くちなぎ(イソフエフキ)の産卵生態
- [要約]
- 八重山海域におけるくちなぎの産卵生態を調査し、産卵期は3月下旬から3月上旬、産卵はリーフの外側の水深30〜40mで行われること等を明らかにした。
沖縄県水産試験場八重山支場
[連絡先] 09808-8-2255
[専門] 水産
[対象] /
[分類] 行政
- [背景・ねらい]
- イソフエフキは八重山海域では年間25トン前後水揚げされ、単一環としては浅海域で漁獲される魚種のうちでは最も多い。名蔵湾保護水面の調査対象生物としてフ工フキダイ類、アイゴ類、ブダイ類等が指定されており、イソフエフキの資源生態調査を1991年1月から1992年8月にかけて集中的に行った。その結果産卵生態が明らかになった。
- [成果の内容・特徴]
- 八重山海域から漁獲されたイソフエフキを購入して精密測定を行い、組織学的に判定した生殖巣の成熟度と漁獲された場所との関係を調べた。
- 産卵生態について
- 主産卵期は3月下旬から6月下旬の間である(図1)。
- 産卵に尾叉長20cmを過ぎた個体が行うが21cmでも未熟の個体も存在する(図2)。
産卵場について
- 成熟卵(胚胞移動期から完熟期の卵)を持った雌、及び排卵痕を持った雌はほぼ例外なくリーフ外から漁獲されている(表1)。
- リーフ内に分布している雌はリーフ外の雌よりも、体重に対して卵巣重量が一般的に重たい(図3)。
- リーフ内では性比は常に偏っているが、リーフ外では性比の変動が大きい(図4)。
- イソフエフキは集群産卵を行う魚種である。産卵場の水深は30cmから40m程度である。
- 産卵に際しては図5に示すようなリーフ内、リーフ外、及び産卵場間での移動を行うと考えられる。しかし、その移動パターン雌雄で異なり、リーフ内まで移動する雌に特異的な行動であることが示唆された。
- [成果の活用面・留意点]
- 漁業資源を合理的に利用するためには、産卵期におけるなんらかの漁場利用制限(例:禁漁期間、禁漁区域等)を今後考えていく必要がある。そのような場合にこの成果は活用できる。
- [具体的データ]
- 図1 イソフエフキの生殖腺重量指数の月変化
性殖腺重量指数:性殖腺重量/体重×100
- 図2 イソフエフキの産卵期(3月下旬〜6月上旬)
における体長と性殖腺重量指数の関係
- 表1 産卵期に漁獲されたイソフエフキ雄魚の漁場別
にみた産卵魚及び排卵痕を持った雄の出現率
- 図3 リーフ内、リーフ外から漁獲された雌の体重と
生殖腺重量の関係、成熟度が第3次卵黄球期の
生殖腺のみについての比較
- 図4 漁場別(O:リーフ内、●:リーフ外、×:リーフ内外混ざり)
サンプリングから得られた性比(雌/全体)1回のサンプリング
が9尾以上の場合についてのみ抜粋
- 図5 イソフエフキの産卵期における主分布域と移動。
円のサイズは分布量を、矢印は移動を表す。
[その他]
研究課題名 :名蔵湾保護水面管理事業
予算区分 :国庫補助
研究期間 :平成2年〜4年度
発表論文 :特になし
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