養殖クルマエビからの採卵技術
- [要約]
- 養殖クルマエビ(体重39.3g)を用いて、眼柄切除による成熟と産卵を調べた結果、養殖エビからの採卵は可能であることが明らかになった。採卵には眼柄切除とゴカイの給餌が有効であり、1尾当たりの産卵数は11万粒であった。
沖縄県水産試験場・八重山支場
[連絡先] 09808-8-2255
[専門] 養殖
[対象] クルマエビ
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
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本県のクルマエビ養殖は、母エビを九州から入手して種苗生産したり、種苗そのものを県外に依存している。しかし、近年は良質な母エビの入手が難しいうえ、疾病等の問題から、健全な養殖用種苗の安定的な確保が望まれている。そこで、養殖クルマエビからの採卵技術を確立することを目的に、眼柄切除による成熟と産卵について検討を行った。
- [成果の内容・特徴]
- 試験には体重27.6〜56.9g(平均39.3g)のクルマエビを用い、片方の眼柄を熱したピンセットで切除した。餌料にはゴカイを用いた。切除後10〜14日目に卵巣の成熟度を調べた結果、試験1で17尾中3尾、試験2で5尾中1尾、試験3で5尾中2尾、試験4では19尾中3尾が成熟、産卵した(表1)。産卵率は17.6〜40.O%の範囲で、総産卵数は68万粒であった。
- 一方、試験5の眼柄切除を行わなかった無処理区では15尾中1尾が成熟したものの、産卵には至らなかった(表1)。
- 眼柄切除後、ソデイカ、アサリ及びゴカイの餌料別の成熟を比較した結果では、ソデイカ区で43尾中1尾が成熟、産卵した。アサリ区では41尾中1尾が成熟したものの、産卵には至らなかった。それに対し、ゴカイ区では137尾中27尾が成熟、産卵した(表2)。
- 今回の試験に用いた養殖クルマエビの産卵個体数は37尾、産卵数は412万粒で、1尾当たりの産卵数は11万粒であった。
- 以上の結果から、養殖クルマエビの採卵には眼柄切除とゴカイの給餌が有効であると判断された。
- [成果の活用面・留意点]
- 養殖クルマエビからの採卵は可能である。
- 採卵には眼柄切除とゴカイの給餌が有効である。
- 切除後は雄雌対で飼育する必要がある。
- 優良品種(成長、耐病性等)の育種研究への活用ができる。
- [具体的データ]
- 表1 養殖クルマエビの眼柄切除後の成熟、産卵及びふ化率
表2 眼柄切除後の養殖クルマエビに対するソデイカ、アサリ
及びゴカイ給餌の影響
[その他]
研究課題名 :甲殻類増養殖試験
予算区分 :県単
研究期間 :平成8年度
研究担当者 :玉城英信
発表論文 :平成9年度水産学会秋季大会講演予定
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