シロクラベラ(マクブ)の幼期の生態


[要約]
  シロクラベラの幼稚魚は、6月までに内湾度の高い海草藻場に来遊し、夏季の数ヶ月を藻場で過ごしたのち、成長に伴い沖へ移動すると考えられ、海草藻場を中心とした沿岸浅海域を生育場としていることが明らかになった。成長に伴い食性の転換がみられ、同時に餌料生物の多様化が観察された。
沖縄県水産試験場漁業室・八重山支場
[連絡先]  09808-8-2255
[専門]    資源生態
[対象]    シロクラベラ
[分類]    行政

[背景・ねらい]
  シロクラベラの生態的知見は、成魚について性成熟、産卵期、雌性先熟の性転換を行うことなどが知られているが、幼稚魚期の生態に関する知見は皆無である。そのため、本種の生育場の保護・保全、資源管理や将来的な種苗放流を行うに必要な基礎的情報は十分ではない。今回、沖縄島北部の羽地海域と石垣島名蔵湾での潜水観察および海草藻場での曳網採集により本種の幼稚魚期の生態を調査したところ、その一端を明らかにできた。
[成果の内容・特徴]
  1. 海草藻場に着底したシロクラベラは、夏季の数ヶ月間を藻場で過ごしたのち、成長に伴い徐々に沖へ移動すると考えられ(図1,2)、本種が海草藻場を中心とした内湾浅海域を成育場としていることが明らかになった。また、石垣島名蔵湾での潜水調査でも、河口域に近い内湾度の高い海草藻場で6〜7月にシロクラベラの幼魚が多数視認され、その後は徐々に内湾の藻場から外海寄りの藻場に分布を移すことが明らかになった(表1)。
  2. 幼魚の食性は成長に伴い、橈脚類・端脚類などの小型甲殻類から等脚類・カニ類・小型巻貝類などへ、さらにこれらに加えてエビ類や二枚貝類へと食性が転換し、同時に食性の多様化が認められた(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 生育場である沿岸浅海域の保護・保全を行うにあたり、科学的な根拠となる。
  2. シロクラベラの資源管理あるいは種苗放流等の栽培漁業を行うにあたり、基礎的な知見と成りうる。
[具体的データ]
図1 屋我地島東岸のライン0−4で視認されたシロクラベラ稚魚の個体数
     (1984〜1991年の平均)
     1、3〜5月には視認されなかったので図から除いた
図2 屋我地島東岸の海草藻場で得られたシロクラベラ稚魚の全長組成
     (1984〜1991年)
表1 名蔵湾の潜水観察ライン上でのシロクラベラ幼魚の
     視認個体数の月変化
図3 シロクラベラ幼魚の成長に伴う食性の変化(出現頻度法)

[その他]
研究課題名 :栽培漁業技術開発事業(ハマフエフキ)の関連調査、名蔵保護水面管理事業
予算区分  :国庫補助
研究期間  :平成7年度(昭和59年〜平成4年、平成6〜7年)
研究担当者 :金城清昭
発表論文  :平成5年度日本水産学会秋季大会講演要旨
             平成6年度沖縄県水産試験場事業報告
             日本水産学会誌投稿中

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