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(平田) ありがとうございます。どうしましょうかね。今は一応、ディスカッションの時間帯になってしまったんですが、大丈夫ですか。15分か20分ぐらいお時間をいただいてやりたいと思います。
 私のほうからは、逆に言うと、そんなに時間がないのでテーマを絞ってお話をしてみたいと思います。ずばり今までの話を聞きながら、それから私の思っていること、僕自身が12年前にキビ刈りの援農塾というのを立ち上げて、ことし12年目を迎えて、うちの親父の体調の関係もあって一度締めようということで、12年目でことしは終わることにしました。
 実は、僕はそれを通して思うことがあります。それは、グリーンツーリズムというのは、一体観光なのか、農業なのか、どっちかということですね。皆さん、これはとっても重要なことだと思います。これは行政の方もぜひ考えてもらいたいと思います。グリーンツーリズム、観光なのか、農業なのか。これは思うには、農業でなきゃいけないんじゃないかなという気がします。そうすると、いろんな意味で観光から見たグリーンツーリズムというものは、例えば大勢の人に来てもらって、それで体験してもらう。それで持ち帰ってもらうということなんですね。
 これはある面でいうと、非常にいいんですが、それを受け入れる生産農家側は非常に負担がかかるということは、おそらく皆さん、現場の方は多分、私と同じように思っていると思います。私の畑の隣にある学校の生徒が来て、名城さんたちの取り組みもそうなんですが、基本的に1本、2本キビを刈って、1時間ぐらいでそのメンバーは帰っていきました。どこか大手のツアーの流れだと思います。隣の僕らの畑に向かって手を振りながら明るく帰っていきましたよ。果たして、農業の一体何がわかったのかなということをちらっと考えたりもします。
 ですから、それも一つ、僕は自分の中で体験して、一つのスタイルをつくっていく中でのある一つの方法として、農業をしっかり体験してもらうグリーンツーリズムは必要ではないだろうかと思ったりします。これは一つは観光、今は沖縄は観光ブームです。550万人いよいよ突破という流れの中で、700万人、1,000万人というような、今、観光関係は意気盛んに申していますけど、実は1週間ほど前に東京のほうの観光未来プロジェクトというところに行きまして、そこで事例報告をさせてもらいました。内容は何かというと、今やっている小浜島のキビ刈りの農業クラブの実践報告をさせてもらいました。
 皆さん、空港に行くとわかると思います。修学旅行生がずらーっと座っている状態の中で、果たして、これ以上、この沖縄に観光客が増えるというのはどういうことなのかなということです。だからといって、大きなホテルをもっと建てましょう。受け入れを頑張りましょう。1,000万人受け入れるだけのレジャーをつくりましょうということだけではなくて、本当に550万人以上の観光客がレジャーを必要なのかということを考えないといけない時期に来ているのではないかという気がしているんです。
 僕自身は小浜島で約10年間島内観光案内、バスを運転し、それから12年間サトウキビの活動をやっていましたので、基本的に観光も農業も一生懸命頑張ってきたつもりです。その僕自身が考えるならば、果たして、本当にいっぱいの人を迎え入れるということだけが勝負なのかなと。結論から言うならば、お金を落としてくれる観光客はもういらないと。親戚つき合いをしてくれる旅の人をつくるということにしないといけないのではないかと、結論としては思っている次第です。ですから、人数を増やすよりも、リピーターになってくれるような取り組みというのが、今後は課題になるんじゃないかなというようなことを考えています。
 その上で、行政側に含めてもお願いですし、これは生産農家の皆さんにも意見を聞いてみたいなと思うんですが、一つは言葉で言うのはファームコンサルティングみたいな、わかりやすく言うと、コンサルティングというのは例えば企業とか、そういうところを相談に乗ってあげて、こういうふうにやったらいいんじゃないですかというアドバイザーですね。そういう意味での畑のことをよく熟知したコンサルティングを企業的にちゃんとできる起業家を育てるという形にしたほうがいいんじゃないかと思います。簡単に言えば、本当は僕自身がいろんな地域に飛んでいきたいと思っています。
 小浜島でやっている活動は一つの実験的なものです。僕が実験としてやっている小浜島ももちろんありましたが、その成果、後で感想文で少し紹介しますけれども、体験した観光の人たち、ほとんどの人がもう1回帰っていきたい、来年もしてほしいというような声があります。それどころか年に1回ではなくて、通年を通して通ってくれるお客さんになります。そういうふうな活動をしているということですね。
 それから、今日チラシを配りました。なぜこういう舞台をつくっているかということをあえて申し上げると、舞台とグリーンツーリズムというのは非常に共通点があるんです。簡単にいうと、バスに乗っているお客さんが、僕らがキビ刈りをやっているそばを通るわけですね。そうすると、観光客の皆さんがバスの中から手を振って、頑張ってよーみたいなことを言うわけですよ。キビ刈りをやっている僕らはあーってとを振るわけですね。
 これは舞台の置き換えてみると、バスに乗っている人がお客さんなんです。ステージが畑でありまして、その畑でキビ刈りをやっている僕らがキャストなんです。つまり、お客さんで座っている人を舞台に上げるというのがグリーンツーリズムの一つなんですね。お客さんで座っている人に、バスに乗っている人はお客さんなんです。そうではなくて、この舞台の上に立ってみなければわからない感動というのはありますよね。そこに舞台に来てもらう。つまり、あのバスの中から手を振っている人たちは、次のグリーンツーリズムのお客さんなんです。
 さて、今度はグリーンツーリズム、つまりゲスト、お客さんからキャスト、立ち方になったという部分から、今度はホストという迎え入れる側の感動があります。つまり、私たちの民宿だったり、僕だったり。僕らは受け入れる側の感動もあるわけですね。これは舞台でいうと、ゲストからキャストになって、まさに演出家になるようなものなんですね。これが畑で置き換えるならば、バスの中から手を振った人はキビを刈る畑に立って、今度はこれが来年来る人たちを迎え入れるような指導者になっていくわけなんです。舞台も同じです。この畑をつくるということは全く一緒なんです。
 だから、勝連のきむたかホールでやっていた阿麻和利の活動というのは8年続いていますけども、まさにそういうふうな活動です。じゃ、勝連だからできたんだよというのかというと、そうではありません。浦添、金武、先ほどご紹介いただきました八重山でもその活動が活発になっております。つまり、その可能性はどこでもあるということですね。小浜島だからできたということではないんです。大事なことは、そういうことをするコーディネーター役、演出家としての役割が必要なんじゃないかなという気がしています。
 ということで、最終的な結論からいくならば、この生産農家の方と、それから、この体験してみたいという人を間にはさんで、先ほど名城さんがすてきな言葉を使われました。接着剤という言葉を使っていましたけども、同じ意味だと思いますが、ジョイント役のリーダーがかなり重要になってきます。ただし、ジョイント役、リーダーをつくるための実践講座というものを、おそらく今いろいろ組んでもらって、実践養成講座というのをやっていると思いますけども、果たしてこういうふうな考え方でやっているのかどうかということですね。
 願わくば、企業化して、ファームコンサルティング、いわゆる農業を主体とした経営コンサルとかできるような、そういう企業を起こさない限り、その接着剤になってくれるところが、名城さんのような方がいるところは十分OKだと思いますけれども、名城さんの方たちが、もしくは僕のような人が生まれてくるまでの一つの土台づくりを、そういうコンサルティング業務として中に入れてあげて、その人を中心として行政と生産農家の間に入り、なおかつ、旅人と島人の間に入り、一番生産農家が疲れない、生産農家が気持ちよく楽しくできるようなやり方でないと、交流はおそらく続かないと。そして、この事業はただただ消費していくだけの事業になっていく。今の沖縄の観光も同じです。このままだったら消費していきます。
 この間、安心院のまち、今出ましたけれども、安心院と一緒に黒川温泉に行ってきました。黒川温泉は昨年がピークです。ことしは黒川温泉の入湯数、お風呂に入る人が減りました。視察に行ったメンバーは数が減ったというのでピークが越えたんだなと思ったんですね。違ったんです。大手の旅行会社が断りだした。なぜか。どかどかと来られて、泊りもしないのにお風呂に入っていくだけ。この50人しか入らないところに約500人来ているとなった場合、これはもう太刀打ちできないということで、大手の旅行社を断って、泊まるお客さんだけを取ったら、入湯数は減ったけれども、でもこのお客さんは絶対に来年も再来年も来てくれるんですと。一つの考え方の違いだと思います。
 お客さんをいっぱい入れるということも手かもしれませんが、自分たちの農業を大事にしながら、これ以上、なるべく化学肥料を使わずに土を大事にした、それでいて、その島に住んでいる人たちが自分の何かを削るような感じのグリーンツーリズムだけはしないためにも、僕自身が模索している一つの方法として、今言った、観光ではなくて、農業をしてもらう人を集めるというやり方がいいんじゃないかなと提案として思っているところです。
 長くなりましたけども、最後に、そういう面で言うならば、交流、促進という言葉があります。交流ということがなぜ必要なのかということで、最後に僕自身の体験の話をします。交流がなぜ必要なのか。これは明確です。僕のおうちは民宿でございました。子供のころに民宿にいると、いろんなお客さんが来てくれるわけなんです。そうすると、自分自身が島の外に出ることなく、外の情報がいっぱい入ってくるわけなんです。子供ながらに僕の心の中の地図はどんどん大きくなっていきました。行ったことのないところにも、まるで行ったような気持ちになって、それで自分の島は小さいんじゃないんだというような意識になりました。
 つまり、交流人口が増えるということが本当の意味で定住人口を増やすことにもなるし、何よりも交流自身が実は受け入れる観光客だけが、旅人だけがよかったと思うんじゃなくて、旅人からもらうものも島人にはなければいけないということですね。そういった面で交流はとても重要じゃないかなという気がしています。
 最後に、農場倶楽部に参加して思ったことというところの、ある人の感想文を最後にお話しさせてもらって、今日の提案にかえたいと思います。農場倶楽部に参加して感じたこと、少しだけ長めですけど聞いてください。
 圧倒的に大人にも感動体験が必要なんだということ。そして、他者とのかかわりの中で自分とじっくり向き合う時間、空間が必要なんだと。そして、それを多くの人々が求めているんだということを今回のキビ刈り生活を通して一番感じました。キビを刈るという行為は一見、ただの農業作業かもしれませんが、1本1本のキビを手にしながら、みんながそのキビ刈りをとおして自分の内側と対話していました。また、そこにキビを育ててきた人々の愛情を感じたとき、刈り手の私たちにもキビへの愛情が生まれていきました。
 雨の日も風の日も、汗だくになるぐらい暑い日も、みんなで一生懸命倒したキビが、自分の内側と向き合うきっかけを与えてくれたキビが、仲間をつないでくれたキビがいつの間にかみんなの中でかけがえのないものになっていました。キビを倒すことで島の生産活動につながり、それに携わった私たちが島のために役立ったことも大きな喜びですが、それとともに、自分自身の存在価値を知り、また、仲間とともに味わった達成感は何ものにも代えがたい感動体験となりました。
 最後のくくりになりますね。キビ刈りだけではなく、日々の生活の中で語ってくれるお父さんの言葉やお母さんが教えてくれる島の料理、宴会の踊りや歌、そして、ウミンチュ体験はこの島の生活の中で欠かせない出来事でした。島に生きている自然と格闘しているシマンチュだから表現できる言葉があり、歌や踊りがある。島の暮らし、芸能活動の神髄を見せてもらった気がします。特に歌や踊りは自然に対する感謝であり、喜びの表現の形なんだということを身をもって教えてもらいました。芸能活動が特別なことではなくて、毎日仏前に手を合わせて感謝の気持ちを伝えるように、踊りや歌も日常のことなんだということを初めて感じることができました。本当にうれしい体験でした。
 こういうメッセージをいただきました。生産農家の方々が今日は多いと思いますけれども、そういった意味で言うならば、皆さんの活動そのものがこういうふうに感動体験を来た人に与えているわけですから、この感動体験をより深いものにできるような、そういう取り組みに今後できたらいいなと僕自身も思っていますし、これからもそういう提案、提言をさせていただきたいなと思っています。以上です。ありがとうございました。
(拍 手)

(崎山) 平田さんならではのお話で、本当に心に深く染み入りました。私は小浜島で平田さんに初めて会ったんですね。そのときに絵本にサインをしてくれたことと、その夜、島の歓迎会で、小浜の女性たちは家族の着物を自分で織り、染め上げます。そのお母さんが織ってくれた着物を着て紺地(クンジー)の、その深い衣装を着て踊っていらして、円陣を組みながら私たちを歓迎してくれたことをきのうのことのように覚えています。その後の彼の活躍ぶりを見て、絶えず彼の軸足は小浜島から始まっており、世界が小浜島にあり、また、彼自身が世界中に、ある意味で平田大一の世界をつくりだすことができるのも島の生産物の一つなんですね。
 そういう意味で、さっき平田さんがおっしゃっていました。グリーンツーリズムは観光なのか、農業なのかと。これは本当にするどい質問で、ある意味では観光でもあり、また農業でもあると思いますね。グリーンツーリズムのデザインそのものが、やっていらっしゃる農家によって、それこそ物語がいろいろ違ってくると思うんですが、このメインに必要なのは教育でもあると思うんですよ。まさに。人はどうやって生きていくのか。人とはどういうふうに成り立っていくのかということを教えるのがグリーンツーリズムでもあると思うんですね。そこに行かなければ感じられない色や形や、目に見えない心みたいなものを感じるのがグリーンツーリズムもあると思うんですけど、皆さんのお話を聞いて、平田さんはどうでしたか。
(平田) おっしゃるとおりですね。観光と農業をつないでくれることが文化の力というふうに僕は今思っているんですね。こういう活動を昨年もシンポジウムの中で講演会で話させてもらいましたが、感動産業ということを話したと思います。つまり、観光、農業、水産業、全部縦割りの中でグリーンツーリズムといってもなかなか難しいですよね。実は全般にわたっている話なんですよね。
 ですから、それを感動産業課というところをつくって、ぜひ農業も観光も一つにまとめた島おこしの、そういうまちづくりをするというような課をつくって、そこはオールラウンドできるようなことができたらいいんじゃないかなという話をしたんですが、今日の話を聞いてますますそうだなという気がしましたし、恩納村の名城さんの話というのは、それを一歩進めた形ですごく興味がある内容で、商工会が窓口をやっていると、だんだんそれが補助金やそういうのをもらわずに自主財源をつくっていくというような方向性ですから、非常に正しい方向性だなという気がしますので、そういった面でやはり、こういう事例が沖縄県内にあるんだなということを知って、もっともっと勉強しないといけないなという気がしました。
(崎山) おっしゃるとおりだと思います。ある意味で、お金の話になると、みんなちょっとひるんだりするんですが、心の感情とお金の勘定、この2つのカンジョウが成り立たないと、本当にボランティアで終わるわけにはいかないと思うんですね。そこらへんをしっかりと規定をつくるというのはとてもいい方向ではないかなと思いました。

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