インタビュー
〜No1.ダイビング三昧を夢見て沖縄に移住した人たち〜

■ 日南休智恵さん  ■吉冨弓江さん

日常の中に海がある幸せ

本島中部の宜野湾市にある「ともえ歯科」医院長・日南休さん。
サンゴ礁の海を写した半水面の写真が受付に飾られ、訪れる患者をリラックスさせてくれる。

日南休 智恵(ひなやすみ ともえ)

「水中カメラで撮りたいものがあるので、この2年くらいはケラマ諸島の阿嘉島に通い詰めてます。器材は島のショップに預けていて、朝、那覇港からフェリーで渡り、2ダイブして夕方にはまたフェリーで帰る。これを週1回のペースで続けてます」穏やかな雰囲気が漂よう日南休智恵さんは、ゆっくりと、しかし情熱に溢れた笑顔で、自身のダイビングライフを話してくれた。現在、彼女は宜野湾市で歯科医院を開業している。ドアを開けて正面の受付には、限りなくブルーな海の写真が飾られていた。患者が海好きなら必ずアッと目をひかれ、ここで一気に治療に対する緊張感がほぐれてしまいそう。

福岡出身の日南休さんが沖縄の海と出会ったのは今から約18年前、彼女が大学生のころ。友人とスノーケリングをしに行った、西表島が最初だった。水面から覗くだけでも、水中風景は十分に楽しめた。その後も3、4回は西表島への旅行を繰り返し、長期滞在してはスノーケリング三昧の日々を楽しんだという。しかし、初めて西表で遊んだ際、ボートに同乗していたダイバーが水中へと潜っていく姿を見たことは、彼女の好奇心をくすぐり続けていた。そしてその4年後、沖縄本島の那覇市にあるダイビングショップで講習を受け、Cカードを手にすることになる。

その後しばらくして、彼女は沖縄に移り住んだ。ただこのときは、まだダイビングが動機の移住ではなかった。「ちょうど先輩が、那覇の隣にある南風原町(はえばるちょう)で歯科医院を開業していて、この人のもとで歯科医としての修行をしたいと思ったんです」。福岡でもすでに歯科医として勤めていた彼女は、1年の契約で沖縄の職場へ移ることになった。そして、海が身近になった生活の中で次第に、週3日は潜りに行くという状態に。こうして、加速度的にダイビングへの興味を深めていった彼女は、Cカードを取った1年後には、アマチュアダイバーとしては最高ランクの資格を取得するまでに、ハマリきってしまっていた。

一方、歯科医としての仕事も脂が乗ってきたころで、彼女はさらなるキャリアアップを考え、沖縄を離れる。「でも、また帰ってくるつもりでした」。福岡に戻ってからの職場は、2年の契約だった。「長期の休みが取れなかったので沖縄には1回来ただけでしたが、やっぱり地元・九州の海で潜り続けていました」。29歳のとき、日南休さんは再び沖縄へ移り住んでくる。今度も、歯科医院での就職を決めてからの行動だった。「でもこのときは、ダイビングのために永住したいというのが動機でした」。

以後、毎週1回、本島のビーチスポットへ足を運ぶようになり、本格的に水中カメラも始めた。ポイントで、見覚えのあるダイバーに出会うこともしばしば。挨拶を交わすようになり、そういった顔ぶれが次第に仲間となってグループも形成された。「同じようにダイビング目的で本土から移住してきている人たちで、情報交換や写真を見せ合うといった交流の場をもつようになりました」。ただ、そういった仲間の中には、会社がある日倒産してしまったとか、本土と比較してあまりに低い賃金に不満をもち…といった理由で、沖縄でせっかく見つけた職を長く続けられなかったケースも見た。「仕事は、とりあえず沖縄に来たら何とかなる…ではダメ。物価が安いし生活しやすいけど、賃金の相場を知ってから来ないと、就職活動を始めてからびっくりするはず」。これからの移住を考えている人に対しては、まず生活の基盤を確保してからの行動をとアドバイスする。

『休みのたびに沖縄の海に潜りたい』、『撮りたい対象がたくさんあるので毎回、水中カメラを使いたい』。この欲求を満たすためには、もちろん相応の費用が必要である。そのために日南休さんは、「生活するためだけに働く毎日では終わらないように」という強い意志と、それまで丁寧に積み重ねてきた仕事の実績から、歯科医院を開業するという「ちょっとしたきっかけ」(本人曰く)を呼び寄せた。二度目の移住から約6年後、35歳のときのことである。こんな日南休さんだから、一体どんなに凝った写真を撮るのかと思ったら、意外や「みんなが騒ぐような珍しい生物じゃないんです。ありふれた被写体でいいから、背景がきれいとか構図がいいとか、自分の気に入った風景を撮りためていきたいですね」と、サラリ。お気に入りのポイントは?と聞いていちばんに出てきた答も、「渡嘉敷島にあるトカシクビーチ。水深が浅くて光がいっぱい入って、そこにきれいな砂地が広がってカラフルなサンゴが点在してるんです」という、何とも大らかなコメントだった。納得のいくカットが撮れると、同じく本土からの移住組である水中カメラ仲間が開設しているホームページに、掲載してもらっているそう。

アドレスは http://www.cosmos.ne.jp/~acropora/

このなかの、Club Galleryのコーナーで見れるそうだ。 「特別な準備をしなくても、今日潜りたいと思ってすぐに出掛けられる。そんな日常の中に海があることに、幸せを感じますね」。沖縄で暮らすことの魅力を、日南休さんはこう表現した。

当たり前のように存在する魅力に対しては、歳月を経ると共に誰もが鈍感になりがち。彼女のように、オンタイムとオフタイムのどちらに対しても、100パーセントの情熱を注ぎながらさらにその先を見通していくスタンスは、移住という結果に対して常に敏感・新鮮であり続ける秘訣かもしれない。

データ

治療室の壁にも、ブルーが美しい水中写真が飾られている。ダイバー仲間から、開院祝いにとプレゼントされたもの。

移住前の住まい: 福岡県
現在の住まい: 宜野湾市
移住したときの年齢: 29歳
移住歴: 10年(2000年現在)
移住前の職業: 歯科医院勤務
現在の職業: 歯科医院長

※ともえ歯科
宜野湾市大謝名 TEL098-899-1191