ヤイトハタの種苗生産


[要約]
  親魚養成中のヤイトハタから自然産卵で得られた77千尾の孵化仔魚を用い、タイ産ワムシ、S型ワムシ、配合飼料、アルテミアを順次与えて種苗生産した。日齢51で平均全長29.8o、3千尾の種苗を得た。孵化仔魚からの生残率は3.86%であった。
沖縄県水産試験場・八重山支場
[連絡先]  09808-8-2255
[専門]    種苗生産
[対象]    ヤイトハタ
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  本県では、県栽培漁業センターが生産するマダイとハマフエフキの種苗を用いた海面魚類養殖業が盛んに成りつつある。しかしながら、養殖対象の魚種数が少ないために、養殖漁家の経営基盤はまだ不安定である。業界からは新たな養殖種の種苗供給を望む声が強く、新魚種の種苗量産技術開発は急務である。そこで、平成4年度から養殖種として有望なヤイトハタの種苗量産技術開発試験を実施してきた。
[成果の内容・特徴]
  1. 平成4年度から親魚養成中のヤイトハタが8年6月に自然産卵し、初めて受精卵(平均卵径0.95o)が得られた。76,820尾の孵化仔魚を24t円形水槽で飼育したところ、2,965尾(日齢51、平均全長29.8o)の種苗が生産できた。孵化仔魚からの生残率は3.86%であった。
  2. 餌料は日齢2からタイ産ワムシ、日齢5からS型ワムシを0.2〜8.8個/tの密度で与えた(図1A,B)。日齢8までは飼育水槽にナンノクロロプシスを6〜24万細胞/tの濃度で添加した。日齢14から配合飼料を、日齢28からは栄養強化したアルテミア幼生をS型ワムシと併用して与えた(図1C,D)。
  3. 開口後から日齢10までに大きな減耗がみられ(図2)、日齢26〜30にヘイ死個体が増加した(図3)。日齢39(全長約20o)から共食いがみられ、その後成長にともない共倒れ現象−大きな個体がやや小さい個体を捕食するが、飲み込むことも吐き出すこともできずに両者が死亡する現象−が観察された。
[成果の活用面・留意点]
  1. ヤイトハタ種苗量産技術開発に必要な基礎的知見である。
  2. 日齢10までの減耗と飼育後期の共食い・共倒れ現象を軽減するために、餌料の種類・密度、投餌量あるいは飼育環境等についてさらに検討を要する。
[具体的データ]
図1 ヤイトハタ種苗生産時のワムシ密度(A)、
     ワムシ日投餌料(B)、アルテミア日投餌料(C)、
     配合飼料投餌料(D)
図2 孵化後から日齢51かでの生残率の変化
     日齢30までは推定値、日齢51は計数値
図3 日齢25〜35までのヘイ死個体数の変化
     ヘイ死個体数は、底掃除で回収された
     死魚の数を示す。

[その他]
研究課題名 :海産魚類増養殖試験
予算区分  :県単
研究期間  :平成8年度(平成4〜8年度)
研究担当者 :金城清昭・中村博幸・仲本光男・呉屋秀夫
発表論文  :平成8年度沖縄県水産試験場事業報告書(平成9年度発行予定)

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