

大規模な基地返還跡地で計画的にまちづくりを進めているフィリピンの都市の事例を視察してきました。今回は5つのポイントに着目して「みどりの中のまちづくり」の先進地をみてきました。
- 5 Points
- 大規模な返還跡地の開発
- 地区内でのみどりの空間づくり
- 工業やアミューズメント等の計画的な誘致
- 基地の記憶と遺産の活用
- 持続可能な都市開発に向けた取組
Bonifacio Global City
ボニファシオ・グローバルシティ地区
大規模な返還跡地の開発 基地の記憶と遺産の活用
米軍基地跡地を活用した、マニラ最高水準の優良な新都市が整備されています。マニラでも有数の高級市街地が形成され、大規模な業務、商業、住宅などが立地しています。
従前の基地時代の道路配置も新たなまちの中に一部とりこまれています。



地区内でのみどりの空間づくり
広場や公園、緑地、広幅員の道路、電線地中化、豊かな街路樹、歩きやすい歩行者空間といった都市インフラの整備が進められています。
地区の中央を緑の都市軸となるオープンスペース“ハイストリート”が貫いており、修景緑地、ステージ、休憩スポット、遊び場など多様な緑地空間が展開されています。またその周囲には、魅力的な商業機能がオープンスペースに顔を向ける形で配置されており、都市の賑わい形成が図られています。




Subic
スービック地区
大規模な返還跡地の開発 基地の記憶と遺産の活用
67,000haにおよぶ広域な米国のスービック海軍基地跡地の開発に、インフラ整備、機能誘導、工業団地運営など一気通貫で取り組んでいます。
地区内に存在する港湾機能、空港機能を効果的に活用し、大きく2つの工業団地整備を行い、工業機能の集積が進められています。
同時に、地区内の海、山といった自然環境を効果的に活用して、観光やリゾート機能の誘導も計画的に進められ、水族館や自然生態を生かしたサファリが整備されているほか、リゾートホテルやカジノ誘致なども進められています。



工業やアミューズメント等の計画的な誘致
地区の開発・運営は開発庁が一元的に行っており、企業誘致も主体的に行っています。税制優遇やワンストップサービスなどを提示し、海外企業を誘致しています。
工業機能だけでなく、それを支える住宅やサービス、コンベンション機能の充実を図っており、スービック・ゲートウェイパーク内には、開発庁が整備・運営する大規模なコンベンションセンターが立地しています。
開発庁では、様々な国際的なイベントに参加し、海外からの投資家の誘致活動などを積極的に進めています。



Clark
クラーク地区
基地の記憶と遺産の活用
1991年に返還を受けたクラーク空軍基地跡地の開発であり、米軍の空港を再利用してクラーク国際空港を整備しています。
広大な跡地を生かした産業団地の整備のほか、公共施設やレジャー施設の整備を精力的に進めています。
地区内には、米軍利用時の住宅も保全され、再利用されています。



工業やアミューズメント等の計画的な誘致
経済特区としての税制優遇や地区内空港の有効活用などの取組を展開し、国内外から1000社を超える製造業の誘致を実現しています。
今後、地区の更なる機能強化に向けて、「国際フードハブ」、「公共交通との一体化」、「クラーク中央ビジネス地区」、「中間層向け住宅整備」といった4つの大型プロジェクトを向こう5年間程度で展開すべく取組を進めています。
また、マニラとクラークを結ぶ鉄道の整備が進められています。
地区の開発と運営はいずれも開発公社が担っており、政府から公社にさまざまな決定権が与えられているため、スピード感をもった事業展開ができていることが特徴です。



New Clark
ニュークラーク地区
マニラ首都圏の人口過密や交通渋滞、洪水リスクなどを軽減することを目的として、マニラ首都圏の機能分散の観点より、2016年に国家的プロジェクトとして事業が開始されました。
基盤整備や先行的な施設の建設が進められてきたところであり、本格的な都市建設はこれからです。
工業やアミューズメント等の計画的な誘致
今後、中央政府の機関や国立大学などの教育機関の移転が予定されているほか、中間層向け住宅の整備や高級ゴルフリゾート・カジノ整備などの計画も進められています。
2019年の東南アジア競技大会で使用された陸上競技場(20,000人収容可能)や、水泳競技場(2,000人収容可能)、選手村、ビジネスセンターなどがあり、同施設はフィリピンナショナルチームの合宿や練習、国内外の大規模スポーツ大会などで活用されています。
また、フィリピンの大手ディベロッパーが主に物流、軽工業、ハイテク企業を対象とした100haの工業団地の開発を進めています。



持続可能な都市開発に向けた取組
スマートシティに関する取組も進められており、日本企業によるスマート交通の実証実験などが実施されています。
