情報通信関連分野の人材育成に関する基本方針
1 はじめに
世界規模でIT(情報通信技術)革命が進行する中、島嶼県である本県は、アジアにおける国際情報通信ハブ(注1)化に果敢に挑戦し、本県の持つ特性の発揮と不利性の克服を図ることにより、自立に向けた持続的発展と世界に開かれた交流・協力拠点の形成を目指していくことを決意した。
そのためには、IT人材育成の先進地域となることを目指し、県民一人一人の情報リテラシー(注2)の向上や学校教育による情報化・国際化に対応した人材の育成を図るとともに、情報通信関連分野の多様で高度な人材を早期に育成し、充実したIT人材層を形成していくことが重要である。
県は、情報通信関連分野の人材育成に体系的に取り組むに当たり、国、県、市町村、関係機関・団体及び企業の相互の連携と、すべての県民がITに関わりを持って力を結集することが最重要の課題と位置付け、本方針を策定する。
2 情報通信関連施策の取組状況
(1)学校教育分野
県は、児童生徒が活力ある社会の形成者として高度情報通信ネットワーク社会(以下「ネットワーク社会」という。)に対応できる情報活用能力を育成することを重要な施策の一つとして位置付け、情報教育の充実に取り組んでいる。
ア 学校におけるインターネット利用状況
平成12年3月末現在、県内の小学校のインターネット接続率は71.3%(全国平均48.7%)、中学校は84.8%(同67.8%)である。
また、県立高等学校のインターネット接続率は、67.8%(全国平均80.1%)、特殊教育諸学校は87.5%(同59.9%)である。
今後は、常時接続かつ高速のインターネット利用環境の整備が求められている。
イ 新しい情報教育
新学習指導要領において、小学校では、各教科等の学習でコンピュータや情報通信ネットワーク等の情報手段に慣れ親しみ、適切に活用する学習活動を充実することが求められているとともに、中学校では技術・家庭科の中で「情報とコンピュータ」が必修となった。
また、高等学校においては、普通教科に「情報」が必修科目として新たに設置されるとともに、専門教科のなかにも「情報」が新設され、科目として「情報産業と社会・課題研究・情報実習等」が新設された。
引き続き、小、中、高等学校、特殊教育諸学校の各学校段階を通じて新たな情報教育に対応した学校教育の充実に努めていく必要がある。
ウ 指導者の情報活用能力
本県の公立学校で「コンピュータを操作できる」教員の割合は、平成12年3月末現在、小学校51.9%、中学校62.1%、高等学校76.2%、特殊教育諸学校38.5%、全体の平均で60.3%となっており、全国の全体の平均66.1%より低くなっている。
また、「コンピュータで指導できる」教員の割合は、小学校30.9%、中学校25.9%、高等学校26.8%、特殊教育諸学校16.1%、全体の平均では27.3%となっており、全国の全体平均31.8%より若干低い。
このため、教員の指導力向上を図る情報教育研修の充実及び教員用コンピュータの整備が課題である。
(2)産業分野
ア 情報通信産業
県は、情報通信産業の振興・集積による自立的経済発展を図るため、平成10年9月に「沖縄県マルチメディアアイランド構想」を策定し、2010年までの情報通信産業分野の雇用目標を約24,500人と設定した。
取組の第一段階として、コールセンター(注3)等情報サービス産業の集積に取り組み、その結果、コールセンターを中心に平成13年3月末までに33社が集積し、新規雇用約3,200人を達成した。
現在、第二段階として、コンテンツ(注4)制作分野の集積に取り組むとともに、インターネット・データセンター(注5)の立地等新しい分野の集積促進にも取り組んでいるところである。
引き続き情報通信産業の振興・集積を図っていくためには、ネットワーク、データベース、コンテンツ制作、システム開発等のより高度なIT人材の確保が必要である。
イ 産業の情報化
情報通信の高度利用が進む中、交通・観光情報の提供を目的とした「沖縄・交通観光情報システム」が稼働する等の取組が見られるものの、県内では中小・零細企業が大半を占めるなどの背景から産業分野の情報化について、全般的に遅れが見られる。
今後、産業の各分野において、電子商取引の導入など新たなビジネス形態への対応や、経営効率化と生産性の向上を図るため、情報化に向けた投資や人材育成が求められている。
(3)地域の情報化分野
県は、IT社会を担う子どもたちの情報リテラシーの向上と、情報通信関連分野を担う技術者、コンテンツクリエーター等の人材育成を目的として、最新のマ
ルチメディア機器を整備し、広く県民が利用できる人材育成施設としてマルチメディアセンターを那覇、宮古、八重山の各地域に整備し、地域振興に寄与する情
報化の推進に努めている。
また、県と市町村等間を結ぶ公共的な情報通信ネットワークの整備が進んでいる。
市町村においては、地域インターネット導入促進事業や地域イントラネット基盤整備事業等の導入により、役所(場)、病院、介護関連機関、図書館、大学、
観光センター、防災機関等を接続し、地域の行政、医療、福祉、教育、観光、防災等の高度化を図り、インターネットを活用した住民参加型のネットワークコ
ミュニティの構築が活発化し、地域の豊かな情報環境の形成に向けた取組が進められている。
(4)行政の情報化分野
住民基本台帳ネットワークシステムの整備(平成13年度試験稼働)、行政手続きのオンライン化の推進、国と自治体間を結ぶ総合行政ネットワークの構築
(H13年度稼働予定)、県民の生命・財産と安全を確保する防災分野における情報通信の高度化等にみられるように、今後、国、県及び市町村が密接に連携し
て、あらゆる行政分野においてITを活かした高度な行政を進めていくことが求められている。
県は、電子県庁を早期に実現するため、平成13年3月に「沖縄県行政情報化推進計画」(平成13年度〜平成17年度)及び同実施計画を策定し、取組を強化したところである。
3 情報通信関連分野の人材育成の方向性
学校における情報教育の推進については、全児童生徒が常時接続かつ高速の環境でインターネットを利用でき、一人一人がコンピュータを発展的に活用できるようにするとともに、英語活用能力を高めて情報化・国際化に的確に対応できる人材育成を目指す。
本県のリーディング産業として期待されるIT産業については、高度なソフトウェア及びシステム開発に取り組むとともに、沖縄の文化、自然及び感性を優位
性としてコンテンツ制作に結びつけるなど、戦略的に育成していく。このため、高度なスキルをもったIT人材を育成するとともに、産業、教育、医療、福祉等
の各分野の情報化を推進する人材の育成に努める。さらに、これらの取組を通して、各産業分野のIT化を促進して情報活用能力を高めることにより、ネット
ワーク社会に的確に対応した産業の情報化を進めていく。
地域及び行政の分野における情報化の推進に当たり、高速ネットワークインフラの整備や電子商取引並びに電子認証システム構築等に伴う課題に対応するため
には、情報通信技術のみならず、ネットワーク社会に対応した新たな法体系にも精通した人材を早急に育成する必要があることから、電子自治体構築の核となる
人材育成について県及び市町村で共同して取り組む。
4 情報通信関連分野の人材育成の方策
情報通信関連分野の人材の育成に当たっては、国、県、市町村、関係機関・団体及び企業が密接に連携し、それぞれの役割を明確にしつつ取り組んでいく。
特に、県民の情報リテラシーの向上に向け、長期的な視点に立って、小中高校生の情報教育を強化する。
また、人材育成を担っている専修学校等を含めた学校・教育関係機関・団体、マルチメディアセンター等の人材育成環境を活用し、特色ある人材育成施策に取り組む。
各分野における取組は以下のとおりとする。
(1)学校教育分野
ア インターネット環境の整備
県内すべての学校が、平成13年度中に常時接続かつ高速でインターネットを活用できる環境を整備する。
イ 主体的な情報活用能力を育成するための基盤整備
情報化・国際化の進展の基本となる人と人との相互理解と相互交流を推進し、自国の文化や異文化に対する理解を深め、世界の人々と共に生きていく資質や能
力の向上に努めるとともに、ネットワーク社会に主体的に対応できる情報活用能力の向上を図る必要がある。このような観点から、先進的なIT教育を推進する
「IT教育センター」(仮称、今年度完成予定)を整備する。
また、引き続き校内LANを整備するとともに、学校におけるインターネット常時接続利用の広域的取組である「スクールインターネットフリーウェイ」を全県的に展開し、総合的な教育情報ネットワークを構築する。
ウ 児童生徒の情報活用能力の向上
学校教育においては、児童生徒が文書作成や表計算などコンピュータを基礎的に使いこなせるようにするとともに、動画編集等も含めた発展型IT教育環境を整備する。
併せて、情報化・国際化に適切に対応していくため、ITを活かして英語活用能力を高めていく。
また、健全なネットワーク社会を築いていくためモラルの醸成についても配慮していく。
エ 指導者の情報活用能力の向上
すべての教員が平成16年度までにコンピュータで指導できるようにすることを目指す。このため、教員用コンピュータの整備を推進するとともに、「IT教
育センター」(仮称)等において、校内研修の核となる教員の養成を内容とした研修を実施する。また、各学校においては、独自に校内研修計画を策定し、研修
を恒常的に実施していく中で、教員の資質の向上を図る。
オ 情報技術高等学校(仮称)の設置
情報に関する総合的な教育を展開するため、高等学校での基礎段階からの系統的な教育を行い、外国語教育も重視した情報教育の中心校を設置する。
カ 国立高等専門学校の早期開学
国立高等専門学校の早期開学を促進し、情報通信分野における専門的な知識や技能を有する人材を育成する。
キ ビジネスマインドの醸成
学校教育の段階から、産業を担うために必要な基本的な知識・技能の習得やビジネスマインド(注6)の醸成を図り、今後成長が期待される情報通信関連分野で活躍する人材の育成に力点を置く。
ク 高等教育機関との連携強化
情報化の進展等、多様な社会的・時代的要請に的確に対応できる専門分野の人材育成を目指して、高等教育機関との連携強化に努め、教育・研究活動の積極的な展開を通じて、人材育成機能の充実強化を図る。
また、専修学校等における情報関連分野の専門的技術教育を行うための学科の充実、施設・設備の整備促進に努める。
(2)情報通信関連産業分野
ア 高度なIT人材の育成
企業のニーズに適切に対応するとともに今後立地が期待される付加価値の高い分野の集積を図って行くため、高度なIT人材の育成に努める。このため、各種の高度な研修を実施し技術の進歩に沿ったカリキュラムの編成に努めるとともに、情報関連資格の取得環境整備等を進める。
イ 中核施設の整備
高度なIT人材を育成・確保していくため、必要なネットワーク環境や機器を備えた中核施設を早期に整備する。また、「e−Japan戦略」(注7)を推進する国家レベルの高度な研修施設の立地を促進する。
ウ 県立芸術大学による人材育成
県立芸術大学を活用し、デジタルアート分野の人材育成の充実を図る。
エ 専修学校等のネットワーク化
専修学校等における企業ニーズに対応し即戦力となる人材育成を促進する。このため、技術の高度化・実践化、職業意識及びベンチャーマインドの向上を図ることを目的とした、専修学校等間のネットワークの構築について検討を進める。
オ 産業振興策にマッチした人材育成
本県の雇用情勢を改善するため、産業振興策にマッチした人材の育成を図るとともに、就職に至るまでの一貫した支援体系を構築する。
カ 職業能力開発機関等との連携と役割分担
技術革新や新規成長産業分野などに対応できる職業能力を開発するため、沖縄職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)、専修学校等との連携や役割分担を図りつつ、高度で専門的な職業能力を有する人材を育成するとともに、自発的な能力開発を促進する。
キ 産業の情報化を支える人材の育成
産業の各分野において、電子商取引の導入等新たなビジネス形態に対応できる人材育成の促進に努める。さらに、本県の産業の情報活用能力を強化して産業の
情報化を促進するため、観光・リゾート産業の高度化に必要な人材やものづくりの核となる技術・技能を持った人材の育成、伝統工芸産業の後継者育成のほか、
農林水産業の担い手となる人材の育成、並びに経営感覚に優れたグローバルな産業人材の育成等の重要な課題に柔軟に対応し、これらの各産業分野の情報化を推
進できるIT人材の育成・確保に努める。
ク 留学制度等の活用
県内の優秀な人材をインターンシップ(注8)や留学制度を活用して国内外に派遣し、最新技術やビジネススキルを習得させることにより、世界に通用する人材を育成する。
ケ 国内外の先進企業等への派遣研修の促進
県内の情報通信関連の企業等が従業員に専門的な技能や知識を習得させるために行う国内外の先進企業等への派遣研修を促進する。
コ 優秀な人材の誘致
Uターン及びIターンの促進並びに研究機関、企業誘致等の促進により、国内外から優秀な人材を誘致する。
サ アジア・太平洋地域との連携
IT人材育成の推進に当たっては、IT人材育成の先進的な取組が全国のモデル地域となることを目指すとともに、アジア・太平洋地域と密接に連携し、これらの地域の発展に貢献できる役割を担っていくこととする。
(3)地域の情報化分野
ネットワーク社会の恩恵を最大限に享受するためには、地域住民の情報リテラシーの向上を図ることが重要である。そのため、次世代を担う子供たちが学ぶ学
校等の教育現場に情報関連機器を整備してカリキュラムの充実を図るともに、生涯学習の一環として、高齢者や障害者にも配慮した地域住民が受講できるセミ
ナーや研修講座を設けていく。
(4)行政の情報化分野
行政手続きのオンライン化の推進をはじめとする電子自治体の構築により、県民がネットワークを活用して迅速かつ質の高い行政サービスの提供を受けられる
よう環境を整備する。このため、県と市町村等間を結ぶ行政情報通信ネットワークを今年度内に構築するとともに、行政の情報化を推進し電子自治体構築の核と
なる人材の育成について、県及び市町村で共同して取り組む。
また、電子自治体構築における共通した課題を有する都道府県との連携を深め、ITを行政施策の推進に活かせる人材を育成していく。
5 推進体制
本方針の推進に当たっては、県の重要課題として位置付け、県知事を本部長とする「沖縄県高度情報化推進本部」において、関係部局の役割を定め全庁を挙げて取り組む。
さらに、急速な社会経済環境の変化に柔軟に対応するため適宜見直しを行う。また、人材育成の取組の状況については、県のホームページなどで広く情報を提供する。
6 おわりに
情報通信関連分野の人材育成を体系的かつ効果的に進めていくためには、市町村、教育機関、関係団体などが県とともに自らの事業として取り組むことが肝要である。
加えて、充実したIT人材層を形成していくためには、産業間の連携を図りつつ、産業の情報化を進めるなど産業界全体の理解と取組が求められる。
このように、本県がIT人材育成の先進地域になり、世界を舞台に活躍するためには、すべての分野にITを活かしながら県民一人一人がIT社会に主体的に参画していくことが重要である。
(注1)ハブ
ハブ(hub)とは、自転車の車輪の中心部のこと。ここでは、情報通信の交換・集積の中心地となること。
(注2)情報リテラシー
コンピュータやインターネットの基本的な利用が可能となる情報活用能力。
(注3)コールセンター
電話、ファックス、インターネット等を利用した顧客サービス窓口の総称。
(注4)コンテンツ
「内容」のこと。「マルチメディアコンテンツ」や「Webコンテンツ」という使い方をする。
(注5)インターネット・データセンター
大容量の回線に接続し、高いセキュリティや堅ろう性を備えた、インターネット・ビジネス専門のセンターのこと。
(注6)ビジネスマインド
主体的に職業選択をし、取り組んでいく心構え。
(注7)e−Japan戦略
平成13年1月に「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」により決定されたIT立国に向けた国家戦略。5年以内に我が国を世界最先端のIT国家にすることを目標としている。
(注8)インターンシップ
一般的に、学生が企業等において実習・研修的な就業体験をする制度のこと。