「陸域における自然環境の保全に関する指針」の概要
目 次
  1.1 沖縄島周辺諸島及び大東諸島の自然環境
  1.1.1 沖縄島周辺諸島及び大東諸島における特定植物群落
  1.1.2 沖縄島周辺諸島及び大東諸島における特異な地形・地質
  1.1.3 沖縄島周辺諸島及び大東諸島における文化財の状況
  1.1.4 貴重な動物種の分布
  1.2 各々の地域における「すぐれた自然」の概況現在のページ

1.2 各々の地域における「すぐれた自然」の概況

 各々の地域における「すぐれた自然」の概況は以下の通りである。なお、下線「天然記念物」、緑色文字は「特定植物群落」、えんじ色文字は「特異な地形・地質」を表している

■下表の地域名をクリックすると、それぞれの地域へジャンプします。
(61)伊江島 (62)粟国島 (63)渡名喜島 (64)座間味 (65)渡嘉敷
(66)阿波連岬 (67)大謝名 (68)屋慶名 (69)津堅島 (70)久高島
(71)伊是名島 (72)伊平屋島北部 (73)伊平屋島南部 (74)北大東島 (75)南大東島
(76)沖大東島        

(61)伊江島
 伊江島の北海岸、隆起サンゴ礁の海岸部分にはイソフサギ群落、ウコンイソマツ群落、モンパノキークサトベラ群落、アダン群落、コウライシバーソナレムグラ群落などの海浜植生が生育している(「伊江島北海岸の隆起サンゴ礁植生」)。島の東側中央部の城山並びにその周辺には硅岩を母材にした群落が発達している。高木層にはタブノキ、ヤブニッケイが優占し、亜高木層にはモクタチバナ、ヤブツバキなど、低木層にはクチナシ、マルミボチョウジ、オキナワシャリンバイなど、草本層にはホウビカンジュ、ヤリノホクリハランなどが出現する。城山の頂上近くにはオキナワシャリンバイを主体にした風衝低木林が密生しており、途中の岩隙にはイエジマチャセンシダが生育し、山麓部にはリュウキュウマツが生育している(「城山の周辺の植生」)。
 伊江島は延長7.2km、比高82m、6段の「海成段丘」から成っている。城山(172.2m)は「非火山性弧峰」である。伊江島北東岸には延長2.5km、比高3mの「海食崖」がある。伊江島北岸には延長3.5km、比高62mの「海食崖」がある。
 伊江島北西岸には延長1.5km、比高15mの「海食崖」がある。
 その他、天然記念物として「ハダ植物群落」 (伊江村指定)、史跡として「具志原貝塚」(国指定)、「伊江島のゴヘズ洞穴遺跡」、「伊江島鹿の化石」、「浜崎貝塚」(県指定)、名勝として、「伊江村の城山」(県指定)がある。戻る

(62)粟国島
 粟国島の北西側は潮風の影響が強く、草原状の相観を示しており、自生植物としてアキグミ、ヤマゴンニャクなどの珍しい植物も分布しているほか、ソテツの優占する群落が発達している(「粟国島のソテツ群落」)。「ウーグ浜のクサトベラーモンパンノキ群落」「照喜名原のモンパの木の群落」(粟国村指定)はウーグ浜の浜堤に成林する海岸林であり、モンパノキ、クサトベラなどが低木林を形成し、その中にリュウゼツランが混生し、林床にはシマアザミ、モンパノキなどが僅かに出現する。粟国島・西集落の北西側に隣接する断層崖にハマイヌビワ、クロヨナ、アカギ、オオクサボクなどの混生する常緑広葉樹林が生育する。高木層にはハマイヌビワ、クロヨナ、キョボク、カジュマルなど、「照喜名原のモンパの木の群落」(粟国村指定)亜高木層にはオオクサボク、ヤブニッケイ、モクタチバナなど、低木層にはグミモドキ、オオクサボク、シマヤマヒハツ、モクタチバナなど、林床にはコバノハスノカズラ、ヘクリカズラ、カワズイモ、ヤブランなどが生育する(「粟国島八重川城の植生」「粟国島字西の御願の植物群落」(県指定))。
 粟国島は延長3.5km、比高95m、3段の「海成段丘」から成っている。粟国島北西岸から南岸にかけて、延長4.8km、比高80mの「海食崖」がある。特に島の南西端の筆ん崎周辺の厚い白色の凝石灰がつくる海食崖は他に例がない。粟国島周辺には「隆起完新世サンゴ礁原」がある。
 その他、天然記念物として「シマイ御獄のイタジイの木」(粟国村指定)がある。戻る

(63)渡名喜島
 渡名喜島の大岳(179m)と大本田原(165m)は尾根続きの峯をなしている。大岳は岩崖が多く、山頂近くの急崖にはタイワンビロードシダ、フウラン、タイワンチトセカズラなどが自生し、大本田原の尾根にはヒトツバマメヅタ、カワラナデシコなども自生する。島の植生は余り発達していないが、斜面のソテツ群落、リュウキュウマツ群落、岩錘の間に発達する石灰岩地植生や、山頂近くの風衝植生は特異的である(「渡名喜島大岳・大本田原の植生」)。
 渡名喜島は南北2つの島が、除々に砂が集まり連結した「トンボロ地形」であると考えられており、島の周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。入砂島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。
 その他、天然記念物として、「渡名喜番所渡名喜小中学校跡のフクギ群」(渡名喜村指定)がある。戻る

(64)座間味
 阿嘉島北端、黒崎一帯の海岸風衝地にはオキナワハイネズ、テンノウメの優占する群落が広がり、天然の状態で非常に良く保存されている(「阿嘉島北海岸のオキナワハイネズ群落」)。屋嘉比島の中央西側斜面にはトゲイヌツゲ群落の良く発達した林分がみられる。本群落は海岸風衝地の急斜面に生育し、上層に比して下層の発達は著しく貧弱である。林冠はトゲイヌツゲが優占し、ツゲモドキ、モクタチバナ、イヌマキなどが出現する。低木層にはクロツグ、モクタチバナ、ナガミボチョウジ、アダンなど、林床にはトゲイヌツゲ、ビロウ、ヤブニッケイ、イヌマキの稚樹のほかシラタマカズラ、アマクサシダ、ホウライカガミなどが出現する。トゲイヌツゲの優占する森林は本列島以外他の地域にはほとんど知られていなく、慶良間列島に極めて特徴的な植物群落といえる(「屋嘉比島のトゲイヌツゲ群落」)。久場島北東部、落水の鼻近くの海岸斜面にはオキナワマツバボタンの群落が生育する。オキナワマツバボタンは琉球列島の海岸岩場に点在しているが、その数は極めて少なく、ここのように広い面積を占めている群落は見あたらない(「久場島のオキナワマツバボタン群落」)。久場島の南側には島の最高地点270mのピークがあり、その周囲は海崖や急峻な斜面が広がっている。そこは強い風圧や乾燥などによって風衝地特有の景観を示し、天然のリュウキュウチク林が生育する。林床にバケイスゲ、草原にタイワンカモノハシ、バケイスゲが優占し、リュウキュウシャジンガが出現する(「久場島の岳の風衝地植生」)。大岳は座間味島の東北端に位置し、北側は100m台の海崖である。南側の140m近くに祠があり、その周辺は古くから保護されてきた。祠の近くにはリュウキュウマツも生育しているが、面積的にはイタジイが優占する林分の方が広い。シイ林の樹高は8m前後であり、主な出現種はシバニッケイ、モチノキ、ビロウ、コバンモチなどで、林内には低木層でリュウキュウチクやヤブツバキ、草本層でバケイスゲが優占する。小さな島でそのほとんどが二次林によって占められている島の自然植生として貴重な林分である(「座間味島大岳の植生」)。
 座間味島、安屋島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。阿嘉島、慶留間島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。屋比嘉島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。久場島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。
 屋嘉比島、慶留間島は「ケラマジカ及びその生息地」として国の天然記念物に指定されている。戻る

(65)渡嘉敷
 渡嘉敷島・青年の家の北側に海抜221mの峯があり、この尾根部を中心にシイ林が発達している。高木層の樹高は7〜10mでイタジイが優占し、阿高木層にはカクレミノ、低木層ではシシアクチ、アデクがどが優占する。島の大部分が二次林化している現状で、この山地部のシイ林は島の自然を理解する貴重な林分である(「渡嘉敷島・赤間山周辺の植生」)。
 渡嘉敷島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。前島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。戻る

(66)阿波連岬
 渡嘉敷島周辺には「完新世サンゴ礁原」がある。戻る

(67)大謝名
 神山島、ナガンヌ島、クエフ島は「洲島」であり、「完新世サンゴ礁原」がある。戻る

(68)屋慶名
 津堅島東岸に「完新世サンゴ礁原」がある。津堅島北西岸には完新世離水ノッチを埋積する「完新世離水ビーチロック」がある。戻る

(69)津堅島
 「クボウ城のタブノキ群落」「クボウグスクの植物群落」は津堅島の南部、津堅小学校の北側に位置するタブノキが優占する樹林で、拝所として古くから保護されている。高木層にはタブノキ、ヤブニッケイ、オオバイヌビワ、クロヨナなど、亜高木層にモクタチバナ、リュウキュウガキ、シマグワなど、低木層にタブノキ、クロツグ、ナガミボチョウジなど、草本層にアリモリソウ、グミモドキなどが生育する。本地域のタブノキ林は天然の状態で良く保存されており、極めて良く発達している。
 津堅島の北北西岸に「完新世離水ノッチを埋積する完新世離水ビーチロック」があり、東岸に「完新世サンゴ礁原」がある。戻る

(70)久高島
 久高島には4箇所の拝所があり、そのいずれもが古くから神域として保護されている。中でもクボウの嶽とクペールは特にビロウの優占する御獄林をなしている。ビロウは高木層でうっぺいし、特有のヤシ型の林冠を作っている。林内には石灰岩域の林分の構成種が出現しているが、オキナワシャリンバイ、アワダン、リュウキュガキなどの出現頻度が高い。小さな島の自然林であり、現状のまま神域として保護する必要がある。(「久高島クボウの嶽・拝所カベールのビロウ林」「久高島カベールの海岸植物群落」

 久高島東岸に「完新世サンゴ礁原」がある。戻る

(71)伊是名島
 伊是名島南東部のチジン山は硅岩を基盤にした山で、全山ほとんどリュウキュウマツ群落に覆われている。直接潮風を受け、土壌も乾燥に傾いているため、優占種のリュウキュウマツも矮形化している。アカラ御獄の周囲に発達するウバメガシの群落は我が国のウバメガシの南限で成林した広葉樹林として貴重な群落である(「伊是名島アカラ御獄一帯のウバメガシとリュウキュウマツ群落」「アカラ御獄のウバメガシ及びリュウキュウマツ等の植物群落」(県指定))。また、島の南東部には県指定史跡「伊是名城跡」があり、硅岩からなる岩山にはイワヒバの群落が見られる(「伊是名城跡のイワヒバ等の風衝植生」)。沿岸部にはアダンーオオハマボウ群落やモクマオウの植林が見られる。

 大野山とチジン山は「非火山性弧峰」であり、島の周囲には「隆起サンゴ礁原」がある。
 その他、史跡として「伊是名城跡」、「尚円王生誕地屋敷内(みほそ所)」(県指定)がある。戻る

(72)伊平屋島北部
伊平屋島最北端の田名岬には、海岸近くから山頂にかけてビロウが特に優占した特異な群落がある(「伊平屋島久葉山のビロウ群落」「田名の久葉山」(県指定))。内陸の山地部にはリュウキュウマツ群落、リュウキュウアオキースダジイ群集があり、特に後岳から腰岳、賀陽山にかけての山地部の中腹部から山頂部にかけての植生は「伊平屋島の山地森林植生」として特定群落に指定されている。
 前岳とアサ岳、後岳との間の低地部には湿地(「湿原」、「湖沼」)が拡がり、ヒメガマーハイキビ群落などの湿地植生がみられる(「田名池の湿地植生」)。
 沿岸部には隆起サンゴ礁植生が発達し、北西部の砂浜海岸にはオキナワハイネズの群落がある(「伊平屋島北西部海岸のオキナワハイネズ群落」)。
 また、山地部ではカラコンテリギ(県希少種)などが確認されている他、湿地にはコガタノゲンゴロウ等の水生昆虫類も確認されている。
 伊平屋島北部には、古生代二畳紀の前岳層からなるチャート中に洞穴が形成されており(「クマヤ洞窟」(県指定))、洞穴の北隣には、海抜80メートル程の高さまで海浜砂が吹上げ厚く堆積している(「砂丘」)。
 その他、天然記念物として、「念頭平松」(県指定)があり、「カラスバト」(国指定)。「コノハチョウ」「イヘヤトカゲモドキ」(県指定)の生息も確認されている。戻る

(73)伊平屋島南部
 後岳から腰岳、賀陽山にかけての山地部の中腹部から山頂部にかけての植生は「伊平屋島の山地森林植生」として特定群落に指定されている。南東部の海岸にはアツバアサガオ(県危急種)やイソフジ(絶滅危惧U類)、内陸部にはカラコンテリギ(県希少種)の生育が確認されている。
 伊平屋島最南端にある阿波岳のふもとから米先にかけて、長さ1.5km、幅100〜300mの細長い砂の岬が発達している(「砂嘴」)。野甫島、具志川島には「砂丘」がある。
 その他、史跡として、「久里原貝塚」(県指定)があり、天然記念物として「カラスバト」(国指定)、「コノハチョウ」「イヘヤトカゲモドキ」(県指定)の生息も確認されている。戻る

(74)北大東島
 北大東島の海岸線は海崖をなしているが、大東諸島固有であるアツバコク、シロミルスベリヒユ、ウスジロイソマツの群落がみられるなど、飛沫帯から多様な植生が発達する(「北大東島の海岸植生」)。内陸南側の長さ1.5km、高さ30m程の長幕の絶壁には、ガジュマル、オオイタビ、ダイトウワダン等が崖面にへばりつくような形で、崖面を覆っている(「北大東島の長幕の植生」)。「長幕崖壁及び崖錘の特殊植物群落」(国指定))。この岸壁の割れ目には、ヒメタニワタリも自生しており、長幕一帯は貴重な植物の分布地域である。内陸北側の内幕は、南側の屏風岩の長幕と異なり、傾斜がゆるやかで、県内では南北大東島だけに分布するユズノハカズラ、ダイトウセイシボクなど珍しい植物を含む高木林(ビロウ林)が発達している(「北大東島の長幕の植生」)
 北大東島は環礁が隆起して出来たものとして考えられており、島の周囲は延長14.3km、比高20mの「海食崖」となっている。島の中央部は窪んでいて、鍾乳洞などの「カルスト地形」がみられる。(「北大東村字中野の北泉洞」(県指定))。
 その他、天然記念物として、「ダイトウオオコウモリ」(国指定)が生息し、「中野のビロウ群落」(北大東村指定)がある。戻る

(75)南大東島
 南大東島の周囲は切り立った崖になっているが、東海岸一帯はやや平坦になっており、ボロジノニシキソウやアツバクコなどを含む、大東諸島特有の海浜植生(「南大東島のボロジノニシキソウなどの海浜植生」「南大東島東海岸植物群落(国指定))が見られる。島の中央部は盆地になっていて、内側と外側とを区切るように急崖で境された外幕と内幕といわれるドーナツ状の高まりをなす地形であり、この丘陵部にビロウ群落が発達している。特に南部にあるビロウ群落は「南大東島のビロウ群落」として特別植物群落に指定されている。島の中央部には多くの池があり、テツホシダ群落、クロミノシンジュガヤの群落などの湿生植物群落が見られる(「南大東島の池沼の湿地植生」)。中でも北側にある大池には陸封されたオヒルギが生育しており、国指定の天然記念物に指定されている(「南大東島大池のオヒルギ」「大池のオヒルギ群落」)。南大東島西部の大東神社がある小高い丘の頂上には、ダイトウシロダモの優先する低木林がある。社殿周辺から平地にかけてビロウ林が発達し、平地部にはリュウキュウマツ、テリハボク、モクマオウなどの植林もみられる。
 南大東島は緩衝が隆起してできたものとして考えられており、島の周囲は延長21km、比高20mの「海食崖」となっている。島の中央部は窪んでいて、ドリーネやウバーレなどの「カルスト地形」に水が溜まってできた池が多数みられる。
 その他、天然記念物として、「ダイトウオオコウモリ」(国指定)が生息し、その保護区として、「ダイトウオオコウモリの生息地(北の1)」「ダイトウオオコウモリの生息地(南の1)」(南大東村指定)が指定されている。戻る

(76)沖大東島
 沖大東島は卓礁が隆起してできたものとして考えられており、島の周囲は延長4km、比高18mの「海食崖」となっている。
 沖大東島は米軍の射爆場として、現在、一般の立入が禁止されており、詳細は未調査である。戻る