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子どもへの影響

●幼児問題行動

 嘉手納・普天間飛行場周辺の保育園や幼稚園において,幼児達の問題行動に関する質問紙調査が実施された。その地区はWECPNLの値によって75群,80群,85以上群の3つに分けられた。調査対象は3歳から6歳までの男女で,彼らの両親並びに保母または幼稚園教諭が質問に回答した。有効回答数は騒音曝露群が1,580名(嘉手納飛行場周辺915名,普天間飛行場周辺665名),対照群が308名であった。
 得られた回答は<生物的機能関係>,<社会的基準関係>,<身体体質的関係>,<運動習癖関係>,<性格関係>,<全問題行動>,<対騒音反応保有数>,<保育領域・TV等>の各関係項目別問題行動保有数を従属変数とし,<曝露量>,<年齢>,<性別>,<同居家族数>,<出生順位>,<出生時母親年齢>,<父親の仕事>,<母親の仕事>を説明変数として,多重ロジスティック分析によって分析された。その結果,<全問題行動>,<身体体質的関係>,<性格関係>,<対騒音反応保有数>の各項目でオッズ比の対数値とWECPNLとの間に直線的な関係があることが認められた。
 クラスター分析によって得られた17クラスターの尺度得点を従属変数とし,上記と同じ説明変数を用いて多重ロジスティック分析を行った。その結果,嘉手納飛行場周辺では<感冒症状>,<頭痛・腹痛>,<食事課題>,<消極的傾向>,<情緒不安定>の各クラスターで,一方,普天間飛行場周辺では<感冒症状>,<食事課題>,<消極的傾向>の各クラスターでオッズ比の対数値とWECPNLとの間に直線的な関係があることが認められた。端的に言えば,航空機騒音に曝露されている幼児達は,風邪をひきやすくて,食欲が乏しく,友達づくりに手間取る傾向がある,と解される。総括すると,航空機騒音は身体的にも精神的にも幼児達の問題行動を増加させる要因になっていると言うことができるであろう。


●学童の記憶力
 

 学習能力は先天的な要因に加えて,後天的な要因つまり社会環境や学校環境などの生活環境によってもその発達や向上がおおいに影響を受ける。嘉手納飛行場並びに普天間飛行場の航空機騒音に曝露されている地域で生活している学童達については,従来から学習能力に航空機騒音が影響を及ぼしているのではないかとの危惧が指摘されていたので,上記地区を対象に学童の記憶力テストを実施した。
 テストは,航空機騒音曝露地区と非曝露地区の11校の3年生と5年生計2,269名を対象に実施した。テストは,短期記憶と長期記憶を主とし,教室の音響状態を反映する聞き取りテスト,学習意欲テストを並行して行った。テストの結果を多重ロジスティツク分析した。分析にあたっては,航空機騒音曝露量,学年,性別,習い事の数,聞き取りテストの成績,学習意欲テストの成績を説明変数とした。上記検討の結果,航空機騒音曝露量と短期記憶のオッズ比との間には統計的に有意な関連が認められなかったが,記銘したある物事を長期間保持しつづける長期記憶のオッズ比と航空機騒音曝露量との間には有意な関連が認められた。


●低出生体重児出生率

 沖縄県における20年間(1974年〜1993年)の人口動態調査出生票357,845件を用いて飛行場周辺ならびに県内他地域の出生体重を統計的に解析した。解析においては,出生票に含まれる項目から,性別,母親の年齢,出生順位,世帯の主な仕事,嫡出か否か,出生年次を説明変数に加えて,多重ロジスティック分析を行った。また,嘉手納飛行場周辺では航空機騒音が低出生体重児出生率に影響を及ぼしている可能性があるので,航空機騒音曝露量として各市町村ごとの人口加重平均WECPNLを求め,飛行場周辺の市町村を4群に分類して説明変数とした。
 分析の結果,騒音曝露量と低出生体重児(2,500g未満)の出生率との間に有意な量反応関係が検出された。最も曝露量の高い嘉手納町においては,対照群とのオッズ比は1.3であり,比較的低曝露の5市町村においても,対照群との間に有意な差が認められた。また,2,000g未満の低体重児についても同様な結果が得られた。さらに,早産児の出生率についても同様な分析を行った結果,早産児出生率と騒音曝露量との間にも有意な量反応関係が得られた。嘉手納町におけるオッズ比は約1.3であり,比較的低曝露の5市町村においても,対照群との間に有意な差が認められた。
 低出生体重児出生率および早産児出生率の経年変化を調べたところ,1984年以降,対照群との差が小さくなる傾向が認められた。これには,嘉手納町における騒音曝露量の変化や,町内における住民の人口動態などが関係していると考えられる。また,嘉手納町役場における騒音測定値の経年変化を利用して,嘉手納町のみのデータから低出生体重児出生率の量反応関係を推定した結果,WECPNLで70付近に量反応関係の閾値がある可能性が示唆された。
 基地が存在すること自体で与えるかもしれない影響,喫煙の影響について検討を加えたが,これらの要因では嘉手納町でのオッズ比を説明することは困難であると考えられた。また,他の要因についても,群全体でのオッズ比を1.3にまで押し上げるような可能性は低いと考えられる。



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