カンムリワシ(絶滅危惧種)
ラハオシダ(危急種)
沖縄県の自然環境の概要 現在のページ
レッドデータブック
沖縄県版レッドデータブックの作成
今後の取り組み
検討委員会・ワーキンググループ一覧


沖縄県の自然環境の概要

●位 置
 

 沖縄県は、日本列島の南西部に位置する南西諸島に含まれる。南西諸島は、北及び東は種子島から奄美大島、沖縄島、宮古島、石垣島、西表島を経て南は波照間島、西は与那国島まで連なる琉球列島と、大東諸島及び尖閣諸島からなる。このうち、沖縄県は琉球列島の南半分を占める琉球諸島と、大東諸島及び尖閣諸島で構成されている。
 沖縄県の広さをみると、北は硫黄鳥島から南は波照間島まで約 400km、東は北大東島から西は与那国島まで約 1,000kmもあり、南西諸島の南半分を占める島嶼県である。
 沖縄県は160島(0.01平方km以上) からなる。これらの島々は、北に沖縄島を主島する沖縄諸島(116島)、南には宮古島を主島とする宮古諸島(12島) と石垣島を主島とする八重山諸島(32島) からなる先島諸島(44島) とに区分される。
 総面積は約 2,265.2平方kmで、島々の大きさで比べると、一番大きいのが沖縄島で、県全体の約53%を占め、次に西表島、石垣島、宮古島、久米島の順となる。これら5つの島で県全体の約85%を占めている (沖縄県土地対策課、1995)。


●気 候

 沖縄県は、琉球諸島の西側海域を北流する黒潮の影響をうけて、温暖で四季の寒暖差も小さな気候を示している。
 気温は月平均でみると、4〜12月は20℃以下の月がなく、最寒月の2月でも16℃であり、10℃以下になることはきわめて希である。年平均気温 (1961〜1990年) は、名護で21.6℃、那覇で22.4℃、宮古で23.1℃、石垣で23.8℃と南にいくほど高くなっている。
 季節風が強く発達する東アジア季節風帯に属しているため、風は、北東方向と南東方向からの風向に大別される。例年10月頃になると、ミーニシ(新北風) と呼ばれる北東からの風が吹き、3月まで続く。1〜2月頃が風速が最も強く、月平均で5m/s前後となる。4月頃からは南東からの風が吹き9月頃まで続く。
 降水量は、夏季の台風に伴う大雨の影響もあり年間で約 2,000mmを超え、他府県に比べて多い(日本気象協会、1995)。


●地形・地質
 

 沖縄県の島々は、琉球海溝と沖縄舟状海盆 (沖縄トラフ) とに挟まれる海底山脈上の高まり(地背斜部)に形成されている。その一般的な特徴は、九州からトカラ列島を経て久米島まで連なる火山性の島々と、九州・種子島から奄美諸島・沖縄諸島を経て与那国島まで連なる非火山の島々が2列に並んでいることである。この2列に並んだ島々は、太平洋側に大きな弓形 (弧) 状に張り出しているため、これらを 「弧状列島(島弧)」 と呼んでいる。この並んだ弧の火山列島側 (大陸側) を内弧、非火山列島側 (太平洋側) を外弧と呼んでいる。
 地質は琉球列島の成因に関連して、大陸側から古生代、中生代、新生代古第三紀と地質が新しくなる帯状の配列構造を示し西日本外帯と類似しているが、先島諸島ではそれが不明瞭になっている。
 この琉球列島の帯状構造は、トカラ海峡と沖縄島西海域にある宮古凹地 (慶良間海裂) を境にして北・中・南琉球に3区分される。この区分は生物地理学的境界線として認知される場合が多く、自然区分としても有効である。
 島々の地形をみてみると、山地である 「高島 (こうとう)」 と、高度が低く段丘・丘陵・低地で占められる 「低島 (ていとう)」 に大別できる。高島は内弧の火山や、古生代から新生代古第三紀の古い地質の島で、これに対し低島は新第三紀の島尻層群泥岩類とそれを覆う第四紀琉球石灰岩の新しい地質の島である。高島の代表としては久米島・石垣島・西表島など、低島としては宮古諸島・黒島・波照間島などが挙げられる。なお、沖縄島は北部が高島タイプ、中南部が低島タイプで読谷村残波岬から石川市地帯で接合している。この地質的な差異のため、高島の土壌は酸性の赤黄色土 (国頭マージ) になるのに対し、低島では一般に中性から弱アルカリ性の石灰岩土壌 (島尻マージ) と泥岩未熟土壌 (ジャーガル) が主体となっている。水文環境は、高島が河川水であるのに対し、低島が地下水を中心としており、地形・地質的な相違は水文条件にも影響を与えている。
 以上のように沖縄県は、黒潮・季節風・台風の影響をうけ温暖多雨で氷雪をみることがない亜熱帯の気候を示している。地理的には海に囲まれた島々で閉鎖的な環境を基本的な特徴としている。これらの自然環境は植物・動物相にも影響を及ぼし、これらを他府県とは大きく違ったものにしている。


●沖縄の生物相

 沖縄県の動植物相は、熱帯から温帯にかけてのものが主体となっている。植物相をみると、琉球列島に自生する維管束植物は約 1,600種である。日本本土の植物相と比較すると、10平方km当たりの種数で琉球列島が 4.5に対し日本本土が 0.1となる。単位面積当たりで琉球列島は日本本土の45倍も種数が多くなっており、琉球列島の植物相は、種数が豊富であるといえる (島袋、1984)。また、各分類群の構成種を比較すると、琉球列島はシダ植物の占める割合が大きく、一方、裸子植物の種数がきわめて少ない。これはこの地域が亜熱帯気候にあることと関係している。
 植生地理学的には、琉球列島は熱帯と温帯の植生の移行部に位置し、きわめて特異な地域である。前川 (1977) は、日本を9つの植物区系に区分し、奄美大島以南の琉球列島を琉球地域とした。琉球地域の植物相は本質的には古いヒマラヤ−シナ日本植物区へ熱帯系の植物が侵入したものとしている。
 一方、動物相をみると、琉球列島は区系動物地理学上、東洋区に区分される。東洋区とは中国南部・インド・インドシナ・フィリピンなど南アジアを含む広大な地域であり、琉球列島に生息する動物の近縁種が、これらの地域に生息していることが多い。沖縄の動物相は日本本土にみられない南方系で暖地性のものも主体としているのである。
 また、琉球列島には固有種・固有亜種が多い。これらのなかには琉球列島が大陸と陸続きの頃に移動してきたものが、琉球列島の成立の中で島に取り残された遺存種が多くみられ、近隣地方に近縁な種がいなかったり、近縁種に比較してより原始的な形質をもつものがみられる。
 琉球列島の生物は、列島形成などの地史に関係し、海洋によって限られ隔離された島嶼環境と亜熱帯・海洋性気候という環境条件の影響を受け、生物地理学的にも貴重な生物が生育・生息し、多種多様な生物相を創り出している。
 しかしながら近年、南西諸島の自然環境は、開発事業に伴って起こる土地改変による生育・生息地の縮小・分断、帰化植物・移入動物の定着やマニア等の採取行為よる撹乱等で、急速に破壊されようとしている。
 島嶼という閉鎖的で面積の限られた場所での開発は、大きな面積をもつ九州や本州に比べて、個々の生物や生態系へのインパクトの程度が極めて大きく、その影響は計り知れない。生物種が地球上の有限な自然を生存基盤としていることを考え合わせると、南西諸島の自然生態系の保全、動・植物の保護及びその遺伝的多様性の保存を図ることが重要な課題となってきている。


<参考文献>
   
 

初島住彦, 1981. 植物相の由来. 木崎甲子郎(編) 琉球列島の自然史, p.113-123. 築地書館, 東京.
池原貞雄, 1981. 東洋のガラパゴス. 木崎甲子郎(編) 琉球列島の自然史, p.86-98. 築地書館, 東京.
池原貞雄, 1984. 動物. 全国大会記念誌 沖縄の生物, p.33-37. 沖縄生物教育研究会, 那覇.
伊佐次郎, 1984. 海洋と気象. 全国大会記念誌 沖縄の生物, p.11-13. 沖縄生物教育研究会, 那覇.
角川日本地名大事典編纂委員会(編), 1985. 総説. 角川日本地名大事典 沖縄県, p.27- 34. 角川書店, 東京.
神谷厚昭, 1984. 沖縄の地形地質. 全国大会記念誌 沖縄の生物, p.1-9. 沖縄生物教育研究会. 那覇.
河名俊男, 1988. 琉球列島の地形. シリーズ沖縄の自然(3), p.111-120. 新星図書, 那覇.
河名俊男・森脇広・米倉伸之, 1991.
 地形・地質調査. 南西諸島における種の保存に不可欠な諸条件に関する研究報告書, p.19-26. 環境庁, 東京.
木崎甲子郎編, 1985. 琉球弧の地質誌, p.11-18. 沖縄タイムス社, 那覇.
日本気象協会沖縄支部(編), 1995. 沖縄の気象暦, p.101-108. (財)日本気象協会沖縄支部編, 那覇.
前川文夫, 1977. 日本の植物区系, 178p. 玉川大学出版会, 東京.
目崎茂和, 1980. 木崎甲子郎(編)
 琉球列島における島の地形的分類とその帯状分布. 琉球列島の地学質研究, 5:91-101. 琉球大学.
目崎茂和, 1981. 島の地形. 木崎甲子郎(編) 琉球列島の自然史, p.40-59. 築地書館, 東京.
宮脇 昭(編), 1989. 日本植生誌 沖縄・小笠原, p.54-73. 至文堂, 東京.
沖縄県企画開発部, 1995. 離島関係資料, p.1-9. 沖縄県, 那覇.
沖縄県企画開発部, 1995. 沖縄県勢のあらまし, p.1-7. 沖縄県, 那覇.
島袋敬一, 1984. 植物. 全国大会記念誌 沖縄の生物, p.23-32. 沖縄生物教育研究会, 那覇.
島袋敬一・新城和治・横田昌嗣, 1991.
 南西諸島の植物相. 南西諸島における種の保存に不可欠な諸条件に関する研究報告書, p.39-46. 環境庁,東京.
我が国における保護上重要な植物及び群落に関する研究委員会(編), 1988.
 我が国における保護上重要な植物種の現状, (財)日本自然保護協会. (財)世界自然保護協会日本委員会, 東京.



レッドデータブック レッドデータブック