イトモズク(モズク)種苗のフリー大量培養法


[要約]
  イトモズクを高塩分、低照度の室内培養条件で前処理の後、単離した糸状体をフリー培養することにより、天候の変化に強い種苗を大量に培養できる技術を開発した。
沖縄県水産試験場・増殖室
[連絡先]  098-994-3593
[専門]    /
[対象]    水産
[分類]    普及

[背景・ねらい]
  イトモズクの平成4年度生産量は約3,000t、県外からの需要が年々高くなっているが、その生産性はやや不安定である。種苗保存法は、従来0.5〜1tパンライト水槽等を使用したオキナワモズクの種苗保存法で実施されてきたが、その成功率は地域差や個人差があり、かなり困難であるので、新しい種苗保存法の開発が望まれていた。
[成果の内容・特徴]
  1. イトモズクの室内培養条件を高塩分(50%)、低照度(1,500〜2,000lux)で前処理の後、単離した糸状体をフリー培養することができる(図1)。
  2. 室内で丸底フラスコを使用して長期培養し、さらに必要な時期に応じて大量に増殖できることを明らかにした。
  3. 藻体のあらゆる個所(同化系)を形態変化させ、それを利用して種をとることができる。この生活環の一部を利用する方法は新しい知見である。
  4. そのフリー糸状体を種苗として、野外養殖試験を沖縄島の東沿岸、西沿岸側で実施したところ、従来の方法で保存した種苗から養殖網へ採苗したの発芽率が10%以下だったのに対し、90%以上の発芽率を示した。天候の変化に強い種苗であることが分かった(図2)。
  5. イトモズクは分類学的には九州以北に生育するモズクと同じとされている。両者の発生はほとんど同じである。しかし、九州以北産モズクがホンダワラ類の先端部にのみ着生するのに対し、沖縄産モズク(イトモズク)はそれには着生せず、海草や藻などに着生するという、生態的特徴を有する。いずれ詳しい分類学的な再検討が必要になると思われる。
[成果の活用面・留意点]
  従来の方法に比べてかなり省力化され、種苗の計画的増殖が可能である。近い将来、ある拠点(機関)でフリー種苗を計画的に増殖し、それぞれの生産漁家へ種苗が配布されるようになる。急速な生産の増加が予想される。
[具体的データ]
図1 イトモズク種苗のフリー培養法
図2 沖縄島東海岸域(与那城)と西海岸域(恩納)における
     モズクの成長
図3 モズクの生活環(右田・四井、1972を一部改変)
図4 生活環の概略
図5 モズク(岡村、1936による)

[その他]
研究課題名 :海藻類養殖の研究
予算区分  :県単独事業
研究期間  :平成4年度(平成2年〜3年)
発表論文  :褐藻モズク(仮称イトモズク)の生態と種苗保存法の検討、
             平成2年度沖縄県水産試験場事業報告、
             日本藻類学会第17回春季大会講演要旨、35号、(1993)

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