疫学統計・解析委員会資料(令和3年7月12日-7月18日)

ページ番号1018237  更新日 2024年1月11日

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解説および資料(令和3年7月12日-7月18日)

現状

沖縄県における先週(7月12日-18日)の新規陽性者数は、470人(前週 327人)でした。沖縄本島(周辺離島を含む)における週あたりの実効再生産数(R)は1.31 (95%CrI:1.18, 1.44)であり、前週の0.72から急速にリバウンドしています(図1)。

グラフ:陽性者数の推移と実効再生産数(北部、中部、南部)

グラフ:沖縄県における性年齢階級別症例数(7月12日~18日)

年代別では、20代が97人(21%)と最多であり、前週の62人から大幅に増加しています。20歳未満の陽性者は82人(17%)であり、前週の38人から倍増しました(図2)。このうち、保育園児 14人(前週 3人)、小学生 23人(前週 12人)、中学生 15人(前週 7人)、高校生 8人(前週 4人)となっています。

グラフ:年齢別陽性者数の推移(週あたり)

65歳以上の高齢者は26人(6%)であり、全年齢の陽性者数が増加しているにも関わらず、前週の44人より大きく減少しています(図3)。75歳以上は9人(2%)でしたが、このうち2人はデイサービスの利用者でした。高齢者施設における集団感染は減少しており、ワクチン接種が進んでいない施設に限局しています。

疫学調査で明らかにできた範囲において、職業別で最多だったのは、飲食業従業員 26人(6%)でした。続いて、建設業従事者 16人(3%)、小売店従業員 14人(3%)、観光業従事者 13人(3%)、介護従事者 12人(3%)と続きます。ただし、業務中に感染したとは限りません。

グラフ:医療圏別にみる新規陽性者数の推移

医療圏別では、北部 39人(前週 36人)、中部 186人(前週 107人)、那覇市 115人(前週 79人)、南部 97人(前週 73人)、宮古 26人(前週 16人)、八重山 1人(前週 9人)でした(図4)。中部の伸びが急激ですが、これは後述するようにデルタ株への置き換わりによる影響も考えられます。一方、八重山の流行は沈静化してきており、他の地域とは異なる傾向です。

疫学調査で明らかにできた範囲において、渡航関連での感染者は14人(3%)でした。内訳は、県外へ渡航した県民が8人、県外からの渡航者6人です。相互の親族訪問(帰省)における感染リスクが高いので注意が必要です。また、一緒に渡航したメンバーのなかに感染者がいたため、渡航先で集団感染したと考えられる事例もありました。

グラフ:市町村別にみる新規陽性者数(先週の上位10市町村)

市町村別では、多い順に、那覇市 116人(前週 80人)、沖縄市 56人(前週 21人)、うるま市 41人(前週 17人)、宜野湾市 33人(前週 18人)、名護市 28人(前週 37人)でした(図5)。とくに、中部の都市部で倍以上の増加を認めていますが、感染経路は多様であり、絞り込むことができません。市中流行が拡がっていると考えられます。

グラフ:在沖米軍と沖縄県における新規陽性者数の推移

なお、在沖米軍で68人(前週 47人)と再流行が始まっています(図6)。嘉手納基地で27人(前週 35人)と持続しており、それがキャンプキンザー 18人(前週 3人)、キャンプフォスター 15人(前週 2人)など他の基地へと拡がりはじめているようです。基地従業員のほか、友人など接触のある沖縄県民でも感染を認めています。

米兵と接触歴のある事例では、デルタ株感染が多いことから、在沖米軍ではデルタ株が流行しているものと推察されます。米軍人および軍属はワクチン接種が完了しているはずですが、モデルナ社ワクチンのデルタ株への効果が限定的であるか、あるいは接種から半年が経過したため予防効果が減衰している可能性もあります。

グラフ:新規陽性者数および重症度別入院患者数

入院患者数は、先週末(7月18日)が221人(7月11日 228人)と減少していますが、7月16日から増加傾向にあります。酸素投与など中等症患者 183人(7月11日 185人)、気管挿管など重症患者 6人(7月11日 11人)となっています(図7)。

沖縄県内で流行しているウイルスは、ほとんどがイギリス由来のアルファ株ですが、徐々にデルタ株への置き換わりが進行しています。先週、246検体について変異株(L452R)PCRを実施したところ、36検体(14.6%)において陽性を確認しました。これらはインド由来のデルタ株だと考えられます。前週の9検体(3.8%)から明らかに増加しており、とくに中部 70検体中で17検体(24.3%)と置き換わりが進んでいます。

イラスト:今後1週間(7月19日~25日)の発生見込み数の表

推定

沖縄県内では、7月12日を境にしてリバウンドが確認されています。重症者の数は減っていますが、さらなる流行に至れば、ワクチン未接種の高齢者や40代、50代の重症者が多発するものと考えられます。

今週、急速に感染拡大していても、4連休により医療機関での検査件数は増加せず、新規陽性者数の報告は600-800人程度に抑えられる可能性があります。しかし、実際には、より多くの感染者が発生しているものと考えるべきです。

若者中心の感染であるため入院患者数の増加スピードは遅く、今週末には230-270人に至ると推定します。気管挿管等が行われる重症患者数は7-10人と見込まれます(図8)。

イラスト:沖縄県内における検査事業の実績(7月10日~16日)の表

解説

沖縄県では、第5波と言うべき感染拡大が始まっています。その速度は加速しており、新たな手を打たない限り、このまま急速に拡大すると考えられます。

流行規模に対して、高齢者の割合が6%と低いことから、しばらくは重症者数は増えない可能性があります。しかし、そこに甘んじていると、ブレーキが利かないぐらいに流行が加速して、ワクチン未接種者において重症者が多発していきます。そして、この流行はかなり長引く恐れがあります。

よって、病床占有率で判断するのではなく、早い段階で流行を抑え込みながら、ワクチン接種を推進する必要があります。とくに、今週の4連休をどのように迎えるかで、8月上旬にかつてない大流行を経験するか、ある程度の抑え込みに成功しながら夏を切り抜けるかが決まります。

  1. 陽性者への積極的疫学調査の徹底
    まだ、県内いたるところで流行している状況ではありません。職場や学校、家庭など、陽性者を認めた周辺に徹底して幅広く検査を行うことに十分な意義があり、現時点で最優先の課題だと思います。
    高齢者施設における経験から、私たちは、濃厚接触者にだけ検査を行っていても封じ込められないことを知っています。ところが、職場などで陽性者を認めても、限られた濃厚接触者だけ検査を行って、オフィス全体への検査が行われていません。
    漠然とモニタリング検査を行うよりも、よほど陽性者を発見する可能性が高く、かつ現場への安心を提供することになります。今後の流行を抑止するうえで、もっとも優先度の高い取り組みです。
  2. 流行地からの渡航自粛の呼びかけ
    現時点では、本土全域で第5波が始まろうとしています。よって、ワクチン接種の完了者を除いて、すべての渡航者に対する渡航自粛を求めることが必要です。ワクチン接種が完了していない方で、やむを得ず渡航される方は、渡航前にPCR検査を受けて陰性を確認するようお願いいたします。
    相互の親族訪問(帰省)が、ウイルス持ち込みの要因となっています。祖父母がワクチン接種を完了していたとしても、訪問する側がワクチン接種を完了していなければ、祖父母以外(久しぶりに会う同級生など)へと感染を拡げるリスクが高まります。帰省者の全員がワクチン接種を完了するか、あるいは、第5波が落ち着くまでは帰省を延期いただくように呼びかけてください。
  3. 土日祝日の繁華街の休業要請
    松山地区をはじめ、県内の繁華街に活気が戻っています。これから多くの渡航者も訪れるでしょうし、少なからぬ県民も訪れる可能性があります。
    緊急事態宣言が出されているので、酒類を提供する店舗の営業は自粛いただいていることになってます。しかし、実際には開いています。感染対策は建前でやっても上手くいきません。いまは、現実と建前にギャップが生じており、建前で対策がとられています。
    観光客と県民との接点が生じやすい土日祝日については、少なくとも休業いただくように、改めて要請することが必要です。加えて、県民が飲み会などを自粛いただけるよう、とくに4連休中については(補償金をつけて)代行運転の営業自粛を求めるとともに、飲酒運転の取り締まりを強化することも検討してください。
  4. 繁華街における匿名検査の普及
    昨年7月の4連休においても、繁華街で働く方々の感染を多数確認しました。当時は、4連休の2週間後に2千人規模での検査を実施しましたが、対応が遅すぎたという反省があります。
    より早期に検査が受けられるよう、飲食店従業員向けの無料検査を実施していますが、実際には検査を受ける方は多くはありません(図9)。陽性だった場合に隔離されるなど、ほとんどメリットがないので仕方がない側面もあるかと考えられます。
    そこで、抗原定性検査キットを各店舗に無料で配布することを検討してください。自己検査して陽性だったときには、自主的に仕事を休んでいただくよう呼びかけます。また、結果については、匿名で報告いただくようにします。匿名検査であっても、感染の事実を知ることは、まん延防止へと貢献します。
  5. 県内全域における検査アクセスの向上
    現在、沖縄県内で、とりわけ効率的に感染者を発見しているのは、希望者を対象とする「安価なPCR検査補助事業」です(図9)。
    那覇市内に2000円の検査所を設けていますが、先週だけで75人の陽性者を発見しました。中北部にも検査が受けられる場所を増やしたり、匿名で検査が受けられるようにすることも検討いただければと思います。
    住民が能動的に検査を受けに来られるのであれば、これにしっかり応えていくことが一番です。特定の業種が怪しいといった一方的な見方でモニタリングするよりは、効率的に感染の事実を伝えていく手段になっています。

「沖縄県疫学統計・解析委員会資料」

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沖縄県 保健医療部 感染症総務課
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