載論文による固有種は100種以上、変種を含めれば120種以上が確認されています。
「琉球諸島」は大陸島であるため、固有種の割合は海洋島である小笠原島と比べ少ないですが、地史的な過程・気候変化を反映して、島嶼群間の植物相変化が著しいという特徴が見られます。

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7.動物相

「琉球諸島」は、温帯域である旧北区と熱帯域である東洋区とを区分する動物地理区の境界線上に位置しています。そのため、動物相は両者の要素が混ざり合った多様なものになっており、島という孤立した環境で多くの特殊性が認められます。地理的・気候的要素等による特異な環境の下、「琉球諸島」にはイリオモテヤマネコ、カンムリワシ、リュウキュウキンバト、セマルハコガメなど特異で希少な動物相が形成されています。
また、海洋性の鳥類(アホウドリ、アジサシ類など)の繁殖地(尖閣諸島、沖の神島など)、アカウミガメ・アオウミガメの産卵地として重要な地域となっています。

哺乳類相

陸生哺乳類

「琉球諸島」を構成する島々は、最大の沖縄島でも面積が1183k平方メートルであるように、各島々の面積が小さいため、食物連鎖のピラミッドが小さくなり、上位捕食者や大型種が少なく、小型種の生息種数が多いことが「琉球諸島」の哺乳類相の特徴となっています。
日本全土には、現生の在来種として合計105種が確認されているうち、約25%にあたる26種が「琉球諸島」で確認されています。また、「琉球諸島」の陸生哺乳類のうち、イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギなどの14種がこの地域にしか生息していない固有種であり、「琉球諸島」の固有種率は58%に達し、極めて高いものとなっています。海生哺乳類「琉球諸島」では、これまでに鯨目が30~33種、海牛目1種が確認されています。特に慶良間諸島一帯は、ザトウクジラの繁殖に適した海域となっており、個体識別やホエールウオッチングが行われています。また、ジュゴンは、沖縄島が世界的な分布の北限となっています。

鳥類相

日本鳥類目録改訂第6版によると、「琉球諸島」では395種の鳥類が記録されています。これは、日本産鳥類542種のうちの約73%を占め、「琉球諸島」が豊かな鳥類相を持っていることを示しています。
しかし、この記録された鳥類のほとんどが渡り鳥であり、これこそが「琉球諸島」の鳥類相の特徴となっています。その理由として、九州の南端から台湾までの約1200kmにわたり島嶼が飛び石状になっている「琉球諸島」が、北半球と南半球を行き来する渡り鳥にとって安全なルートになっていること、また、亜熱帯性気候で冬でも暖かく、餌が十分にとれることなどが要因として考えられています。これは、地球規模で渡りを行う鳥にとって、「琉球諸島」が越冬地や渡りの中継地点として重要な役割を果たしていると言えます。
また、上記に加え、固有種が多く生息している点も「琉球諸島」の鳥類相の大きな特徴です。日本の現生の固有種8種のうち、ノグチゲラやヤンバルクイナなどの5種が「琉球諸島」に生息しています。

爬虫類相

「琉球諸島」には、日本在来の爬虫類95種のうち、約75%にあたる71種(海生爬虫類15種、陸生爬虫類56種)が生息しています。「琉球諸島」に生息する陸生爬虫類56種のうち、46種が日本固有種であり、約82%という極めて高い固有種率を持っているのが特徴です。
「琉球諸島」の爬虫類相は、クロイワトカゲモドキ、リュウキュウヤマガメ、キクザトサワヘビなどのように、近縁種が、宮古諸島や台湾ではなく、遠く離れた中国大陸に見られる遺存固有種が多く生息していることから、「琉球諸島」が、ユーラシア大陸や南方のフィリピンなどと陸続きや孤立を繰り返すといった、複雑な地史をもつ大陸島であることがうかがえます。

両生類相

両生類相に関しても大隈諸島は本州・四国・九州との類似性が高く、それらの多くのは分布の南限となっています。渡瀬線以南に成育する種は東洋区系の要素が多くなり、有尾類ではシリケンイモリ、イボイモリ、無尾類ではヒメアマガエル、リュウキュウカジカガエル、ナミエガエル類などが生息しています。固有種が多いと同時に、近縁種が中国南部や台湾、東南アジアに分布しているものが多いという特徴が見られます。

昆虫相

昆虫相の分布境界線については、主にチョウの分布から大隈海峡に位置する三宅線とされています。これより北は日本特産種のチョウ類、南は熱帯性のチョウ類が多く、一方、チョウ以外の昆虫類では、屋久島、種子島には本州・四国・九州と同種のものが見られ(ノコギリクワガタなど)、トカラ海峡以南にはここを北限とする種が多いこと、固有種が多いこと、渡り昆虫が多いことなどの日本本土型には見られない特徴を持っており、チョウ以外の昆虫相においてもトカラ海峡は重要な意味を持つと思われます。

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このページに関するお問い合わせ

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