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THI調査(東大式自記健康調査)

●12尺度得点の解析
 

 航空機騒音が嘉手納・普天間飛行場周辺に居住する住民の健康に及ぼす影響について調査を行った。調査票には,身体症状,精神心理的傾向,保健習慣・行動などに関する130項目の質問で構成されている質問紙健康調査票THI(tbe Tbdai Health Index)を用いた。本報では,THI調査によって得られる12尺度得点(<多愁訴>,<呼吸器>,<目と皮膚>,<口腔と肛門>,<消化器>,<直情径行性>,<虚構性>,<情緒不安定>,<抑うつ性>,<攻撃性>,<神経質>,<生活不規則性>)について,航空機騒音曝露との関連について分析した。
 航空機騒音曝露群については,WECPNLに基づき,75未満,75〜80,80〜85,85〜90,90〜95,95以上の6群に層化し,各層ごとに,住民基本台帳から無作為に抽出された7,053名に調査票を配布した。航空機騒音非曝露群(対照群)としては,航空機騒音への曝露がほとんどない沖縄本島南部の島尻郡から抽出した1,031名に調査票を配布した。1991年に北谷町で行われたTHI調査の有効回答615を加えた有効回答数は,曝露群6,247,対照群848であり,合計7,095名の回答について分析を行った。
 WECPNL,性別,年齢,職業,性別と年齢の交互作用を説明変数として,多重ロジスティック分析を行った結果,<多愁訴>,<呼吸器>,<消化器>,<情緒不安定>,<神経質>の5尺度において,WECPNLとの間に量反応関係も含めた高度な有意性が認められた。<多愁訴>に関しては,尺度得点が39以上となる高得点者のオッズ比は,WECPNLが90以上の2群において統計学的に有意であった。<神経質>では,WECPNLが90以上の2群だけでなく,騒音曝露レベルが比較的低いWECPNLが90未満の4群においてもオッズ比の有意な上昇が認められた。<情緒不安定>に関しては,尺度得点が30以上となる高得点者のオッズ比はWECPNL95以上の群では,2以上の値となった。以上の結果から,嘉手納飛行場周辺に居住する住民は,戦闘機などの航空機騒音への曝露によって,身体的にも精神的にも影響・被害を受けていること,また,その影響は騒音曝露レベル(WECPNL)が高くなるにつれて大きくなることが示唆された。


●判別値と因子得点の解析
 

 THI調査の回答を判別値と因子得点を用いて解析した。解析に用いることのできる回答は,曝露群が5,541通,対照群が760通である。因子分析は,主因子法,オブリミン回転によって行った。判別植ならびに因子得点を外的規準とし,説明変数に年齢,性別,職業,年齢と性別の交互作用を用いて,多重ロジスティック分析を行った。分析の結果,WECPNLで表した騒音曝露量が増大するにつれて心身症傾向の判別値に関するオッズ比が増加し,非常に明瞭な量反応関係が認められ,またその関係が有意であることが知られた。飛行場のごく近傍に位置するWECPNL95以上の地域に居住する回答者のオッズ比は2.0を上回っていた。神経症傾向のオッズ比もWECPNL95以上の地域において有意に高かった。
 12尺度得点を因子分析して抽出した2因子を著者らは「身体的因子」と「精神的因子」と称する。対照群の90パーセンタイルの回答者が示す因子得点を多重ロジスティック分析を行うときの閾値とした。分析の結果,身体的因子のオッズ比はWECPNL75といった比較的低騒音曝露地域から増加し始め,WECPNLの増大とともに値が大きくなる。量反応関係は高度に有意であった。精神的因子のオッズ比については量反応関係は身体的因子ほど著明ではないが,増加傾向の検定を行うと有意水準5%で増加傾向が有意であった。WECPNL95以上の地域に居住する回答者のオッズ比はどちらの因子についても2.0をこえていた。



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