定期船によるADCP観測とそのデータ処理


[要約]
  沖縄−台湾間定期船”飛龍3”にADCP(ドップラー流向流速計)を設置し流況を観測した結果、大量の流況データが得られた。このデータを市販の表計算・図形作成ソフトを利用し、迅速に処理・図化するシステムを開発した。処理した図から宮古島北方の右旋渦、那覇一宮古間の黒潮反流が時折認められた。
沖縄県水産試験場・漁業室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    情報処理
[対象]    マグロ類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  流れとマグロ類等浮魚の漁場形成には深い関係があると言われているが、流れの広域連続観測は技術的に困難であった。近年、船舶によるADCP観測を様々な機関が始めている。ADCPは、船舶の航行中に自動的に流況・水温の観測が実施できる。このため、専用の海洋観測船でなくとも、定期船により多層の広域連続流況観測が可能である。しかしながら、数値データが多量であることから、これを迅速に処理し、図化する手法を開発する必要があった。
  今回、(株)有村産業の”飛龍3”に西海区水産研究所との共同研究でADCPを設置し、1994年5月〜1995年9月に那覇−台湾間の流況観測を行い、そのデータの処理手法を開発した。
[成果の内容・特徴]
  1. 定期船にADCPを設置することで、多層(3層)、広域(那覇−台湾間)、連続(月に25日以上)の流況観測が可能となった。
  2. 月に約20航海、2万以上の流況データが得られたが、これを概略、以下の方法で処理するシステムを開発した。
    ・1ヶ月分、約80のファイルをテキストエディターでつなぎ、標準化する(15分)。
    ・データベースソフトで3つの層別に適正値のみのファイルを作る(5分)。
    ・表計算ソフトで航海別、ステーション別の平均流況一覧表を作る(30分)。
    ・表計算ソフトで図化用マクロを作り、図形作成ソフトで航海別流況図を描く(30分)。
    ()内は1ヶ月分のデータを処理するのに必要なおよその時間
  3. 図を時系列に並べて検討した結果、宮古島北方の黒潮縁辺域の右旋渦が認められた。これは、過去に飛龍3による水温観測から存在が予測されていたものである。また、那覇一宮古間の黒潮反流のパターンが変化することがわかった。
[成果の活用面・留意点]
  1. 深い水深の海域でADCP観測を行う際は、誤差として船速が流速に取り込まれるのを防ぐため、ジャイロ方位とADCPの計算方位を正確(1°以内)に一致させる必要がある。
  2. このシステムを用い、流況の周期性等のパターンをつかみ、パヤオ漁業等の漁況との関係を調べていくことが今後の課題となる。
[具体的データ]
図1 那覇一石垣間の流況と水温(縦の点線は水温フロントの位置)
図2 黒潮反流のパターン(1994年)
図3 黒潮反流のパターン(1995年)

[その他]
研究課題名 :漁況海況予報事業
予算区分  :国庫補助
研究期間  :平成7年度(平成6〜7年)
研究担当者 :鹿熊信一郎
発表論文  :那覇一石垣間の流況、西海ブロック漁海況研報、1994.
             那覇一石垣間における流況とパヤオ漁業について、平成6年度沖水試事報、1996.

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