ヒレジャコ(中型サイズ)のケージ仕切型養殖手法


[要約]
  これまでの試験でヒレジャコ養殖上の減耗要因は、1魚による食害、2肉食性巻貝による食害、3貝と貝との接触に起因するへい死、の3点が想定された。そこで、3による減耗を防止するために、ケージに内部仕切りを設置して試験した。その結果、海底に設置した試験区では、610日間で92.5〜100%の生残率が得られた。
沖縄県水産試験場・八重山支場
[連絡先]  09808-8-2255
[専門]    養殖
[対象]    ヒレジャコ
[分類]    指導

[背景・ねらい]
  水産試験場八重山支場では、平成元年以降ネトロンネット製ケージによるヒレジャコ養殖試験を実施してきた。 従来の試験結果では、平均殻長55〜73mmで試験を開始し、試験期間が462〜666日の場合生残率は36〜58%であった。減耗要因として肉食性巻貝(シオボラ等)による食害を確認し、その他の主な減耗要因として、貝と貝との接触に起因するへい死が推察された。そこで、生残率を向上させるために、貝と貝とが接触しないよう内部仕切りで個室を設けて試験した。
[成果の内容・特徴]
  1. ケージのサイズは、縦1m、横2m、内部高さ20cm、足部高さ30cmで、骨組みをドブ漬けアングルで製作し、底面には9mm×8mm のネトロンネットを、側面、上面及び内部仕切りには33mm×29mmのネトロンネットを張り、内部を40のスペース(20cm×25cm×20cm)に仕切った。
  2. このケージを8基製作し、海底3地点(A〜C)、海面1地点(D)にそれぞれ2基づつ設置した。各ケージには平成3年6月27日に採卵し、その後陸上及び海底で養成した殻長58〜118mmのヒレジャコを各40個づつ合計320個入れた。測定、貝掃除、肉食性巻貝の除去は3〜5ヶ月に1回実施した。
  3. 生残率は設置後609〜610日で、海底に設置した試験区では92.5〜100%と非常に良く、海面に設置した区では62.5%と75.5%で海底設置区に比べ悪かった。
[成果の活用面・留意点]
  1. ケージ仕切型養殖手法は、中型サイズ(平均殻長70〜100mm)からのヒレジャコ養殖及び中間育成方法として活用できる。
  2. 小型サイズからの養殖開始では、ネトロンネットの目合いを小さくしたり、仕切り枠内の掃除等、別途留意が必要である。
  3. 台風接近時には、ケージが飛ばされる場合があるのでケージの固定が必要となる。
[具体的データ]
表1 ケージ飼育でのヒレジャコの生存率(%)
図1 ヒレジャコの成長(参考)

[その他]
研究課題名 :増殖場造成事業調査委託事業、特定地域沿岸漁場整備開発調査事業
予算区分  :国庫委託
研究期間  :平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者 :山本隆司、玉城  信、仲本光男、呉屋秀夫
発表論文  :ヒメジャコとヒレジャコの増殖技術開発試験、平成6年度沖水試事報、1996.

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