沖縄の文化や歴史をユニークな視点でお届けする新シリーズがスタートします。
前回は世界遺産登録に向けその評価が高 まっている沖縄の『城』(ぐすく)に焦点を当ててきましたが、今シリ ーズでは沖縄の独特な風土や歴史の中で培われてきた染め織り 物や陶器などに代表される「沖縄の色と形」をご紹介します。
シリーズの内容は、
●第1回:沖縄の染め織り/沖縄本島編。
●第2回:沖縄の染め織り/離島編
●第3回:沖縄の器/陶器編
●第4回:沖縄の器/漆器・ガラス編
を予定しています。
ぜひ、沖縄独自の色彩とその形をお楽しみいただきたいと思います。


 ウルシの木の樹液を用いて加工・塗装する漆工芸は、日本・中国・韓国・東南アジアなどで発達し、なかでも日本の漆工芸は有名である。いったん乾いたウルシは、接着力が強く、また防腐・防湿性が高いことから、木材や竹、紙など各種の素地に用いられてきた。




 沖縄での漆工芸の起源は不明だが、1427年に中国・明の宣宗が琉球に生漆を買いに使いを派遣した、という記録がある。また、15世紀に造られた王家ゆかりの木棺には朱塗りに巴字金紋が施されていたことがわかっている。その後、琉球王府は中国皇帝への贈り物や交易品として、また日本の将軍家や諸大名家への献上品として、琉球漆器の製作に力を入れるようになった。いつごろ設置されたのか不明だが、貝摺(かいずり)奉行と称する、漆関係の職人を管理する役所を設置している。貝摺奉行では、一つの作品が完成するまでに数年を要するような、念入りな製作が行われていたという。「貝摺」とは螺鈿(らでん)細工のことである。薄く研磨した夜光貝やアワビ貝を文様に切り取り、漆器に貼りつける技法で、当時特に珍重された。螺鈿の他、琉球漆器の代表的な技法に沈金(ちんきん)、堆錦(ついきん)、箔絵(はくえ)などがある。
 
螺鈿料紙箱細工(らでんりょうしばこさいく)


 沈金は、漆を塗った器物に刀で文様を彫り、金箔を埋め込む技法である。朱塗りに沈金を施した作品の美しさは、螺鈿とともに琉球王朝文化の華と呼ぶにふさわしい。

沈金棗(ちんきんなつめ)


 堆錦は、中国の堆朱(ついしゅ)の技法にヒントを得たとされる、沖縄独特の技法である。漆に顔料を混ぜて粘土状にした後、薄く延ばし、文様に切り取り、漆器に貼りつけたもので、堅 牢であること、また量産ができることから、現代ではもっともポピュラーな技法となっている。

堆錦東道盆(ついきんとんだーぼん)


 琉球漆器の特色は、朱塗り、堆錦、螺鈿にあると言われるが、そのいずれも沖縄の気候・風 土と深い関わりがある。漆の乾燥には「湿度80%以上、温度20度以上」が最適とされ、沖 縄は理想的な自然条件にある。さらに強い紫外線が朱の顔料を鮮やかに際立たせるのに一役買 っている。明治以降、下地に豚の血を塗っていた時期があり、朱塗りの鮮やかさの根拠とされ たが、豚血下地と朱塗りの鮮やかさは無関係である。堆錦の技法においても自然条件が大きく 作用し、他地域ではよい堆錦は生まれないとされる。また、螺鈿においても、沖縄では貝を貼 りつけるのに接着剤を用いる必要がなく、より繊細な細工が可能になる。現在、琉球漆器の逸品は、漆芸専門館の浦添市美術館、首里城内、沖縄県立博物館などで見ることができる。






 琉球ガラスの歴史は沖縄の工芸の中でもっとも浅く、明治時代に始まった。太平洋戦争前までは主に実用品としてランプのほやや投薬瓶などが作られていた。工芸品として脚光を浴びる ようになったのは戦後のことである。沖縄を占領した米軍により大量の瓶詰の清涼飲料水が持ち込まれ、人々はその空き瓶を切断してコップを作った。やがて、空き瓶を融かしてガラス種 を作り、それを巻き取って吹く技法により、さまざまな日用雑器が生まれた。空き瓶を利用するため不純物が混ざり、気泡が入り、ぼってりと厚いガラスとなったがその手作りの味わいを 最初に認めたのは、清涼飲料水を持ち込んだ当のアメリカ人たちであった。復帰後は観光みやげ品として人気を呼び、現在では暮らしの中に生きる身近なガラス工芸として定着している。
 

照明器具

花器

泡大皿
     
 近年は空き瓶を利用する以外に、従来のガラスの原材料を仕入れて、技術的、デザイン的にも洗練されたガラス工芸品づくりもおこなわれている。
 
●シリーズ沖縄の色と形:染めと織り〈沖縄本島編〉
●シリーズ沖縄の色と形:染めと織り〈離島編〉
●シリーズ沖縄の色と形:沖縄の陶器

沖縄の文化や歴史をユニークな視点で紹介する連載企画のバックナンバーです。
世界遺産登録に向けて、その歴史的価値が改めて話題になっている沖縄の城(ぐすく)や史跡を紹介しています。

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