養殖マダイイリドウイルス病の早期診断と対策


[要約]
  今まで本県で報告例がないマダイのイリドウイルス病の発生を確認し、その対策法として長期間の餌止めで効果があった。特に、7月から9月頃にかけて本病の発生に注意が必要であり、早期の診断と対策で被害を最少限に抑えることが可能である。
沖縄県水産試験場・増殖室
[連絡先]   098-994-3593
[専門]     水族病理 
[対象]     マダイ等海産養殖魚
[分類]     普及

[背景・ねらい]
  マダイのイリドウイルス病は、1990年に四国のマダイ養殖場において我が国で初めて観察され、その翌年には西日本海域を中心として被害推定量500万尾以上の流行を見せ、現在マダイだけでなくブリ、カンパチ、スズキ、トラフグなど被害量・質の拡大がみられる。
  沖縄県においては、1993年に沖縄本島北部で原因不明の大量斃死が発生し、本症の発生が推測された。1994年8月中旬、沖縄本島北部マダイ養殖場で飼育中のマダイで100尾/日(40,000尾)の斃死が発生し、本疾病の病徴を観察した。この群の累積斃死率は約50%に達した。1995年沖縄本島中部のマダイ養殖場で7月上旬から2生簀で相次いでそれぞれ50尾/日の斃死が発生し、OTC等の投薬でも効果がみられなかった(図1、2)。8月上、中旬2回検査して病徴を確認し、急遽投餌を中止して約2週間の餌止めを実施し、累積斃死率は約 50%位であった。
  これらのことから今後、海産養殖魚を安定して生産するためには、本疾病に対する早期診断と有効な対策が必要と考えられた。
[成果の内容・特徴]
  1. マダイイリドウイルス病の診断は脾臓スタンプ標本のギムザ染色、またはモノクローナル抗体を用いた間接蛍光抗体法で異形肥大細胞像を観察する(図3、4)。後者が前者に比べて感度、精度ともに高く、確定診断は蛍光抗体法を用いるべきである。
  2. 診断は水産試験場で随時可能である。
  3. 沖縄県においては、7〜9月の高水温時期に本症の発生について注意が必要である。
  4. 本疾病は、早期発見と約2週間の長期餌止めによる体力消耗の防止で累積斃死率を最小限に抑制できる。 ただし、成長の遅れを生じることは致し方ない。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本疾病の特徴としては、特に顕著な外見的症状がなく餌食いも良好である。また、ダラダラとした斃死が継続し、既存の薬剤等の投薬効果が期待できないために、累積斃死率が高くなる。これらのことから早期の診断と対策が必要である。
  2. 養殖研究所が本症の対策としてワクチンの特許を申請しているが、製剤として入手可能になるまでにはしばらく時間がかかる。
[具体的データ]
図1 県内養殖場D生簀での飼育状況
図2 県内養殖場A生簀の飼育状況
図3 マダイ脾臓のスタンプ標本(ギムザ染色)
     イリドウイルス病に特異的にみられる異形肥大細胞(矢印)
図4 マダイ脾臓のスタンプ標本(蛍光抗体法)
     イリドウイルス病に特異的にみられる異形肥大細胞(矢印)

[その他]
研究課題名 :魚病対策試験
予算区分  :県単
研究期間  :平成7年度(平成6〜7年)
研究担当者 :杉山昭博
発表論文  :平成7年度沖縄県水産試験場事業報告書

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