八重山海域におけるイソフエフキの資源状態と管理について


[要約]
  八重山海域でイソフエフキは非常に重要な水産資源であるが、近年その資源状態は悪化してきている。資源回復には年間漁獲量を現在の50tから、少なくとも10%程度減少させる必要がある。そこで既知の産卵場を、産卵期(4月、5月)に2km四方程度の広さで禁漁にすることが望ましい。
沖縄県水産試験場・漁業室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    資源管理
[対象]    イソフエフキ
[分類]    指導

[背景・ねらい]
  イソフエフキは八重山海域では年間50tと、浅海域で漁獲される魚類の中で最も漁獲量が多い。大きな産卵場が八重山海域で10数箇所あり、産卵期にそこで多量に漁獲されている。しかし1回水揚量当たり漁獲量(CPUE:資源量の指数)の減少傾向は近年顕著となっており、早急に資源管理型漁業を確立しなければならない状況となってきている。そのために必要な生物情報を整理し、資源解析を行った。
[成果の内容・特徴]
  1. 産卵期(3月下旬〜6月下旬)に行った行動範囲の追跡調査で、最も移動範囲が大きかった個体は長辺1km程度の範囲を動いていた(図1)。したがってある産卵場には、そこを中心に2km四方程度の範囲から集まってくるものと考えられる。
  2. 本種は寿命は25歳前後であり、1歳魚以上が漁業の対象となっている(表1)。性成熟は満2歳で50%が、満3歳で全てが成熟する。
  3. 現在(1996年)の年齢組成から得られる生残率は約65%であった。初期の資源状態では生残率は88%程度と考えられた。この生残率の差が漁業によるものである。(Z:O.4271,M:0.125,F:0.3021)
  4. 現在の資源の状態は初期の資源の状態の1/4程度まで減少しているものと考えられ、現在の漁獲量が継続すると資源量はどんどん減少していく(図2)。
  5. 資源水準を現在の状態で維持にするためには年間の漁獲量を48t前後に減少させる必要がある。資源量をある程度増加させるためには、漁獲量を更に減少させる必要がある。年間40t程度の漁獲を5年続けると資源水準は現在より23%程度増大するものと予測される。
[成果の活用面・留意点]
  一刻も早く本種の資源管理型漁業を確立する必要がある。それには産卵親魚を保護するという視点から、産卵期の漁獲量を減少させるべきで、主な産卵場数箇所を2km四方程度の広さで、産卵期(特に4月、5月)に禁漁にするのが良い。
  現在の環境状態での年間平衡漁獲量が48t程度であり、アジモ場等(稚魚の育成場)の環境改変が加わった場合はこの数値は減少させないと資源水準は維持できない。
[具体的データ]
表1 イソフエフキの生物情報
図1 イソフエフキの行動範囲の1例
     (番号はポイント番号)
図2 漁獲量を変化させたときの資源量の予測

[その他]
研究課題名 :資源管理型漁業推進調査、名蔵湾保護水面管理事業
予算区分  :国庫補助
研究期間  :平成8年度(平成2〜4年、平成7〜9年)
研究担当者 :海老沢明彦
発表論文  :八重山海域におけるイソフエフキの資源生態調査
             (資源管理型漁業推進調査)、
           平成7年度沖縄県水産試験場事業報告書

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