まくぶ(シロクラベラ)の成熟と産卵生態


[要約]
  県内では高級魚として知られるまくぶの成熟について調べた。主な産卵期は2月から5月の間であった。まくぶは雌性先熟の性転換を行い、雌から雄に性が転換するのに伴って体色も黄緑色から青色に変化した。
沖縄県水産試験場八重山支場
[連絡先]  09808-8-2255
[専門]    水産
[対象]    /
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  まくぶ(シロクラベラ)は電灯潜り、刺網等で漁獲され、県内では、高級魚として非常に高値で取り扱われている。しかし近年その漁獲量は減少ぎみで、早急に資源管理型漁業のための資源生態調査、及び養殖対象として種苗生産の技術開発を行う必要がある種類と考えられている。
 
[成果の内容・特徴]
  1986年4月から1990年3月までの間に沖縄島周辺海域で漁獲された合計289匹の標本を購入し、精密測定を行った。生殖腺は定法で処理し組織学的に調査した。その結果以下のことが判った。
  1. 生殖腺重量指数(GSI)は7月から11月にかけて低く、12月から増加を始め3月、4月に最も高い(図1)。雌の成熟度の月変化(図2)からも2月から5月にかけて吸水期の卵巣が多く出現していることから、まくぶの産卵期は2月から5月の間が中心と考えられた。
  2. 1尾の雌の平均産卵間隔は2月;1.4日、3月;1.2日、4月;1.0日、5月;1.3日と予測された。1回の産卵数=3.32×10-5×TL3.809(r=0.88)で表される。これは、30p、40p、50p、60pの個体でそれぞれ15,000、40,000、100,000、20,000程度の産卵数となる。
  3. 産卵時期に最小階級24-26pに雌6尾得られ、そのうち3尾は成熟していたことから、まくぶは24p前後から成熟すると考えられる。
  4. GSIが1を越えると、産卵できる卵巣に発達しているとみてよい(表1)。
  5. まくぶは雌性先熟の性転換を行うことが判った。雄は全長40p前後から出現し、65pを越えるとほぼ総てが雄になる(表2)。
  6. 性転換は体色の変化を伴い、雌の時の黄緑色の体色が雄に変わるのに伴って青色に変化する(表3)
  7. 一次雄は存在せず、雄はすべて雌から転換した雄である。
  8. 雄の精巣重量は雌と比較してあまり重く発達しないことから、産卵はペアーで行われることが予想された。
[成果の活用面・留意点]
  まくぶ資源の合理的生産休系の確立を図るうえで本調査結果は必要である。
  種苗生産の技術開発のための基礎情報として本調査緒果は活用し得る。
[具体的データ]
図1 生殖腺重量指数(GSI)の月変化
図2 卵巣の成熟度の月変化
表1 GSI階級と成熟状態の関係
表2 体長と性の関係
表3 体色と性の対応関係

[その他]
研究課題名 :沖縄周辺重要水産資源調査、サンゴ礁性重要魚類の資源生態調査、
             名蔵湾保護水面管理事業
予算区分  :国庫委託
研究期間  :昭和46年〜平成2年
発表論文  :魚類学雑誌投稿中

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