更新日:2012年5月7日
意見表明第16号(母子及び寡婦福祉資金の貸付けに係る連帯保証人について)
平成18年07月021日
沖縄県行政オンブズマン 長嶺 信榮
沖縄県行政オンブズマン 大城 道子
母子及び寡婦福祉資金の貸付けに係る連帯保証人について
【意見表明】
母子及び寡婦福祉資金の貸付けに係る連帯保証人は、県内に1年以上居住しているものであることを要件としているが、やむを得ない理由が認められる場合は、県外居住の親族を連帯保証人にすることについても認め、県内に親族のいない母子、寡婦家庭にも同資金を借り受ける機会を与えるよう検討されたい。
【理 由】
県は、母子及び寡婦福祉法に基づき母子福祉資金、寡婦福祉資金を貸付けている。
同資金の貸付け制度は、母子家庭等の自立の助成と生活意欲の助長を図る等のために設けられたものである。
このため、一人でも多くの母子家庭の母等が本制度を活用し、自立への道を歩むことができるようにする必要がある。
県は、同資金の貸付審査事務については、「母子及び寡婦福祉資金の貸付審査基準」を定め、これにより審査を行っているが、同審査基準によると、連帯保証人は、原則として、三親等以内の親族であること、県内に1年以上居住しているものであることが要件となっている。
このため、県内に親族のいないものは同資金の貸付けを受けることができない状況にある。
昨今は、他県との交流が頻繁となり、本県に移り住む県外出身の女性も多くなっている。それに伴って、母子家庭等で県外出身の母等が少なからずいる。
このような人が本制度を利用しようとするとき、支障となるのが「県内に1年以上居住している三親等以内の親族」という連帯保証人の要件である。
行政オンブズマン室にも、県外には連帯保証人になれる姉妹がいるにもかかわらず、住宅資金が借りられないという沖縄在住で県外出身の母からの苦情があり、類似の要望もよく聞くところである。
同要件を設けているのは、貸付けの際に、連帯保証人と面談し連帯保証の意志を確認すること、また、借受人が償還を履行しなかったとき、連帯保証人が県内居住であれば直接出向き督促や徴収がし易いこと、の理由からのようである。
沖縄県母子寡婦福祉資金特別会計の決算状況は、連帯保証人について厳しく要件を定めているにもかかわらず、貸付金の償還率が約30%台であり、現場での償還金の徴収の苦労が察せられる。
しかしながら、連帯保証人が県外居住であっても、償還督促状を郵送するなりして、連帯保証人の義務を果たすよう促すことはできると思う。また、連帯保証人を県外居住者にしたことにより、償還金の償還率が低下するとも思えない。
連帯保証人は、その保証能力、保証意志、償還不履行の際の徴収の確実性等が考慮されるが、その場合、必ずしも県内居住者であることは必要不可欠なことではないと思われる。
重要なことは、県内に親族がいる、いないにかかわらず、母子等の自立助成に対しては、行政は等しく援助していくことであると思う。
県内に親族のいない県外出身者の母子家庭は、孤軍奮闘して自立していかなければならない。このような家庭に、貸付制度の機会が与えられないのは、制度の主旨が生かされず不合理である。
したがって、「母子及び寡婦福祉資金の貸付審査基準」の連帯保証人について、その要件を緩和する方向で見直しを検討いただきたい。
同貸付金の償還状況を考慮すると、原則は、連帯保証人を県内居住者とするとしても、県内に親族がおらず県外に親、兄弟姉妹など意志、能力ともに連帯保証人として適格者がいるなど、特にやむを得ない事情が認められる場合は、例外として取り扱う措置が相当だと思われる。