ソデイカの禁漁期の有効性について


[要約]
  ソデイカの生産モデルを作成し、死亡率に幅をもたせたシミュレーションを実施した結果、現在おこなわれている7月〜10月の禁漁期が有効であることを確認した。
沖縄県水産試験場・漁業室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    資源管理
[対象]    ソデイカ
[分類]    指導

[背景・ねらい]
  1989年に久米島で始まったソデイカ漁業は、その後全県に広まり、本県の基幹漁業の一つになった。しかし、一部の地域で漁獲量が減少する等、資源管理の必要性が問われている。ソデイカの資源管理には、ある年に加入した資源を有効利用する方法と、産卵保護など再生産まで管理する方法がある。現在、沖縄県において、いくつかの管理策が実施されている。このうち、中心となる7月〜10月の禁漁期は、小型のイカを保護することで加入資源を有効利用することを主なねらいとしている。そこで、ソデイカの生産モデルを作成し、禁漁期の有効性を調べてみた。
[成果の内容・特徴]
  1. 成長式は、Nigmatu1linらが平衡石の解析から求めた次式を用いた。
        Y(g)=1920/(1+((1920-1.577)/1.570)exp(-0.03868t)) t=day
      ソデイカは産卵期が長いので、11月頃の外套長組成を参考に、1月〜7月に1:2:4:5:4:2:1の比率で発生することとした。漁具選択性として、外套長30p以上を漁獲することとした。
      自然死亡係数は、他の種の例を参考に0.05(t=月)を中心に用いた。また、生後13ヶ月ですべて死亡することとした。
  2. 様々な漁獲係数で調べた結果、7月〜10月を禁漁としたほうが漁獲量が増えるケースが多かった。これは、夏場の成長が速いためである。例えば、漁獲係数(漁獲の強さ)が0.2のとき、総漁獲量は禁漁によって約8%増加した。
  3. 7月〜10月を禁漁とすることで総産卵量は1.4倍増える結果となった。これは、加入資源の有効利用をめざす禁漁期の副次的効果として、再生産へも貢献することを意味している。

[成果の活用面・留意点]

  1. 夏場の禁漁が有効であることは確認されたが、体長制限等を含めて、資源管理策を普及する際は、地域の漁業・流通の実態も考慮すべきである。
  2. 漁獲強度が急激に増大して再生産を脅かすことがないよう、何らかの規制(承認制等)を同時にかぶせておくことは妥当である。
  3. 「ソデイカが大きな回遊をしない」という前提条件のうえで禁漁期は有効である。
[具体的データ]
図1 ソデイカ生産モデル
     シミュレーション結果の1例

[その他]
研究課題名 :アカイカ資源開発調査
予算区分  :県単事業
研究期間  :平成8年度(平成8年)
研究担当者 :鹿熊信一郎
発表論文  :ソデイカの資源管理と調査への一考察、1996
           ソデイカの成長式について、平成7年度沖水試時報

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