ハマフエフキ、カンパチ種苗に発生したビブリオ病とその対策


[要約]
  ハマフエフキとカンパチの種苗生産時に、ふ化後2〜3日目頃の仔魚がピンク色になって大量斃死した。そして、細菌検査で寒天平板培地上でスウォーミングするコロニーを純粋分離した。本菌はハマフエフキ、カンパチふ化仔魚に対する病原性を確認し、各種性状検査からビブリオ属の細菌であると思われる。
沖縄県水産試験場八重山支場、水産試験場増殖室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    水族病理
[対象]    ハマフエフキ、カンパチ
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  魚類の種苗生産や養殖時には各種疾病が発生して安定した生産が困難になる。そこで、それら疾病の原因を究明して予防、治療等有効な対策を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 1987年10月から1990年6月にかけてハマフエフキ、カンパチの種苗生産時にふ化仔魚がピンク色になって斃死し、それらの個体を一般細菌用培地で培養して弱いスウォーミングする細菌を数回分離した。分離株は凍結保存し、後の病原性再現試験に用いた(表1)。
  2. ハマフエフキの浮上卵約100〜150粒をビーカーに収容し、分離した病原菌を約10個/mlになるように懸濁して恒温器(25℃)内で無給餌飼育した。そして、毎日斃死魚を計数しながら取り除いて対象区と比較検討した。その結果は表2に示すとおりで、対象区ではふ化後4化目頃から飢餓による斃死が始まるまでは比較的良い生残率で推移したが、試験区ではふ化後1〜2日目でほとんどの仔魚が斃死し,分離菌はハマフエフキ仔魚に対して病原性があると考えられた。
  3. 分離菌株の薬剤感受性試験を行って表3に示す。いずれの分離菌株もテトラサイクリン系抗生物質、クロラムフェニコール、リファンピシンなどに感受性が見られたが、ペニシリン系、アミノグルコシド系、及びマクロライド系抗生物質などには耐性であった。また、菌株によってはオキシテトラサイクリンやオキソリン酸に耐性が見られた。
  4. 分離菌株の種類を同定するため、定法にしたがって108項目の性状検査を行った。そして、ビブリオ属細菌に含まれると考えられたので、各種細菌の主要性状と比較検討して表4に示す。分離した13株間ではいくつかの性状で生物学的変異と思われる相違点が見られた。分離菌の性状とビブリオ属20種類の比較ではいずれの種類とも幾つかの点で相違が見られたが、比較的類似していたのはV. anguillarum T, V. nigriーpulchritudo, V. pelagius U, V. splendidus T, Uなどである。しかしこれらの種類とも重要な性状で違いが見られ、V. sp.(またはspp.)とするのが適当と考えられる。これらが別種類か、生物学的変異種かは今後の検討が必要である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 種苗生産時に水槽底でピンク色の斃死魚が見られたらおおよそ本疾病の発生が予想されるので、斃死魚の速やかな除去に努め、飼育初期の生物餌料投与時で斃死数が増加するようなら処分して、器具の消毒後再飼育を試みたほうが良い。
  2. 配合餌料投与時に発生した場合は、適切な抗生物質(テトラサイクリン系等)等の投与で被害を最少に抑えることができる。しかし菌株間で薬剤感受性に相違が認められるので、感受性試験を行ってから薬剤を選択した方が無難である。
  3. 投与薬剤は水産用に使用が認められているものを使用し、その際水産試験場等の指導を受ける。
  4. 本病原菌の抗血清診断液を作成すると、診断の迅速化と精度の向上が計れる。また、血清学的変異も調べることが可能になり、疫学的調査に有効である。
[具体的データ]
表1 病原性再現試験
表2 薬剤感受性試験結果

[その他]
研究課題名 :魚病対策試験、魚類防疫対策事業
予算区分  :県単(昭和62〜平成3年)、国庫補助事業(平成5年)
研究期間  :
研究担当者 :杉山昭博
発表論文  :魚病研究投稿予定

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