議会提案説明(令和2年第1回沖縄県議会定例会)Iはじめに

ページ番号1001638  更新日 2024年1月11日

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ハイサイ、グスーヨ-、チューウガナビラ。
令和2年第1回沖縄県議会の開会に当たり、議員各位の御健勝を心からお喜び申し上げますとともに、日々の御精励に対し深く敬意を表します。
令和2年度の当初予算案などの重要な議案の審議に先立ち、まず、県政運営に当たっての私の所信の一端を申し述べ、議員各位及び県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

第1に、「県政運営に取り組む決意について」申し上げます。
昨年10月31日の首里城の火災の衝撃を思い起こすと、今でも胸が痛みますが、多くの皆様からお見舞いの言葉や首里城の復旧・復興のための寄附金等が寄せられており、大きな励みとなっております。
私は、皆様の強い願いを実現させるため、国や那覇市などの関係機関と連携の下、首里城の1日も早い復旧・復興に全力で取り組みます。
また、火災の検証結果を踏まえ、防火設備の強化や安全性の高い施設管理など、再発防止に向けて取り組んでまいります。
今年1月8日に沖縄県では、33年ぶりに豚熱(ぶたねつ)(CSF)の発生が確認され、国、市町村や関係団体、自衛隊等の協力の下、防疫措置にあたってまいりました。
また、生産農家や県民の皆様の不安を解消し、豚熱(CSF)の感染拡大を防止すべく、「沖縄県豚熱防疫対策関係者会議」における意見や提言等を踏まえ、予防的ワクチン接種を決定しており、必要な財源を確保し、まん延防止措置等に取り組んでおります。
今後とも、国、生産農家、市町村、関係団体等と連携を図り、豚熱
(CSF)の感染拡大防止対策、生産の早期回復に向け取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症への対応については、国や医療機関、観光分野をはじめとする関係機関等と連携し、県民への啓発を含めた予防等の感染対策の実施や医療提供体制の整備に取り組むとともに、県内の観光産業に対する影響を適切に把握し、その対策を講じてまいります。
私が県知事に就任してから1年余りが経過しました。この間、祖先(ウヤファーフジ)への敬い、自然への畏敬の念、他者の痛みに寄り添うチムグクルを大切にするとともに、「自立」、「共生」、「多様性」の理念の下、包摂性と寛容性に基づく政策を推進してまいりました。
また、県では、令和元年度から全庁的にSDGsを推進しております。今後、全県的な展開につなげることで、新たな時代に対応した持続可能な沖縄の発展と誰一人取り残さない社会づくりを目指します。

経済面においては、アジアの中心に位置する地理的優位性と、沖縄が誇るソフトパワーなどの強みを活かし、「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」に基づく施策の推進等により、アジアのダイナミズムを取り込み、県経済の発展及び県民所得の向上を図ってまいります。
また、県内産業の生産性の向上に取り組むとともに、収益力の強化等の取組を産業横断的に推進する「マーケティング戦略推進課(仮称)」を新設し、「企業の稼ぐ力」を強化することで、経済の波及効果を地方、離島、中小零細企業等にも浸透させ、所得の向上や県民の生活安定につなげてまいります。
私は、日米安全保障体制が、地域の平和と安定の維持に寄与してきたものと認識しています。しかしながら戦後74年を経た現在もなお、国土面積の約0.6パーセントの沖縄県に米軍専用施設の約70.3パーセントが集中し続けている状況は異常と言わざるを得ません。内閣府の調査では国民の約8割が「日米安全保障体制は日本の平和と安全に役立っている」と回答しています。日本の安全保障が大事であるならば、基地負担の在り方についても日本全体で考え、その負担も日本国民全体で担うべきであります。
このような基本認識の下、沖縄の過重な基地負担の軽減に取り組んでまいります。
特に、辺野古新基地建設問題については、完了までに要する期間が約12年、総工費が当初の約4倍に相当する約9,300億円になることが昨年12月に公表され、これまで県が指摘していたとおり、辺野古移設では、普天間飛行場の1日も早い危険性の除去にはつながらないということが明確になりました。この問題については、対話によって解決策を求めていくことが重要と考えており、政府に対し、普天間飛行場の早期の閉鎖・返還及び1日も早い危険性の除去と相反することになる辺野古埋立工事を直ちに中止した上で、県との対話に応じるよう求めてまいります。
一方で、普天間飛行場の固定化は絶対に許されないことから、辺野古移設に関わりなく、同飛行場の県外、国外への移設、早期閉鎖・返還及び速やかな運用停止を含む危険性の除去を、政府に対し強く求めてまいります。
私は、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向けて、今後も、あきらめず、ぶれることなく、全身全霊をもって、県民の思いに応えてまいります。
今年、戦後75年の節目の年を迎えます。戦争の悲惨さと平和の尊さを次世代に継承するとともに、沖縄全戦没者追悼式及び広島市・長崎市平和祈念式典への相互参列など、平和を希求する「沖縄のこころ」を県内外へ力強く発信してまいります。

また、「子どもの貧困対策」を最重要施策に掲げるとともに、「沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」を制定し、全ての子どもたちが夢や希望を持って成長していける社会を実現してまいります。
離島振興については、離島の諸課題を把握し、条件不利性を克服するため、IT環境の拡充による情報通信格差の是正をはじめ、交通・生活コストの低減、教育、医療、福祉等の定住条件の整備、離島地域の特色や魅力を活かした産業の振興に取り組みます。
「琉球歴史文化の日(仮称)」の制定を通じ、各地域の伝統文化に対する県民の気運の醸成を図り、沖縄(ウチナー)文化の更なる普及、継承、発展及び発信に取り組みます。
未来を担う子どもたち、若者たちに、平和で真に豊かな沖縄、誇りある沖縄、「新時代沖縄」を託せるよう、公約に掲げた諸施策を職員一丸となって推進し、全力で県政運営に当たる決意であります。

第2に、「沖縄を取り巻く現状の認識について」申し上げます。
国際社会においては、ビッグデータ、IоT、AI、デジタル技術の急速な進歩が、第4次産業革命とも呼ぶべき変化を世界にもたらし、あらゆる分野に大きな影響を与える時代となっております。また、気候変動の影響による自然災害の激甚化や、新型コロナウイルス感染症の広がりに見られるグローバルな人の移動による感染症の流行、世界人口の増加等による水・食料問題等の深刻化の可能性が指摘されており、国際社会の開発目標であるSDGsの着実な実施が重要とされております。
我が国においては、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、今後、経済は緩やかに回復していくことと期待されておりますが、消費税率引上げ後の経済動向を引き続き注視するとともに、先行きのリスクとして、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱等の様々な海外の動向や、金融資本市場の変動の影響にも留意する必要があるとされております。
こうした中、沖縄県の経済は、令和元年の入域観光客数が約1,016万人を記録し、7年連続で過去最高を更新したほか、情報通信産業についても、雇用者数が45,000人、売上高が4,400億円を超えております。
雇用情勢については、令和元年平均の有効求人倍率が1.19倍、完全失業率が2.7パーセントで、いずれも復帰後、最も良い数値を記録するなど、好調に推移しております。
県経済は、一部に弱めの動きが見られるものの、基調としては緩やかに拡大することが見込まれておりますが、新型コロナウイルス感染症に関する観光産業等への影響をはじめ、海外発の経済の下方リスクや多くの産業で顕在化している人手不足の影響などに留意する必要があります。
第3に、「今後の沖縄振興に向けた取組について」申し上げます。
令和2年度は、沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検の結果や新沖縄発展戦略を踏まえ、国と連携を図りながら新たな沖縄振興のあり方について検討するとともに、残り2年となる沖縄21世紀ビジョン基本計画の集大成に向け、全力で取り組む年となります。引き続き、県民所得の向上、子どもの貧困の解消、過重な基地負担の軽減等の重要課題に対応した施策を着実に推進してまいります。
また、今年度に設置した万国津梁(りょう)会議については、米軍基地問題、
SDGsに加え、新たなテーマの会議についても設置し、この会議における議論を更なる政策の推進につなげてまいります。
私が掲げた公約については、その全てに着手したところであり、「新時代沖縄の到来」、「誇りある豊かさ」、「沖縄らしい優しい社会の構築」の3つの視点の下、引き続き諸施策を展開してまいります。

「新時代沖縄の到来 経済分野」については、成長するアジア経済に連動し、「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」に基づく取組を一層推進します。
令和元年度の沖縄県アジア経済戦略構想推進・検証委員会の提言も踏まえ、観光リゾート産業や情報通信関連産業等のリーディング産業の拡充をスケール感とスピード感を持って推進し、県民所得の向上に向けて、取り組んでまいります。
今年3月に供用開始が予定されている那覇空港第二滑走路については、航空会社の新規参入や就航路線の増加等、最大限の活用に向けて取り組み、沖縄が世界に誇れる観光リゾート地として発展していくことを目指します。
また、県民生活と調和した持続的な観光振興を図るため、観光・環境協力税(仮称)の早期の導入に向けて取り組んでまいります。
一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センターを活用し、沖縄型Society(ソサエティ)5.0の実現に向け、情報通信産業の振興を図るとともに、県内各産業におけるAI、IoTなどの先進技術の活用促進や多様な実証事業の強化に取り組み、時空を超えるIT技術を駆使して、離島の不利性の解消にもつなげます。
また、医療機関等との連携により、再生医療等の先端医療の産業化に向けた研究を推進するとともに、再生医療産業拠点の核となる細胞培養加工施設の整備に取り組んでまいります。
沖縄MICE振興戦略に基づき、産学官連携による国内外のMICE誘致、受入体制の強化、人材育成等に取り組むとともに、東海岸に、もう一つの南北に延びる経済の背骨を形成するため、「東海岸サンライズベルト構想」の策定に向けて取り組んでまいります。
那覇港については、昨年4月に国土交通大臣から「国際旅客船拠点形成港湾」に指定され、22万トン級のクルーズ船が寄港可能な第2クルーズバースの整備に着手しており、引き続き、その早期整備に向け取り組みます。
また、航空機整備を中心とする産業の集積を目指し、官民連携したプロモーション等の取組を行い、航空関連産業クラスターの形成を図ります。
下地島空港については、周辺用地も含め、民間事業者のノウハウ等を活用した更なる利活用を促進します。
また、畜産物、水産物等の県産ブランド化及び海外輸出体制の強化に向けて、高度衛生加工処理施設の整備等を促進します。
鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入については、費用便益分析等の検討結果に基づき、国と調整を図るとともに、早期導入に向け、県民と一体となって機運醸成を図ってまいります。

「誇りある豊かさ 平和分野」については、戦後74年を経た今日もなお、過重な基地負担を強いられ続けている沖縄県民の負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人・軍属等による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。
基地の整理縮小については、県内移設を断念することを求める建白書の精神に基づき、普天間飛行場の閉鎖・撤去を求めるとともに、速やかな運用停止を含む危険性の除去を日米両政府に求めてまいります。また、嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還については、統合計画の確実な実施とともに、内容の具体的な説明、地元意見の聴取の場の設置、跡地利用の円滑な推進等を引き続き政府に対して強く求めます。加えて、更なる基地負担軽減策の検討のため、新たな協議の場を設けるよう日米両政府に対し求めてまいります。
日米地位協定に関しては、ヨーロッパ4か国を調査した結果、各国が航空法など自国の法律や規則を米軍にも適用させ、米軍の活動をコントロールすることで、自国の主権を確立していることが明らかになりました。また、国内法の適用等については、オーストラリアやフィリピンにおいても同様の状況であることが分かりました。同じ主権国家として、我が国においても米軍に国内法を適用することなどを日米両政府に強く求めます。
3月には、韓国において調査を行い、調査結果を全国知事会や渉外知事会等とも共有し、全国知事会における基地負担に関する新たな提言について働きかけを行うとともに、海外有識者を招いたシンポジウムの開催等により、全国に情報発信を行うなど、日米地位協定の改定実現に向けた取組を強化してまいります。
駐留軍用地跡地の利用に際しては、沖縄発展のための貴重な空間として、土地対策にかかる各種取組との連携を強化し、総合的かつ効率的な利用を推進してまいります。
アジア諸国等の大規模災害時の支援活動や台風対策等について、本県が、国内外に貢献できるよう、JICA沖縄と連携及び協力を行いながら「国際災害救援センター(仮称)」の役割を検討するとともに、本県の地理的特性や歴史、沖縄のソフトパワーを活かし、国際交流、国際貢献を通じた平和の緩衝地帯の形成を目指してまいります。

「沖縄らしい優しい社会の構築 生活分野」については、子どもの貧困対策として、子どもの居場所等の設置拡充やネットワークづくりにより、地域における支援の輪を広げるとともに、専門的な個別支援を行う拠点型居場所や各分野の専門家を活用するなど、支援の質の向上に取り組みます。
また、「沖縄子どもの未来県民会議」を中心に、子どもの学びと育ちを支える取組を県民一体となって推進してまいります。
子どもの貧困対策として、中高生のバス通学無料化に向け取り組むとともに、引き続き、ひとり親家庭や生活に困窮する多子世帯などへの支援を推進してまいります。
待機児童の解消につきましては、「第2期黄金(くがに)っ子応援プラン」に基づき、保育所の施設整備等への支援に加え、保育士確保等に重点を置いた施策の追加、拡充により、市町村の支援を強化し、令和3年度末までの待機児童の解消に向けて取り組んでまいります。
また、認可外保育施設の入所児童の処遇向上に向けて、保育環境の安全確保に取り組むとともに、引き続き給食費や健康診断費等に対する支援を行います。
放課後児童クラブについては、小学校等の公的施設を活用した設置促進等や運営費等に対する支援を行い、利用料金の低減、登録できない児童の解消に取り組みます。
妊娠期から子育て期まで切れ目なく必要な支援を行う母子健康包括支援センターの設置を促進します。
女性がそれぞれのライフステージに応じて安心して生活し、様々な分野で持てる力を十分に発揮できる社会の実現のため、ジェンダー平等に関する取組の推進、女性のキャリア形成の促進に積極的に取り組みます。
全ての県民の尊厳を守るため、人権啓発活動やLGBTの方々などへの偏見や差別をなくす取組を推進し、互いに尊重し合う共生の社会を目指します。
北部圏域において、医師不足を抜本的に解消し、安定的かつ効率的で地域完結型の医療提供体制を構築するための北部基幹病院の整備に向け、関係者間の基本合意形成を図り、基本構想、基本計画の策定に向けて取り組みます。
北部地区の教育環境の充実のため、中高一貫校の設置に向けて、取り組んでまいります。
森や水及び水源地域に対する理解の促進と地域の振興を図るため、北部地域の水源の維持や環境保全、地域振興等、やんばるの森・いのちの水を守る取組を推進します。
本島周辺離島8村への水道水の安定供給と料金低減などを図るため、水道広域化に取り組んでまいります。
また、県外都市部における移住相談会や移住体験ツアーの開催など、UJIターン者の持続的受入に向けた取組を推進します。

令和2年度の県政運営の「重点テーマ」として、「新時代沖縄の挑戦」、「沖縄らしい優しい社会へ」、「人口減少の克服と魅力ある地域社会の形成へ」、「県民一人ひとりに豊かな人生を」、「県民の生命と暮らし、美ら島の自然と文化を守る」及び「平和の発信・継承と世界に拡がるウチナーネットワークの形成」の6項目を掲げ、沖縄振興を力強く推進する施策に取り組んでまいります。
私は、職員一人一人が、沖縄を愛するチムグクル、真心をもって、意欲的かつ柔軟な発想で働くことができる職場づくりを進め、限りある行政資源の下で、多様な行政需要に対応する政策実現型組織の編成に取り組みます。

第4に、「内閣府予算案及び税制改正について」申し上げます。
令和2年度内閣府沖縄振興予算案においては、県及び市町村が要望した概算要求の満額が確保されなかったこと、沖縄振興一括交付金が6年連続で減額となったことは残念でありますが、沖縄振興を推進するための経費として3千億円台が確保され、子どもの貧困対策、離島活性化の推進などが増額となり、小規模離島の海底送電ケーブルやテレワーク施設の整備が新たに盛り込まれました。
また、令和2年度税制改正においては、5つの沖縄関係税制の延長が認められました。
県としては、沖縄振興予算及び税制の更なる効果的な活用を図るため、県を挙げて推進体制を強化し、最大の効果が得られるよう沖縄の振興に全力で取り組んでまいります。

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