ホホアカクチビ(ムル−)の生物情報と資源の状況


[要約]
  ホホアカクチビの産卵期は4月から12月まで尾叉長23cm以上で成熟する。本種は雌性先熟の性転換を行う。糸満−慶良間にかけての海域における資源量と生残率は15t、50-55%程度であった。
沖縄県水産試験場・漁業室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    資源生態
[対象]    ホホアカクチビ
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  ホホアカクチビ(ムル−)は主に100m以浅に分布し、底延縄の漁獲対象として重要な魚種である。資源の状況を把握し合理的に利用することをねらいとして、200カイリ水域内漁業資源総合調査の一環として調査した。
[成果の内容・特徴]
  1. 生物情報
    ホホアカクチビの産卵期は4月から12月まで尾差長23cm以上で成熟する。成長式はL(t)=37.94・(1−exp(-0.531・(t-.0444)))で表される。標本中に得られた最高齢魚は14歳であったが実際の寿命は20年以上と想定される。本種は雌性先熟の性転換をおこなう(表−1)。1回当たりの産卵数(Bfec)と尾叉長(FL)の間には次の関係式が認められた。
    Bfec=exp(-17.61)・FL^8.462
  2. 資源の状態
    ホホアカクチビの1985年から1987年の間の沖縄島南部−慶良間海域における年間の生残率は51-56%程度で、1994年1/4半期のそれは60%程度と若干向上した。同海域における1987年の推定資源量はホホアカクチビ約15t程度となった。 1987時の資源の状態は処女資源(漁業を行う以前の資源状態)時と比較して、資源重量で30%、個体数で60%、産出卵数で50%程度であった。資源重量を処女資源時の50%程度まで回復させるには漁獲量を2t程度におさえる必要があるものと推察された。
[成果の活用面・留意点]
  沖縄の漁業をとりまく環境が1987年当時と現在は変わっており、底魚類に対する漁獲圧力は減少している。しかし1988年から1993年までの間の体長組成(年齢組成)の資料が無いため、その間の資源の変化の様子が不明である。資源状態が良い方向に向かっているのか今後の継続したモニタ−が必要である。
[具体的データ]
表−1 ホホアカクチビの生物情報
図−1 ホホアカクチビの生殖腺重量指数と成熟度の月変化
図−2 ホホアカクチビの年齢組成
表−2 ホホアカクチビの生残率等資源特性値
      (沖縄島南部−慶良間海域)
図−3 ホホアカクチビの資源の状態(処女資源時との比較)  

[その他]
研究課題名 :200カイリ水域内漁業資源総合調査
予算区分  :国庫委託
研究期間  :平成6年度(1985年−1987年、1994年)
研究担当者 :海老沢明彦
発表論文  :未定

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