「琉球諸島」を世界自然遺産へ

ページ番号1004728  更新日 2024年1月11日

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1.遺産候補地に選定された経緯

世界自然遺産候補地に関する検討会

平成15年2月、わが国において、新たに世界自然遺産として推薦できる地域があるかどうかを学術的見地から検討するため、学識経験者で構成された「世界自然遺産候補地に関する検討会」が環境省と林野庁によって設置され、4回にわたる検討が重ねられた結果、平成15年5月、「知床」、「小笠原諸島」、「琉球諸島」が世界遺産条約に定める登録基準を満たす可能性が高い地域として選定されました。
「琉球諸島」は下記のとおり、高い評価を得た一方で、今後取り組むべき課題についての指摘も受けました。

  • 評価を得られた点
    「大陸との関係において独特の地史を有し極めて多様で固有性の高い亜熱帯生態系やサンゴ礁生態系を有している点、また優れた陸上・海中景観や絶滅危惧種の生息地となっている。」
  • 指摘された課題
    「絶滅危惧種の生息地など、重要地域の一部はいまだ十分な保護担保措置がとられていない。」
    「琉球諸島」が世界自然遺産候補地としてユネスコへと推薦されるためには、国立公園化などによる保護区域の設定、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコなどの希少種の保護、マングースなどの外来種対策などを進めていくことが必要です。

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2.該当すると思われるクライテリア

「琉球諸島」は、4つのクライテリアのうち、(9.)生態系と(10.)生物多様性の2つに該当する可能性があると考えられています。

(9.)生態系

  • 大陸島における生物侵入と隔離による種分化
  • 小規模な島嶼における特異な生態系
  • 亜熱帯性多雨林の成立
  • 河川及び沿岸域生態系の特殊性

「琉球諸島」は、大陸における生物の侵入と隔離による種分化の過程を明白にあらわす顕著な見本である。大陸から海洋に隔てられた小島嶼群として成立する過程で、陸生生物の分布が細分化され独自の進化が進んだことから、固有種が多く存在している。
また、「琉球諸島」は島の規模が小さく生態系の構成要素が少ないため、高次捕食者が非常に少ないことや在来の小型哺乳類が分布しないことから、食性の幅が著しく広いイリオモテヤマネコなど、小規模な島嶼における特異な生態系が構成されている。
さらに、モンスーンのもたらす降雨により、世界の亜熱帯地域の中でも限られて地域にしか成立しない亜熱帯性多雨林が成立し、固有種の主要な生息・生育場所として生態系の基盤となっている。
一方、河川や沿岸域については、海水の影響のある水域においてマングローブ湿地の魚類や底生生物は種の多様性が高く、また、サンゴ礁生態系の構成種も多様性・固有性が高いほか、沿岸域では、世界でも有数の流れの速い海流である黒潮が存在し、それが障壁となって周辺の大陸や島嶼から「琉球諸島」が隔離され、独自(固有性の高い)の沿岸生物相が形成されていることが示唆されている。
なお、分布域の北限近くに位置する造礁サンゴの多様性は、フィリピンやグレートバリアリーフと肩を並べるほど高く、沿岸性魚類、巻貝、イセエビ類を指標としたサンゴ礁生態系の構成種は、「琉球諸島」を含む南部日本が世界で最も固有性が高い海域と報告されている。

(10.)生物多様性

  • 希少種・固有種の生息地等
  • 移動性生物の繁殖地等

「琉球諸島」は、IUCN(世界自然保護連合)のレッドリストに記載されている多くの国際的希少種の生息・生育地となっている他、多くの固有種や種の多様性に富むサンゴ礁生態系がみられる。ジュゴンの世界的生息分布の北限にあたるがその個体数は極めて少ないなど、世界的に見ても生物多様性保全上重要な地域となっている。
さらに、「琉球諸島」は、シベリア~オーストラリア間を往復する渡り鳥や越冬鳥にとって重要な地域であると同時に、海鳥の重要な繁殖地となっている。また、回遊するクジラ類など移動性の高い動物の中継・繁殖地として利用されている。特に北太平洋におけるザトウクジラの重要な繁殖地、北太平洋におけるアカウミガメの唯一の繁殖地であるなど、移動性の高い種群を維持する上で、世界的に見ても重要な地域である。

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3.完全性の条件に関する評価

「琉球諸島」は、4つのクライテリアのうち2つに該当し、それらの完全性の条件をみたすとされています。

(9.)生態系

地史的な影響により、隔離された島嶼での種分化の過程を示す十分な規模の要素を含んでいる。

(10.)生物多様性

希少種・固有種の重要な生息地・生育地を包含している。

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4.適切な保護措置と管理体制の構築

保護措置

わが国の既存の世界自然遺産地域における保護措置として、各種法令等に基づく保護地域が指定されています。「琉球諸島」では、国が指定等する保護地域に限っても、自然環境保全地域、国立公園、国定公園、国指定鳥獣保護区、生息地等保護区、森林生態系保護地域、天然保護区域が既に指定されています。これらの保護地域は、保護管理計画を有し、立法上又は制度上の保護を受けています。
しかし、現在、保護地域が設定されているのは海岸部が主であり、島の内陸部は西表島と奄美大島を除くと、ほとんど保護地域が設定されていません。「世界自然遺産候補地に関する検討会」で指摘されたとおり、絶滅危惧種の生息・生育地など主要な重要地域のいくつかは保護地域が設定されていないため、今後、新たな保護地域の指定や既存の保護地域の拡張等が必要です。
なお、現在、環境省において、やんばる地域や石垣島の国立公園化(平成19年8月1日、西表国立公園に編入され、西表石垣国立公園となりました。)、西表島の公園区域拡充にへ向けた作業が進められています。管理体制わが国の既存の世界自然遺産地域をみると、地域連絡会議が設置され、管理計画が策定されるのが一般的です。管理計画の策定にあたっては、地域関係者の理解と協力を確保することが重要なことから、説明会や意見交換会等の普及啓発活動が必要です。

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