![]() |
||||||
|
||||||
|
|
||||||
![]() 与那覇岳は昭和初期まで人が暮らしていた。豊富な森林資源を利用した木炭燒窯の跡を見学。 ![]() 地元・国頭村、読谷村からもサポーターが駆けつけた。エコツアーのネットワークも着々と広がりをみせている。 ![]() 背が真っ黒でお腹がオレンジ色のシリケンイモリは山の水たまりでのんびりと暮らしている。 ![]() オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギなどが観察でき、遊歩道もあるので、のんびりと散策できる。 ![]() カヌーを漕いで川を登る。川からの視線は、自然との一体感を生み、植物と山並みに自然の素晴らしさや生命力を感じさせる。 |
国立民族学博物館教授 石森 秀三 やんばるエコツアーに参加するために、大阪から空路、那覇に到着。那覇空港は新ターミナルビルをオープンさせており、日本の南の玄関口にふさわしい空港になっています。 那覇から車で一路、沖縄本島北部のやんばる地域に向かいました。私が「やんばる」という地名を初めて知ったのは、1981年のことでした。それは、ヤンバルクイナと名づけられた飛べない鳥が沖縄本島で発見された、という新聞のトップニュースを読んだ時のことでした。ヤンバルクイナはニュージーランドの国鳥であるキィウィと同じ系統の飛べない鳥ということがわかり、とても親しみを感じました。私は、30年ほど前にニュージーランドに留学していましたので、国鳥のキィウィに親しみを抱いていたからです。 国頭村(くにがみそん)のホテルに1泊した後に、やんばる自然館の森林インストラクターである上野和昌さんの案内で、沖縄本島で最高峰の与那覇岳(よなはだけ)に登ることになりました。奥間林道を歩いて登りましたが、この林道はかつて木材を運びだす道として使われました。やんばる地域は年間の降雨量が3000ミリもあるので、林道はすぐにぬかるんでしまいます。そこで、村の人々は川から石を運びあげて、道に敷きつめました。かつての村人の苦労が偲ばれる石畳の道です。 上空に米軍のヘリコプターが2機飛来した時に、突然、「キッキッキッ・・・」という甲高いヤンバルクイナの声が聞こえました。ヤンバルクイナは夜行性なので、出会えることはないと思っていましたが、偶然にもその声が聞こえたのは幸運でした。 やんばるの森は「鳥の宝庫」です。キツツキ科のノグチゲラの巣はいたるところで見かけましたし、ヤマガラやヒヨドリやカラスバトなどの鳥の歌声を聞くことができます。また、ツアーの途中では、アカヒゲという小鳥が1メートル近くまで来て歓迎してくれました。と思ったのは、勘違いで、私が鳥の巣に近づいたので警告を発しているとのことでした。 やんばるの森には、スダジイやオキナワウラジロガシの林が広がっています。亜熱帯気候で雨量が多いために、シダ植物も多く見られます。ここでは、日本本土の暖温帯に見られる植物とフィリピンやマレーシアなどの熱帯に見られる植物の両方が混在しています。カンヒサクラも満開でした。2月に桜見をしたのは、生まれて初めての経験でした。サクラツツジも 満開です。 やんばるの森は「芸術の森」でもあります。小鳥たちのシンフォニー、一枚の絵のような美しい花々、木々の枝や根のフォルム(形態)が生みだす現代美術など、芸術の要素に満ちています。やんばるエコツアーでは、自然の草花を用いて芸術作品を作る「芸術家になろう」というプログラムも好評を博しています。 今回のツアーでは、 500年前に尚円が琉球王になる前に伊是名島を追われて、逃避行を続けていた時に一夜を過ごしたといわれる場所も訪れました。さらに、80年ほど前に人が住んでいたといわれる遺跡や炭焼き跡など も見学しました。 標高 503メートルの与那覇岳の山頂に向かう山道を登っていく時には、ハブに気をつけるように何度も注意されました。ヒメハブやアカマタなどに襲われないように足下に注意しながら登って行きました。結局、ハブには一度も出会いませんでしたが、そのような緊張感がエコツアーの気分を高めます。 与那覇岳の山頂から垣間見た「やんばるの森」は、まさにブロッコリーが密集したような森でした。ツアーに参加するまでは、もっと人里離れた原生林を想像していましたが、意外に人が容易に入れる森であるにもかかわらず、多様な動植物に恵まれていることに驚きました。昔から人間の手が加わっていながら、生物多様性(biodiversity)が確保されている「やんばるの森」は世界自然遺産に値する地域であるということを実感できました。 ついで、東村を訪れました。ここでは、エコツーリズム協会会長の中根忍さんの案内で、慶佐次(げさし)集落を訪れました。集落の入口では、ムラシーサーが迎えてくれました。これは、山から来る魔物を防ぐ役割を果たす村の守護神です。集落を流れる慶佐次川は河口が湾になっており、沖縄本島では最大規模のマングローブ林が広がっています。このマングローブ林は、 1972年に国の天然記念物に指定されています。 早速、カヌーに乗って、川をさかのぼります。上流に進むにつれて、岸辺の植物がメヒルギからヤエヤマヒルギ、オヒルギへと変化していきます。河口近くの干潟では、ミナミトビハゼやシオマネキなどが観察できます。この河口の豊かなマングローブ林は、数多くの生き物を育んでいます。中根さんの話では、集落の人々はこの河口で魚やカニやエビを取ったり、マングローブの幹を取ってきて、ゴーヤー(にがうり)やヘチマを育てる棚を作るそうです。 神戸に住む私は、マングローブのことを何も知りませんでしたが、今回のツアーでマングローブが多くの生き物を育んでおり、地域の人々にも多くの恵みを与えていることを理解できました。慶佐次におけるエコツアーは環境教育という面でも、重要な役割を果たしています。 |
|||||
|
||||||||||||