イリオモテボタル(絶滅危惧種)
code l-01125
和名 イリオモテボタル
分類 コウチュウ目 イリオモテボタル科
学名 Rhagophthalmus ohbai Wittmer, 1994
方言名 なし
カテゴリー 絶滅危惧種
環境庁版
カテゴリー
該当なし
特性 形態: 雄は体長10mm前後、雌は10〜20mm。雄の頭部及び前胸背板は黒色で、上翅は暗褐色。全身に粗い点刻とやや長い褐色の毛を有する。触角は黒褐色で先端に行くにつれ褐色となる。複眼は巨大で頭部の3分の2以上を占める。上翅にはやや斜めに走る2〜3本の隆条を有し外側のものはしばしば不明瞭となる。雌は幼虫形で円筒形をしており無翅。体色は淡黄色で暗色のまだら模様がある。頭部と複眼は非常に小さいが、複眼は完全である。腹部は8節で、各体節側面および第7節の腹面に淡黄色の発光器を有し、腹部末端には長い産卵管がある。

近似種との区別: 中国に分布する近縁種 (R. scutellatus Motschulsky) とは、雄の交尾器の中央の突出した部分が側方に角張っておらず、より貧弱であることによって区別できる。

分布の概要: 石垣島と西表島の固有種。現在、石垣島と西表島の数カ所で生息が確認されているだけであるが、分布状況についてはさらに詳細な調査を必要とする。

近縁の種及び群との分布状況の比較: 国内には近縁種は分布しておらず、同属の近縁種は中国からミャンマーにかけて分布する。

生態的特性: 本種は集落周辺の石垣や土手などに生息しており、人里環境に適応した種である。成虫は12月中旬から1月上旬にかけて出現する。雄は発光せず、雌が尾端にある発光器を持ち上げ蝋燭のように発光し雄を誘引する。雄が飛来するのは、日没後15〜30分間ほどの非常に短い時間に限られ、飛来する個体数も少ない。雌は産卵後、土中で卵塊を保護するが、このときは雄の誘引に用いる尾端の発光器に代わり、各体節側面にある発光器を発光させる。幼虫はヤスデ類を餌としているが、生活史などの詳しい生態については不明。

生息地の条件: 村落周辺の古い石垣や、畑地や林縁部の土手などが主な生息場所となっている。また、雄は雌が発する光をたよりに交尾相手を探索するため、生息場所周辺に外灯などの光源がないことも必要である。

生息状況: これまでのところ、石垣島と西表島に数カ所の生息地が確認されているだけで、各生息地とも個体数は非常に少ない。

学術的意義・評価: 国内には他に同じ科に属する種はいないことから、国外に生息する近縁種の生態や分布状況との比較により、イリオモテボタル科に属するホタル類の系統進化や琉球列島の地史などを考察する上で貴重な種である。石垣島及び西表島固有種。

生存に対する脅威: 生息地が極端に限られており個体数も少ないため、宅地造成や農地改良による生息場所の破壊のほか、古い石垣の改修や除草剤散布などの軽微な環境変化でも絶滅する可能性がある。また、外灯などによる配偶行動の撹乱も本種の繁殖に大きな影響を与えているものと思われる。

特記事項: 1986年に発見され1994年に新種として記載された。本種が含まれる科 (Rhagophthalmidae) および属 (Rhagophthalmus) は、これまで国内では記録がなかったため記載にともないイリオモテボタル科、イリオモテボタル属という科名および属名が与えられた。

原記載: Wittmer W. und Ohba N., 1994. Neue Rhagophthalmidae (Coleoptera) aus China und benach-barten Landerm. Jpn. J. Ent., 62(2): 341-355.

参考文献: 大場信義, 1986. ホタルのコミュニケーション, p.235, 東海大学出版会, 東京.
大場信義, 1995. イリオモテボタルの幼虫はどのようにヤスデを捕食するか. 日本動物行動学会 第14回大会 発表要旨集 :27.