ウニ漁場の評価と活用


[要約]
  優良なウニ漁場は、シラヒゲウニの資源量が安定し、餌料藻類も多い。漁場の活用・改善方法として、各々の漁場に対応しシラヒゲウニの放流、餌料藻類の増殖、ナガウニの除去などの事業が考えられた。
沖縄県水産試験場・増殖室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    資源管理
[対象]    シラヒゲウニ
[分類]    行政

[背景・ねらい]
  シラヒゲウニは本県の重要な磯根資源であり、県ではウニ漁業の振興に努めている。ここでは、既設のウニ礁を例に漁場の評価を行い、漁場の活用と改善対策を検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 既設ウニ礁の調査結果(表1)、ウニ漁場の価値は、シラヒゲウニの生息量と品質(身入り)に左右され、身入りが高ければ低密度海域でも漁業が行われた(浜・古宇利、知念)。
  2. シラヒゲウニとナガウニは、餌料や住み場の面で競合し、ナガウニの高密度生息域では餌料藻類が殆ど見られなくなり、シラヒゲウニは餌料不足になり成長・生殖巣発達が低下し、漁場価値が低下した(屋嘉田、伊計)。
  3. 古宇利と浜、知念のウニ礁は、シラヒゲウニの成長・生殖巣発達が良く、漁獲後調査のため生息密度は低かったが、増殖場として機能し、漁場として活用された。他のウニ礁は、シラヒゲウニの生息密度が低い、生殖巣が発達してないなど漁場機能が不十分なため活用されなかったと考えられた。
  4. 屋嘉田と伊計のウニ礁を継続調査した結果(表2)、シラヒゲウニの生息量は両ウニ礁ともに減少しているが、屋嘉田では1993年から回復傾向が伺えた。このように同じ場所でもシラヒゲウニの資源量の年変動は大きく、漁場価値も変動することが示された。
  5. シラヒゲウニは、寿命が約2年と短く、殻径6〜9cmの成ウニ(1齢・漁獲対象)と以下の若齢ウニ(0齢)の2群に大別されることから、漁場の若齢ウニの生息状況により翌年のシラヒゲウニの豊凶予測ができ、また、屋嘉田と伊計の1989〜1991年のように若齢ウニの新規加入が少ないと資源量が急激に減少することが示された。
  6. 以上のことから、優良なウニ漁場はシラヒゲウニの生息密度が高く成長・生殖巣発達が良い、成ウニと若齢ウニとも多く資源の加入が安定している。生物環境的には餌料藻類が多く、競合生物(ナガウニ)が少ないなどの漁場形成要因が示された。
  7. ウニ礁の機能向上・改善方法として、シラヒゲウニ生息密度の調節(放流、間引き)、餌料藻類の増殖と有用でないナガウニの除去などが考えられた。
[成果の活用面・留意点]
  1. ウニ漁場の価値は各漁場で差異があり、また同一漁場でも年によって変動することに留意し、漁場は事前に調査を行い計画的に活用することが望ましい。
  2. ウニ漁場の造成、開発は、事前調査を十分に行い、現場に応じてシラヒゲウニの放流、餌料藻類の増殖、ナガウニの除去等の改善対策を行う必要があり、早急にこれらの技術の改善、確立を行う必要がある。
  3. ウニ漁業の振興は、漁場造成・開発や増殖対策などと共に、ウニ生産グループや単協・関係漁協組織でのウニ漁業生産管理体制を整備強化して、ウニ資源の有効利用を図る必要がある。
[具体的データ]
表1 ウニ礁の漁場診断および評価と改善策(1989年8月調査資料)
表2 ウニ礁におけるシラヒゲウニの生息量

[その他]
研究課題名 :シラヒゲウニ増殖場の生産性向上に関する調査研究
予算区分  :県単
研究期間  :平成6年度(平成元〜5年)
研究担当者 :島袋新功
発表論文  :シラヒゲウニ増殖場の生産性向上に関する調査研究T〜X、平成元〜5年度
            沖縄県水産試験場事業報告書

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