回転飼育装置によるシラヒゲウニの種苗量産技術


[要約]
  回転飼育装置を使用して、シラヒゲウニの浮遊幼生飼育を行い常に幼生を浮遊状態に保つことによって生残率を高め、安定的に大量種苗生産をする技術を開発した。
沖縄県栽培漁業センター
[連絡先]  0980-47-5411
[専門]    種苗生産
[対象]    シラヒゲウニ
[分類]    普及

[背景・ねらい]
  シラヒゲウニは本県ウニ漁業唯一の対象種で、市場ではむき身1キロ当たり10,000円と高値で取引きされている。しかし、年間生産量は昭和50年の2,200トンを最高に、近年著しく減少し平成4年には126トンまで落ち込み、早急な対策が求められている。そこで、シラヒゲウニ種苗の大量放流による生産増大を図るため、種苗量産技術の確立が必要である。
[成果の内容・特徴]
  1. 従来のエアーストーン通気では浮遊幼生飼育時に大量へい死による飼育中止事例が多いため、エアーストーン通気と回転飼育装置(図1)・流水式の3方法で幼生飼育を行った。回転飼育装置では稚ウニ変態直前の幼生(以下沈着前期幼生という)の平均生残率が41.7%、平均の沈着前期幼生密度が104.6個/lと良好であった(表2)。
  2. 500l水槽と1,000l水槽に回転飼育装置を取り付け幼生飼育を行った結果、後者が平均生残率47.6%、沈着前期幼生密度150.4個/lと良好であった。1,000l水槽で平均15万個の沈着前期幼生を得ることが可能になった。両水槽とも飼育中止事例はなかった(表2)
  3. 健全な幼生を飼育するため多くの親ウニのふ化幼生を飼育に供し(表1)、初期収容密度を高く(6腕期出現まで1,000個/l)して、徐々に密度調整や分槽を行い8腕後期出現までに300〜500個/lにした。
  4. 浮遊幼生期の餌料は浮遊珪藻(Chaetoceros gracilis)を濃縮洗浄して給餌し、給餌密度は前述の幼生密度では、1,000細胞/mlから開始し8腕期出現まで5,000細胞/ml以下に止め、それ以降採苗まで10,000細胞/mlした。
  5. 幼生飼育時の換水量は日令2より20%から開始し、日令10以降40%とした。飼育水温は24〜26℃の範囲で、急激な変動は無い方がよい。
  6. 採苗は生残幼生数に占める沈着前期幼生の比率が70%以上になるのを目処に行った。平成4年度は平均殻径3.6oの稚ウニ6.8万個を生産し、沈着前期幼生に対する生残率(以下採苗率という)は平均8.3%であった。平成5年度は平均殻径3.9oの稚ウニ18.0万個を生産し、平均採苗率は10.2%であった(表3)。稚ウニは波板の付着珪藻を餌とした。
[成果の活用面・留意点]
  従来の方法に比較して安定的に種苗の大量生産ができる。シラヒゲウニは成長が早く、採卵から殻径1pサイズまでの期間が3〜4カ月と短いという利点もあるため、市町村や漁協等が種苗生産し各地先での大量放流が可能であると考える。
[具体的データ]
図1 回転飼育装置
表1 親ウニと採卵・ふ化状況(平成4〜平成5年度)
表2 シラヒゲウニ浮遊幼生飼育結果(平成4〜平成5年度)
表3 採苗と稚ウニ波板飼育結果(平成4〜平成5年度)

[その他]
研究課題名 :シラヒゲウニの種苗量産技術開発試験
予算区分  :県単
研究期間  :平成6年度(昭和63年度〜平成5年度)
研究担当者 :與那嶺盛次、玉城信
発表論文  :平成4年度沖縄県栽培漁業センター事業報告書

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