はじめに
沖縄が、本土に復帰して25年が経過した。かつてないほど沖縄問題がクローズアップされそのうねりが続くなか、一世代の時が過ぎ去ろうとしている。
戦後長期にわたり我が国の施政権外に置かれた沖縄は、県民のたゆまぬ努力と創意工夫によってめざましい復興発展を遂げてきたが、苛烈な戦禍による県民の尊い犠牲と県土の破壊に加えて、長年にわたる本土との隔絶により経済社会等各分野で本土との間に著しい格差を生じるに至った。これらの格差を早急に是正し、自立的発展を可能とする基礎条件を整備するため沖縄振興開発計画に基づく各般の施策が実施され、その結果、社会資本の整備を中心に相当の成果をあげてきた。
このようにナショナルミニマムがほぼ達成しつつあることから、復帰プログラムが終幕を迎えたとの見方もできよう。また、25年一世代という期間も、区切りとしてはひとつの意味を持つ。
しかしながら、県土の均衡ある発展や地域振興を図る上で大きな制約要因となってきた広大な米軍基地は、いまなお県土全体の10パーセント、本島の20パーセントの面積を占めている。また、地域経済の現状は、戦後復興の条件整備や高度成長を誘導した産業振興策から疎外され、ドルショックやオイルショック等混乱のなかでの復帰という経緯等もあり、県民所得は全国最下位の定位置にとどまるなど依然として厳しい状況にある。
一方、我が国はいま、転換点にある。グローバリゼーションの進展や高度情報化社会の到来、少子・高齢化社会への移行といった大きな潮流の変化に適切に対応し、経済社会の構造を抜本的に変革していくことが求められている。現状への不満と将来への不安といった閉塞感を打破し、自由で活力ある経済社会を構築していくため、新しい理念に基づくシステムづくりが急務の課題となっている。
加えて、貿易、投資、情報等の国際的交流が活発化し、各国間の相互依存関係が深まっているなかで、我が国が内外に開かれた制度・しくみ等を構築し、環境問題、人口問題、エネルギー問題等地球的規模の諸課題の解決や国際協力の推進に向け率先した役割を担うことが求められている。とりわけアジア太平洋諸国との協調関係の確立、地域の安定と発展への積極的貢献は我が国の国際的責務といえる。
こうした内外の動向も視野に入れながら、沖縄県では、21世紀に向けたグランドデザインとして「国際都市形成構想」を策定し、自立的発展を図るとともに我が国経済社会の発展に寄与する地域の形成を目指すこととしている。
橋本総理も昨年9月、この構想を踏まえ、基地問題の解決に全力を尽くすとともに、沖縄県が地域経済として自立し、雇用が確保され、沖縄県民の生活の向上に資するよう、また、我が国経済社会の発展に寄与する地域として整備されるよう全力を傾注することを表明した。
これらの基本施策を協議するため設置された沖縄政策協議会の下、現在、各種プロジェクトが推進されているところであるが、当面する緊急かつ最重要の課題となっている経済の活性化・自立化に向けては、県からの要望を踏まえ一国二制度的な思い切った産業振興策の実施が必要であると考える。
本委員会は、21世紀の沖縄振興開発の新たな理念と方向性を示した国際都市形成構想に基づき、これからの産業振興のあり方と展開方策を検討してきたが、本報告では、2001年を期して、全県域を対象とした自由貿易地域制度の導入を図るとともに、それまでの期間を準備期間と位置づけ、沖縄県において投資活動を行う企業の実質的な税負担を軽減する税制上の特例や全国に先駆けた諸規制の緩和、関連インフラの整備などを柱とした産業振興策を実施するよう提案する。
これらの施策により、新産業・新事業を生み出し、雇用を増加・安定させ、21世紀に向けて、県民生活の向上を図ることが可能となるが、一方で産業によっては一時的に調整を強いられるものもあり、その影響の度合に応じて適切な政策的配慮も必要となろう。
本委員会においても、その手法とこれによりもたらされる効果・影響をめぐり議論が行われ、様々な意見・見解が明らかにされた。振興策の実施に向けてはさらに討議を重ね、具体的なアクションプログラムを提示していくことが必要である。
もとより、このことについては最終的に県民自らが選択・判断すべきものであり、そのための情報開示や協議を重ね合意形成を図っていくことが何より優先される。
沖縄はいま、まさに転換点にあり、自己決定・自己責任の原則に基づく積極的な取り組みが求められていることについて県民の理解は十分得られるものと考える。
本委員会の検討結果が、沖縄の自立的発展と我が国経済社会の発展に寄与する地域の形成に向けた戦略的な産業振興に資することを期待するものである。