疫学統計・解析委員会資料(令和3年7月19日-7月25日)

ページ番号1018238  更新日 2024年1月11日

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解説および資料(令和3年7月19日-7月25日)

現状

沖縄県における先週(7月19日-25日)の新規陽性者数は、992人(前週 470人)でした。沖縄本島(周辺離島を含む)における週あたりの実効再生産数(R)は2.07 (95%CrI:1.93,2.22)であり、急速な感染拡大が始まっています(図1)。

グラフ:陽性者数の推移と実効再生産数(北部、中部、南部)

グラフ:沖縄県における性年齢階級別症例数(7月12日~18日)

年代別では、20代が219人(21%)と最多であり、30代 180人(18%)、40代 157人(16%)と続きます。全年代で増加していますが、とくに増加が顕著なのが10代 142人(14%)で、前週 38人の3.7倍となっています(図2)。

園児、生徒、学生の感染事例が、全体の16%を占めています。内訳は、保育園・幼稚園児 7人(前週 14人)、小学生 62人(前週 23人)、中学生 47人(前週 15人)、高校生 17人(前週 8人)、大学生 7人(前週 0人)、専門学校生 15人(前週 3人)でした。とくに、小中学生における感染拡大が顕著です。

イラスト:沖縄県内における検査事業の実績(7月17日~23日)の表

沖縄県では、学校生徒で1人でも陽性者を確認したとき、クラス全員のPCR検査を実施しています。先週(7月17日-23日)は、35クラス、1,303人に検査を実施しましたが、陽性者5人のみでした(図3)。このことから、小児の多くが家庭内感染であり、夏休みに入ってからも、この傾向は続くと考えられます。

グラフ:年齢別陽性者数の推移(週あたり)

65歳以上の高齢者は82人(8%)であり、前週の26人より大きく増加しています(図4)。ただし、このうち40人は単一の医療機関における集団感染です(ほとんどの入院患者がワクチン未接種)。この他、施設内感染 5人、家庭内感染 15人でした。

疫学調査で明らかにできた範囲において、職業別で最多だったのは、飲食業従業員 55人(前週 26人)でした。続いて、建設業従事者 47人(前週 16人)、小売店従業員 26人(前週 14人)と順位は前週と変わりません。医療従事者 19人(前週 8人)、介護従事者 14人(前週 12人)、観光業従事者 14人(前週 13人)と続きます。ただし、業務中に感染したとは限りません。

グラフ:医療圏別にみる新規陽性者数の推移

医療圏別では、北部 61人(前週 39人)、中部 367人(前週 186人)、那覇市 275人(前週 115人)、南部 264人(前週 97人)、宮古 13人(前週 26人)、八重山 6人(前週 1人)でした(図5)。中南部において増加が加速しています。宮古は、小中学生が4人含まれるなど、市中での流行が疑われる状況です。八重山は、マリンレジャー、ホテル関係者など観光客との接点が疑われる事例が3人含まれています。

疫学調査で明らかにできた範囲において、渡航関連での感染者は15人(1.5%)でした。内訳は、県外へ渡航した県民が9人(うち、出張 4人)、県外からの渡航者6人です。また、渡航者との接触による感染は5人(うち、帰省 3人)でした。帰省や出張における感染リスクが高いので注意が必要です。

グラフ:市町村別にみる新規陽性者数(先週の上位10市町村)

市町村別では、多い順に、那覇市 276人(前週 116人)、うるま市 115人(前週 41人)、浦添市 100人(前週 23人)、沖縄市 97人(前週 56人)、名護市 52人(前週 28人)でした(図6)。とくに、中南部の都市部で急速に増加しています。

グラフ:在沖米軍と沖縄県における新規陽性者の推移

なお、在沖米軍は47人(前週 68人)と流行規模は大きいものの、ピークアウトしてきています(図7)。7月4日の独立記念日におけるイベント関連の集団感染でしたが、その後は抑え込まれているものと考えられます。

ただし、基地従業員において7人の感染を認めており、これらの方々への疫学調査では「基地内ではマスクを着けている人が少ない」と報告されていました。基地内での流行は続いているため、市中へと拡大させないよう引き続き注意が必要です。

グラフ:新規陽性者数および重症度別入院患者数

入院患者数は、先週末(7月25日)が341人(7月18日 221人)と急速に増加しています。酸素投与など中等症患者 248人(7月18日 183人)、気管挿管など重症患者 2人(7月18日 6人)となっています(図8)。

沖縄県内で流行しているウイルスは、イギリス由来のアルファ株からデルタ株へと置き換わりつつあります。先週、205検体について変異株(L452R)PCRを実施したところ、69検体(33.7%)において陽性を確認しました。これらはインド由来のデルタ株だと考えられます。とくに、中部25検体と全体の4割を占めています。一方、北部ではデルタ株は確認されていません。

イラスト:今後1週間(7月26日~8月1日)の発生見込み数の表

推定

沖縄県内では、7月12日を境にして再流行が始まっています。急速な感染拡大が始まっていますが、新たな社会的介入はとられていないため、さらなる増加が予測されます。来月上旬には、かつてない規模の流行へと至ると推定します。

今週の新規陽性者数は、さらに倍増して1500-2100人と推定します。ワクチン未接種の中高年を中心として、中等症以上の患者が多発するため、入院患者数は500-600人へと増加します。また、気管挿管等が行われる重症患者数も徐々に増加しはじめ、12-20人に至ると見込まれます(図9)。

ただし、急速な入院患者数の増加に対して、医療機関の対応が追い付かない可能性が高いです。このため、実際には、自宅療養者や施設療養者が増加することになると考えられます。

イラスト:求められる施策(2021年7月20日レポートより再掲)

解説

沖縄県では、急速な感染拡大が生じています。同様に本土でも流行が生じていることから、全国的な流行に巻き込まれながら、デルタ株への置き換わりも重なって、8月上旬にはかつてない規模の流行に至ると考えられます。

ワクチン接種が進められていますが、沖縄県において、7月26日時点で2回の接種が完了している高齢者は63.5%に過ぎません。また、全人口に占める2回の接種完了者は15.9%に過ぎません。重症者を減らす効果は期待できるかもしれませんが、感染拡大を抑える集団免疫には達していません。

このため、このまま大きな流行に至った場合には、多くの重症者や死亡者が発生することが予測されます。コロナに対応する入院医療だけでなく、救急医療全般が持ちこたえられなくなる可能性が高まっています。

流行を抑止する施策については、前回(7月20日)のレポートを参照してください(図10)。状況は悪化していますが、やるべきことは変わっていません。

とくに、流行地から/への渡航自粛の呼びかけは重要です。観光客に目が行きがちですが、実際には、相互の帰省や出張において感染している事例を多く認めています。改めて、夏休みの帰省の延期を強く求めてください。また、出張をできるだけ減らすとともに、懇親の場を持たないように呼びかけてください。

ただし、現時点で県内における感染事例のほとんどは、県民相互の交流によるものです。会食が主たる感染機会となっており、その後、家庭内に持ち込まれて拡がっています。会食の場は、飲食店のみならず、自宅やビーチパーティなど多様です。飲食店のみに制限をかけるのでは不十分であり、多様な会食の場を減らしていくよう県民に呼びかけていく必要があります。

これまで最多の入院患者数は、6月6日の539人でした。あと1週間程度で、これを超えてくることが予測されます。しかし、実際には病床が確保できず、やむをえず、自宅や施設で治療を受ける方が増えてくるものと考えられます。死亡者をできるだけ減らすため、在宅医療を提供する診療所や訪問看護ステーションとの密接な連携が求められます。

また、外来患者数も急速に増加するため、県内の救急外来が維持できなくなる恐れがあります。新型コロナの診療では、厳格なゾーニングや感染防護具が求められるため、一般診療所での外来体制には限界があります。そこで、軽症者については、自己診断を行っていただけるよう、抗原検査キットを安価に配布することを検討してください。

多くの若者は軽症で推移しますが、感染の事実を知らないままに活動を続け、感染を拡げている可能性があります。抗原検査キットであれば、15分程度で結果を知ることができます。陽性であることを知ることで、外出自粛への動機づけにもなります。そのうえで、ホテルでの療養を希望する場合、体調不良で受診したい場合など、必要に応じて医療機関を受診できる体制としてください。

グラフ:都道府県別にみるPCR検査実施件数

沖縄県のPCR検査体制は、かなり拡充されています(図11)。しかし、PCR検査は抗原検査と比して精度は高いものの、結果が伝えられるまでに時間がかかるというデメリットがあります。検査依頼が集中すると、さらに報告が遅れることになり、感染を拡げる要因ともなります。

これ以上の流行が生じた場合には、昨年同様に検査体制が持ちこたえられなくなり、必要な患者において診断の遅れが生じる可能性があります。抗原検査キットによる自己診断を含め、県内における診断検査の体制を分散させる必要があります。

「沖縄県疫学統計・解析委員会資料」

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このページに関するお問い合わせ

沖縄県 保健医療介護部 感染症対策課
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