スチレン系合成樹脂(FRP用樹脂)を用いたヤコウガイの標識方法


[要約]
  スチレン系合成樹脂(FRP用樹脂)に塗料を混合したものを、ヤコウガイの殼頂部に塗布する標識方法は、標識作業効率が良く、長期間に亘り標識が残存する。また、混合する塗料の色を変えることにより、多様な標識ができる。
沖縄県水産試験場・八重山支場
[連絡先]   09808-8-2255
[専門]    栽培漁業
[対象]    ヤコウガイ
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  従来、貝類の標識方法は、貝殼に穴をあけて標識をテグス等で結んだり、印字テープを接着剤で付着させたりする方法がとられていた。これらの方法は標識装着に手間がかかるので、種苗放流の効果調査のために数千〜数万個体に標識装着をするには、簡易な方法が求められる。現在、巻貝類の標識放流で広く用いられているのは、殼頂部に着色したシアノアクリレート系接着剤を塗布する方法であるが、色の種類が少ないので、多様な群識別をするためには新たな方法を検討する必要がある。そこで、7種類の標識方法について、標識装着作業効率・標識残存率の比較検討を行った(図1、表1)。
[成果の内容・特徴]
  1. スチレン系合成樹脂を用いた標識方法は、主剤に塗料と凝固剤を混ぜた標識剤を、水気と汚れを取り除いた殻頂部に 塗布した後、貝殼が落ちない程度の目合いの網を使用した乾燥台に、殼頂部を下にして乾燥させるという簡単な方法で、この方法の標識装着作業効率は、245(個/人・時)と最も良かった(表1)。
  2. 約600日後の標識残存率は、スチレン系合成樹脂・シアノアクリレート系接着剤を用いたもので100%であった(図2)。
  3. スチレン系合成樹脂法は、混合する塗料の色を変えることにより多様な標識を作製することができる。
[成果の活用面・留意点]
  1. この方法は、ヤコウガイ以外の巻貝類にも広く使用できる。
  2. スチレン系合成樹脂は凝固剤の混合比率を変えることにより、標識する貝の干出に対する耐性・作業状況等を考慮した凝固時間の調整ができる(主剤に対し3〜5%の凝固剤で30〜60分の凝固時間)。
[具体的データ]
図1 試験を行った標識方法
表1 標識方法の作業効率
図2 標識の残存率の経時変化

[その他]
研究課題名 :地域特産種量産放流技術開発事業
予算区分  :国庫補助
研究期間  :平成7年度(平成6〜8年)
研究担当者 :渡辺利明・玉城英信
発表論文  :平成7年度地域特産種量産放流技術開発事業報告書、巻貝グループ

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