発掘調査の手順

ページ番号1009683  更新日 2024年1月11日

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発掘調査事業

昔の人々が生活した住居跡や人々によって築かれた石積みなどを遺構といい、土器や陶磁器など動かせるものを遺物といいます。その遺構や遺物の情報から昔の生活を明らかにし、その成果をより良い未来を築くための指針としていくことを目的に遺跡の発掘調査は行われます。

発掘調査は、そのきっかけ(動機)から2つに分けられます。ひとつは、学術的な目的で歴史・文化を研究するための学術調査です。これは、主に大学などの研究機関が行います。

もうひとつは、行政機関が行政上の必要から発掘する場合で、これには史跡に指定された遺跡を保存・整備するための発掘、保存すべき重要遺跡の範囲確認調査、基礎情報収集のための遺跡分布調査などがあります。また、道路整備、建設工事などの諸開発工事により、どうしても遺跡を現地保存することができず、「記録保存」を目的とした発掘を行う場合もあります。これらは、当埋蔵文化財センターや、市町村の教育委員会が行っています。

発掘調査の手順

埋蔵文化財の調査には、予備調査と本調査があります。

1.予備調査

  1. 表面踏査
    現地踏査(地表面を観察しながら調査対象範囲内を移動する)などにより遺跡の所在を確認します。
  2. 試掘調査
    小範囲(概ね2~4m四方の範囲で間隔をあけて)の発掘をおこない、埋蔵文化財の有無を確認します。地下の状況を確認し、地図上に掘った部分を示していきます。実際に地下の状況を確認しながらおこなう調査であり、表面踏査よりも確実な情報が得られます。
  3. 確認調査
    試掘調査により明らかとなった埋蔵文化財の範囲をより確実に把握します。埋蔵文化財の堆積層の厚みや時期決定の資料となる出土遺物の種類・量・さらに住居跡などの遺構の状況など、埋蔵文化財の保護・開発計画との調整及び本調査のための資料を得る調査です。

2.本調査

予備調査による成果を基に行われる予定範囲内の全面調査です。

本調査では発掘予定範囲のすべてについて、埋蔵された遺構(住居跡、墓、石垣などの構築物)や遺物(土器や石器など)を区画にしたがって地層ごとに上の層から順序よく発掘していきます。この場合、遺構や遺物の状況をよく観察し、図面や写真に記録していきます。遺構は動かさずに露出させ、遺物は文化層、出土地点ごとに収納されます。

発掘を終了すると遺物は洗浄、注記、分類観察、実測、撮影などの資料整理をおこない、遺構とともに図面・写真が作成され、部類統計データが付され、解説の文章がまとめられます。最後に、これらのすべてが編集された「発掘調査報告書」が刊行されて、ひとつの本調査が完了します。

1)発掘

a.表土の除去

現在の地面より下には大昔の地表が残っています。土の様子を見ながら遺物の含まれる地層まで、重機で薄く少しずつ慎重に上の土砂を取り除きます。

写真:重機にとる表土の剥ぎ取り

b.遺構の確認

遺物の含まれている地層(遺物包含層と呼びます)を取り除き、遺構を探します。その過程で確認された遺物は遺物包含層、出土地点ごとに収納していきます。特に、遺物がたくさん出土している場所を注意深く見ていくと、土の色が変わっていることに気がつきます。

写真:発掘作業の様子

c.遺構の調査

土の色が変わっているところを移植ゴテや竹ベラで掘り下げていくと、住居の跡や柱の跡などの輪郭がきれいに出てきます。土器が押しつぶされた状態で見つかることもあり、遺構の時代を決めるカギとなります。

写真:発掘された遺跡

d.遺構の実測

掘り終わった遺構や地層は、一つ一つ慎重に写真を撮り、図面に記録していきます。通常は、人の手で遺構の大きさ・幅・深さなどを測りますが、小型ヘリコプターやコンピュータなどを使用して測量することもあります。この作業で屋外の発掘作業は終了します。

写真:実測の様子

2)資料整理

a.水洗い

掘り出した遺物は、ブラシやハケで水洗いして土を落とし、形や文様がよく見えるようにします。

b.注記

水洗いして乾燥させた遺物に、遺物一個ずつにどの遺跡か、どの遺構か、どの層位から見つかったのか情報を一つ一つ書き込んで、遺物を整理します。

写真:遺物の注記作業

c.分類

遺物は材質・かたちによって分類されます。

d.接合

昔の人が捨てた遺物は、割れたものや欠けたものが多いため、あちらこちらに散らばっています。バラバラな同じ遺物の破片同士をパズルのように組み立てて、できるだけ元の形に復元します。

写真:遺物の接合作業

e.復元

接合作業でどうしても破片が足りない部分は、石膏などで補って形がわかるようにします。

写真:遺物の復元作業

f.実測

報告書に載せる特徴的な遺物について、大きさや形、文様などを細かく観察して実測図を作成します。土器は文様の種類や付け方、粘土の積み上げ方を、石器は形や使用した痕跡、打ち欠いた順番など実物を見ないとわからない情報に注意して記録します。写真は実測機を使って図化しているところで、ほかにもいろいろな道具があります。

写真:遺物の実測作業

g.写真撮影

出土品の写真撮影をします。

写真:遺物の撮影風景

h.図版の作成・編集

図面や写真の割付をします。

i.解説文を書く

作成した資料をもとに、遺跡の概要や出土品について原稿を書いていきます。

j.報告書の刊行

発掘調査を行った遺跡の記録は調査報告書にまとめられ、この段階で、遺跡の発掘調査は終了します。報告書には遺構や遺物の出土状況と出土した遺物の分析結果、実測図・写真など調査の成果が盛り込まれます。この報告書は当センターの図書室にて閲覧することができます。また、報告書は沖縄県立図書館でも閲覧可能です。

写真:報告書

このページに関するお問い合わせ

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