(9)名護
八重岳は沖縄島で4番目に高く、嘉津宇岳、安和岳とは峰続きであり、この一帯は県から天然記念物の指定を受けている(「嘉津宇岳安和岳八重岳自然保護区」)。このうち、嘉津宇岳と安和岳の中腹部から山頂にかけては、石灰岩地特有の地形をしており、その地形に成林したイスノキを主構成種に持つ群落がある。この群落は、古生層石灰岩地域の天然林として貴重であるとともに、植物地理学上貴重な植物も分布している(「嘉津宇岳・安和岳の古生層石灰岩地植生」)。「宮里前の御嶽のハスノハギリ林」は、県の天然記念物に指定されており、宮里集落の道路沿いに面し、その背後は砂浜であったが、埋め立てられ運動公園になっている。約1,262坪の面積に、ハスノハギリが太いもので胸高直径2mに及ぶ純林を形成しており、このハスノハギリ林は樹高及び幹の太いことでは沖縄島で最大のものである。「本部町渡久地点御願の御嶽林」は、石灰岩段丘上に位置する森林で、古くから町民に拝所として保護されてきた所であり、古生層石灰岩の自然林が生育している。
八重岳、嘉津宇岳、安和岳などのピラミット状の孤立峰は、古期石灰岩からなるカルスト地形であり、峰の頂部は円錐丘を形づくっている。本部町の渡久地港に注ぐ満名川の河口部は、三角江(エスチュアリー)である。名護市屋部の集落は3列の堤州(砂州)の上に立地しており、海側の堤州の先端からは砂嘴が南東へ伸びている。塩川集落の小川はスーガーと呼ばれる海水で、海から数百メートル内陸の岩下から湧き出ている、外国にもあまり例がない珍しい川であり、国の天然記念物の指定を受けている(「塩川」)。川の中には、海産のエビ・カニ・魚が生息し、海産性のシオカワモッカ・アミアオサ・ホソアヤギヌなどが生息している。この内、シオカワモッカは国内ではここだけしかないと言われており、「塩川のカワツルモ」は塩川の流水中に生育する汽水性の植物群落である。
その他、天然記念物として「東江の御嶽とミフクラギ」・「屋部小学校のデイゴ」・「済井出のアコウ」(名護市指定)がある。
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(10)仲尾次
呉我礫層は、本部半島の付け根の部分に分布し、固結度の弱い礫層で、千枚岩・結晶片岩の礫を主とする、層厚約70mの礫層である。礫は大きなもので直径30cmもあるが、多くは15cmほどの円礫である。羽地内海はリアス式海岸であり、大保川が流入している大宜味村の塩屋湾もリアス式海岸である。大宜味村津波から宮城島に伸びたトンボロ状のビーチロックがある。ビーチロックは通常、海岸に沿って現在の汀線付近にできるものであるから、このビーチロックの分布と形状は極めて特異である。
その他、天然記念物として「名護のひんぷんがじまる」(県指定)・「屋我地小学校のアコウ」・「大湿帯のオキナワウラジロガシ」(名護市指定)がある。戻る
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