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住民健康診断

 平成6,7年度に実施された老人保健法に基づく住民検診デー夕を利用して,各検査値とWECPNLとの関連について,検討を加えた。最高・最低血圧(28,781件),赤血球数(28,692件),白血球数(13,404件),尿酸濃度(8,449件)について,多重ロジスティツク分析によりWECPNLとの関連を解析した給果,次のような結論が導かれた。
 最高・最低血圧が年齢世代別に定めたしきい値を超える比率に関して,WECPNLとの間に額著な量反応関係が認められた。WECPNLが85以上の群では,WECPNL75未満の群と比較して,各年齢世代ごとの90パーセンタイルを超えるオッズ比が1.3程度の値になっており,このしきい値を超える比率が30%近く増加していることが分かった。また,WECPNLが75〜80の低曝露群においても,WECPNL75未満の群と比較して,オッズ比の上昇が認められた。赤血球数,白血球数については,必ずしもWECPNLとの間に顕著な関連は認められなかった。尿酸濃度については,WECPNLが上昇することに伴い,尿酸濃度が顕著に低下する傾向が認められた。WECPNLが80以上の群においては,90パーセンタイル値を上回るオッズ比が0.74となっており,しきい値を上回る比率が30%近く低くなっていることが明らかになった。また,WECPNLが75〜80の群においても,オッズ比の有意な低下が検出された。


聴 力

●航空機騒音測定結果に基づく聴力損失の推定

 騒音性聴力損失については,一過性の聴力損失が繰り返されることにより,検知可能な永久性の聴力損失が生じると考えられている。初期には検知不可能であった微小な聴力損失が,次第に蓄積されることで検知可能となる。一過性の聴力損失については,騒音曝露レベルの時間的変動やその周波数特性が得られれば,集団の平均値を推定することが可能である。これにより,過去の騒音曝露の測定結果から平均的な聴力損失量を推定することも可能である。
 嘉手納飛行場近傍の住居地域で1968年および1972年に測定された資料から,ベトナム戦争当時の騒音曝露量を推定することができた。推定された騒音評価量は,WECPNLが約105,24時間の等価騒音レベル(LAeq)は85dBという高い値であった。ちなみに,日本産業衛生学会が勧告している作業環境騒音の許容基準は,24時間曝露で80dBである。この基準値は長期間の曝露による平均的な聴力の低下を,4kHzのテスト周波数で20dB以下にとどめることを目標に定められている。1968年および1972年の騒音測定資料から,24時間の騒音レベルの変動を推定した。次に,軍用航空機の騒音の周波数分析結果を用いて,騒音レベルの変動を各テスト周波数の臨界帯域レベルの変動に換算した。得られた臨界帯域レベルの変動から一過性の聴力損失の変動を推定できる。嘉手納飛行場周辺で推定された一過性聴力損失の最大値は20dBを上回った。この推定値は曝露集団の平均値であり,受傷性の高い個人においては,さらに大きな聴力損失が生じる可能性がある。


●嘉手納飛行場近傍での聴力検診
 

 嘉手納米空軍飛行場の近くで記録された航空機騒音曝露による一過性聴力閾値変動の推定値は騒音曝露が飛行場周辺の住民に騒音性聴力損失を生じさせた可能性を示唆するものである。このため飛行場近くの2つの町のA,B,Cの3つの地区で聴力検査を行った。WECPNLによる騒音曝露量はA地区が90以上,B地区が90から95,C地区が85から90である。検査の対象は25から69歳までとした。対象例はA地区が367名,B地区が767名,C地区が901名,合計2,035名であった。
 40歳から69歳を対象にした聴力検査が,A地区において1996年に,B,C地区において1997年に行われ,25歳から40歳を対象にした検査が,A,B,C地区において1998年に行われた。被験者は聴力,耳鳴り,耳疾患の既往歴,職業性の騒音曝露歴,頭部外傷,耳毒性の薬物,兵役,趣味等について質問を受けた。検査は経験豊富な資格のある医療従事者によって聴力検査ボックスの中で行われた。ボックスの中の暗騒音は30dB以下であった。聴力レベルは500〜8,000Hzまでの7周波数で5dBステップ上昇法で測定された。検査を受けた者はA地区で138名,B地区で121名,C地区で84名であった。そのうちの40名が3,000〜6,000Hzにおいてdip型の聴力図を示し,騒音性聴力損失が疑われ,二次検診として沖縄県立中部病院に送られた。
 二次検診では外耳と中耳がまず視診とティンパノメトリーでチェックされ,次に伝音性聴力損失を除外するために聴力の気骨導差が測定された。3番目にSISI検査がリクルートメント現象を捕らえるために行われた。リクルートメント現象陽性は聴力損失が後迷路性ではなく内耳性と考えられる。このようにして,騒音性であることが強く疑われる聴力積失を示す12例の被験者が見いだされた。験者はこれらの選ばれた被験者に質問を行い,彼らが居住区の航空機騎音以外には居住地や職場常習的に強い騒音に曝露されていなかったことを確認した。これらの被験者の住居は飛行場にきわめて近い地区に集中しており,このことは嘉手納空軍飛行場での航空機の離発着およびエンジン調整の強大な騒音への曝露が彼らの聴力損失の原因として最も疑わしいという結論を強く支持するものである。



航空機騒音 THI 調査