II 産業振興の基本方向


1.現状と背景

 我が国経済は、バブル崩壊後の調整局面を経て、緩やかながら回復の基調をたどっているものの、国際競争力の低下や産業空洞化が懸念される状況にあり、我が国経済社会の抜本的な構造改革が急務の課題となっている。
 その中で、地方圏の景気の落ち込みは相対的に小さく、総じて底堅く推移してきた。こうした背景として、地方圏においてはバブル崩壊の影響が小さく、民間設備投資や消費の落ち込みが小さかったこと、また公共事業への依存度が高く、景気対策等による公共投資の効果が大きかったこと等があるとみられる。しかし、国において、危機的な財政状況の下、公共投資を削減する方針が決定され、地域経済は厳しい局面を迎えている。
 一方、沖縄は、今なお、物的生産部門の弱さ、広大な米軍基地の存在等の課題を抱え、依然として脆弱な経済構造となっており、財政依存度は全国平均の約2倍となっている。
 このことから、国の財政構造改革に伴う公共投資の削減は、沖縄の地域経済に深刻な影響を及ぼすことは必至であり、復帰以来投入された5兆円を超える振興開発事業費等公共投資のあり方を含め、財政依存型経済からの脱却に向けた具体的な対応が急がれる。
 また、県内市場に依存した製造業などは、経済のグローバル化や高度情報化への対応も後れをとっている。基幹産業である観光・リゾート産業は比較的順調に発展を遂げてきているものの、円高基調の下国民の海外志向が進む中で既に厳しい競争にさらされつつあり、一段の競争力強化が必要となっている。
 さらに、米軍基地の整理縮小に伴い、基地関連収入に代わる所得や雇用をいかに確保していくのか、喫緊の課題となっている若年労働者の雇用対策をどうするのか、まさに産業経済全般にわたって構造問題への対応が迫られていると言えよう。


2.新たな産業振興策の必要性

 このような厳しい状況を打ち破り、沖縄経済の自立的発展を図るためには、従来の産業振興策では限界がある。一国二制度的な新たな制度の導入を図り、大きく経済構造を変革していく必要がある。本土に先駆けた規制緩和や税制上の特例措置などにより企業の立地環境・事業環境を大幅に改善し、大競争時代に勝ち残れる地域経済を創り上げていくことが求められる。 
 沖縄周辺の地域においても大きな変化が起こっている。香港が中国に返還されたことに伴い、従来から香港が果たしてきた諸機能の分散が進むことが予想される。また、中国が台湾に対しても一国二制度体制を想定した統一を表明していることもあり、台湾企業などのリスク分散行動が加速する可能性も高い。このような動きの中で、沖縄、台湾、中国福建省を中心とする蓬莱経済圏構想も浮上してきている。
 沖縄の経済構造を改革し、新たな産業振興策を展開する基軸として、これらの動向を的確に把握し対応していくことは、沖縄の経済ポテンシャルを高めるだけではなく、我が国やアジア周辺国の経済活動などにも大きく寄与するものであり、ある意味で時代の要請ともいえる。
 こうした観点から、沖縄を内外企業による新産業・新事業創造のための拠点として活用されるようにしていくことがまず必要である。これにより、地域経済の活性化と雇用の安定化を図り、沖縄経済が自立していくプロセスを確立することが可能となろう。
 円高の進展やアジアの経済発展等により企業が国や地域を選ぶ時代を迎えた今こそ、中長期的な経済発展を見据えた施策の展開により、国内外にアピールできる魅力ある企業環境を実現し、リストラを進めてきた国内企業や急成長を遂げる近隣外国企業の戦略的な投資先として認知されることが不可欠である。


3.目指すべき方向

(1)自由貿易地域の新たな展開
 昨年、フィリピンのスービックで開催されたAPEC会議において、貿易・投資の自由化を目指す「共同行動計画」が決定され、先進工業メンバーについては遅くとも2010年までにその実現を図るプログラムがスタートした。
 こうした動向等を踏まえ、2001年を期して県全域を自由貿易地域とする思い切った施策展開を図る。
 これにより、沖縄を、生活者が真の豊かさを享受し「生活大国」を実感できる空間とするとともに、自由で活力ある経済活動が展開できる舞台とすることにより、国内外に国際都市沖縄を強烈にアピールしたい。
 また、これと併せ、投資減税制度の創設等により企業立地インセンティブを高め、産業活動を活発化する。これによる産業展開の基本方向は以下のとおりである。
 
(2)情報通信関連産業の集積促進
 情報通信の高度化は、時間的・空間的制約からの解放による新たなライフスタイルの実現とともに、新規産業の創出や生産性の向上など経済に新しい活力をもたらす。こうした新しい産業やコンテンツ産業の展開は、大きな雇用の創出につながり、また、生産性の向上は労働時間の短縮を通じてゆとりのある生活を実現する。 
 沖縄県では、振興プロジェクトの柱として「マルチメディア・アイランド構想」を推進し、職・住・遊が近接した魅力あるリゾート地の形成を通じて、情報通信関連産業の集積促進を図るとともに、情報発信機能の強化や遠隔医療・遠隔教育の実施により県民生活の向上を図ることとしている。
 この実現のためには、情報通信インフラの整備を推進するとともに、情報通信関連産業の立地促進に向けた税制面の優隅措置の導入が必要であり、併せて感性豊かで高度な技術を有する人材の育成が重要である。
 また、遠隔医療、遠隔教育及び行政サービス等の先進地域として各種規制緩和や制度の充実を図っていくことが求められる。 

(3)国際観光・保養基地の形成
 沖縄は、我が国唯一の亜熱帯・海洋性気候の下、豊かな自然環境と独自の伝統文化など魅力ある観光資源に恵まれ、国民的な観光・保養基地として高い評価を受けており、観光関連産業は沖縄の基幹産業の役割を担ってきた。
 今後、こうした比較優位を生かし国際的な観光・保養基地を形成していくため、自然とのふれあい、健康の維持・増進などライフスタイルの変化に伴う新たな観光需要や、国際的交流拠点形成に伴うコンベンション需要の増大、情報関連ソフト産業など職・住・遊近接型の産業の進出などに対応して、施設・設備の充実や魅力ある観光資源の創出を図っていく必要がある。
 また、国内航空運賃の低減のための競争促進策や多様な割引運賃制度などを導入するとともに、国際線の乗り入れや入国手続きの簡素化のため、規制緩和を推進する。
 さらに、入域観光客の多様化やヘルスケアビジネスなど新たな観光関連産業に対応できる人材の育成確保が求められる。


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