那覇−大東間の流況


[要約]
  那覇−南北大東島間定期船”だいとう”で偏流観測を実施した結果、直径200q以上の右旋渦が時折出現し、移動していく様子が認められた。この渦を含め、流況パターンは全般に東から西へ移動し、その速度は5〜10q/日程度であった。航路上で発見されたマグロ延縄漁船は、東経129°付近に多く、また北向きの流れの時に多く発見された。
沖縄県水産試験場・漁業室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    海洋環境
[対象]    マグロ類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  沖縄本島の東側の海域における海洋観測事例は少なく、海況は十分把握されていない。しかし、この海域はパヤオ漁業やマグロ延縄漁業の重要な漁場となっている。このため、西海区水産研究所との共同研究で、(株)大東海運の”だいとう”に偏流計(船首方位と対水船速、GPSによる船位変化から海流を推測する計器)で、1994年11月〜1995年9月に流況観測を行った。また、流況とマグロ延縄漁場との関係を調べた。
[成果の内容・特徴]
  1. 海が荒れてくると、偏流計に誤差が生じる傾向が認められたため、天気予報の風速予報値とこの誤差の関係を調べ、観測データの補正を行った。この結果は、同時期に実施された第11管区海上保安本部のADCP(ドップラー流向流速計)観測結果とよく一致した。
  2. 当海域に直径200q以上の右旋渦(暖水渦)が時折現れ、移動していく様子が認められた。この渦の動向が、海域の流況パターンに大きく影響していることがわかった。
  3. 那覇−大東間を7つのゾーンに分け、そのゾーン別の流況の変化を検討したところ、右旋渦を含め、左旋渦やその他の流況パターンは、全般に東から西へ移動していく傾向があり、その速度は5〜10q/日程度であった。
  4. ”だいとう”の航路上で発見されたマグロ延縄漁船は、沖縄本島の東30海里から南北大東島まで広く分布していたが、特に東経129°付近に多かった。また、那覇−大東間に定めた21のステーションの平均流向の頻度と流向別漁船発見率を比較したところ、北向きの流れの時に多く発見された。北向きの流れは、その海域が右旋渦の左側に位置しているときに多く見られた。
[成果の活用面・留意点]
  1. 沖縄本島付近の流況は潮汐の影響を受けていると思われるため、これを考慮に入れる必要がある。
  2. 右旋渦の出現周期、動向等流況変化のパターンを把握するとともに、当海域のマグロ延縄漁業の漁況、南北大東島のマグロ漁況を調べ、流況との関係を検討するのが今後の課題である。
[具体的データ]
図1 偏流観測とADCP観測結果の比較
図2 漁船位置及びゾーン別発見数、流向頻度

[その他]
研究課題名 :漁況海況予報事業
予算区分  :国庫補助
研究期間  :平成7年度(平成6〜7年)
研究担当者 :鹿熊信一郎
発表論文  :沖縄東方における流れの変動傾向について、日本海洋学会春季大会、1996.
             那覇一大東間における流況とマグロ漁場について、平成6年度沖水試事報、1996.

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